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因果の剣  作者: 悠希 碧
ヴァンパイアと騎士団
8/16

Encounter of two people

新キャラが登場します。

またgdgd感が…。

「はぁ…はぁ…。」


 体全体にひどい傷をおった男、ヴラドは自らの書斎に踏み込むと、高そうな革張りの揺り椅子に腰かけた。

 痛々しい姿とは裏腹に、彼は薄い笑いを浮かべていた。先程殺した銀の騎士を思い出していたのだろう。

 体中が軋みを上げるなか、彼は休もうと瞼を閉じた。すぐに眠気が貪欲にも彼を襲う。

 窓の外を向きながら、ヴラドは眠りに就いた。が。すぐに引き戻される。突然胸に鋭い痛みが走ったのだ。

 痛みに顔を歪めながら、胸を凝視する。そこには、紅黒い色の鋒が、胸から生えていた。

 ―――ズルリ

と、胸から剣が抜け落ちた。


「ぐぁ…っ…貴様…。マクベス・セフィアン…!!!」

「言ったはずだ。これ以上人間に手を出すとイヴが黙ってはいないと。」


 胸を押さえながら、ヴラドは召喚した巨剣で座っていた椅子ごと斬り裂いた。しかし、マクベスはそれを後ろに跳んで躱してしまった。

 血の滴る剣を振るい、血糊を払うと、マクベスはヴラドへと駆けた。





 屋敷内部に潜入した二人は、出来うる限り足音を消し、息を殺して進んでいく。広いエントランスを突っ切り奥に進むと、少し扉の開いた部屋から、微かに話し声が聞こえた。

 ジェネスとシェインは、訝しむように顔を見合わせると、壁に張り付き、中の様子を伺った。


「ヴラド候。俺は忠告したはずだ。これ以上人間に手を出すなと。」

「う…ぅ…イヴの狗めが…。」


 ハッキリとした凛々しい声と、呻くような掠れた声が中から聞こえる。

 開いた隙間から中を覗くと、血まみれの男が、美形の、修道服に身を包む青年に首を掴まれ、息も絶え絶えに睨み付けている。

 毒々しい紅色の血液が、男の四肢を伝って床に垂れた。床には血溜まりができている。

 あの男がヴァンパイアならば致死量を越えている。無論、人間でも死に至る量だった。


「ん?あぁ、騎士が来たのか。思ったより早かったな…。」


 男はそういうと、ジェネスとシェインのいる扉の方へと視線を移した。

 ジェネスは見つかったとわかると、躊躇いなくその場に躍り出た。しかし出てこようとするシェインを手で制す。


「お前は…。いや、知らないな…。」


 修道服の青年、マクベスがジェネスの顔を見て何かを言いかけ、止めた。

 ジェネスは眉を潜めるも、すぐに表情を改め、剣を抜いた。


「お前か?マージンを殺したのは。」


 ジェネスは鈍色の剣の鋒をマクベスへと向け問いかけた。灰色の瞳がマクベスを射抜くように細められた。

 しかしマクベスは、そんな威圧的な視線もまるで意に介さずに笑った。


「期待に応えられなくて悪いが俺じゃない。ほら。こいつだ。」


 マクベスはそういうと、男、ヴラドを放るように寄越した。ヴラドは、胸に貫かれた傷があり、そこから多量の血が溢れ出している。さすがは真祖か、それでも尚、凄まじい生命力を誇っていた。本人にとってみれば地獄であるはずだ。

 ジェネスはヴラドを睨むと、視線をマクベスに戻した。


「どうした。敵を討ちに来たのだろう?殺るなら殺せ。そのままにしても…。ほう…。」


 マクベスの言葉が終わるより速く、ジェネスはヴラドの喉へと剣を突き立てた。彼には元より慈悲などない。ましてや、仲間を殺された今ではなおさらだった。


「手前は一体何モンだ?」


 紅く血に濡れた剣を引き抜き、ジェネスは再びマクベスに剣を向けた。


「さぁな?見ればわかると思うんだが?白い髪に紅の双桙ときたら1つしか種族は無いだろう?まぁ、俺は特殊だが」


 マクベスの言葉が終わった刹那、ジェネスが床を蹴った。

 疾風のごとく駆け出したジェネスは一直線にマクベスへと突き進み、彼をその後ろの壁へと叩きつけた。

 衝撃に、屋敷が揺れた。


「痛いな…。ふ、憎悪か。騎士よ。守るものがそんな感情だけで殺していいのか?」

「知るか。俺の背負う紅は元より暴力の象徴だ。」

「そんな意味があるとはな。」


 マクベスはそんな緊迫した状態でもなお、飄々とした態度を崩さない。

 堪忍袋の緒が切れたかのように、ジェネスは握る剣をマクベスへと突き出した、いや、突き出そうとした。


「がぁ…っ…!?」


 しかし、逆にジェネスが後方へ弾けるように飛んだ。

 マクベスは足を前に突き出している。彼が、ジェネスの腹を蹴ったのだ。ただ蹴ったわけではない。足を突き出すと同時に魔力を放出し増幅させたのだ。

 吹き飛んだジェネスは扉を破り、さらにその先にある壁へとめり込んだ。

 壁が割れ、崩れ落ちる。シェインが、驚いたようにジェネスへと駆け寄った。


「ジェネス!?」

「全く、血の気が多くて困るな。俺にはお前に手を出す気なんてサラサラなかったのに。」


 壁が崩落したことにより舞い上がった煙が晴れると、シェインが、いまだ起き上がれないジェネスを庇うように蒼く光る剣を向けていた。

 マクベスは、もう一人居るのは知っていたが、シェインの姿を見て驚きを露にした。


「…ほう。エルフか、いやハーフ…クォーターか。」


 マクベスはシェインの姿をその双桙で認めると、的確にシェインの素性を当てた。


「悪いな。少し手荒な真似をしてしまった。その男にはすまなかったと伝えてくれ。」

「逃がすとでも御思い?」


 シェインは挑発するように言うと、式を展開することも、詠唱をすることもなく魔術を発動させた。

 瞬間、マクベスを囲うように光の溢れる鎖が彼を捕らえようと四方八方から伸び出した。

 しかしそれは空しくも空を切る。追尾するその鎖をギリギリまで引き付け、捕まる刹那に跳んでそれを躱したらしい。驚くべき判断能力だった。

 跳躍したマクベスの体が、空中で煙のように霧散した。その煙がシェインの横で収束されマクベスの姿が現れる。


「そいつならともかく、君じゃ俺はどうにもできないさ。」


 不敵に嗤うマクベスは、深紅の瞳でシェインを見ると、その場を後にした。

 歴然とした力の差を見せ付けられたシェインは、追うこともできず、ただその後ろ姿を睨み付けていた。

 すぐにマクベスの姿が見えなくなり、シェインは肩の力を抜いた、依然意識を失ったままのジェネスに寄り添うように近づき彼女は唱えた。


癒しの光(リーラヴェルテ)


 ジェネスの体が、薄緑色のベールに包まれた。目ぼしい外傷がどんどんと治っていく。

 小さな呻き声を上げ、ジェネスが目を開いた。


「んぅ…。あいつ……っう…!」

「ダメよ!まだ動いちゃ。派手に蹴飛ばされたのよ?」

「あいつは何処行った……。」


 行きなり動こうとするも身体中の痛みに堪えられずすぐに崩れ落ちるジェネスは、シェインに言われるがまま、仰向けに横になった。


「分からないわ。ヴァンパイアの魔力は詠めないし…。」

「クソ…。」


 苦痛の声を漏らすジェネスは、苦虫を噛み潰したように顔を歪める。大分よくなった体を起こして、彼は立ち上がった。






♂♀






「奴の魔力、どこかで…。」


 マクベスは、女王の横で小さく呟いた。その呟きに気付いたイヴは、マクベスを背中から抱き締め問いかける。


「どうしたの?思い詰めた顔して、貴方のそんな顔も私は好きだけど。」


 甘えたような声で囁くイヴに、マクベスは苦笑を漏らした。


「いえ、今日会った騎士に、どこかで会ったようなものを感じただけです。顔に見覚えはないのですが…。」


 マクベスは畏まったようにそう呟くとイヴの髪を優しく撫でた。白く美しい絹のような髪がサラサラと流れる。

 イヴは嬉しそうに目を細めると、マクベスの頬にキスをした。


「やぁ、イヴ。久しぶりだね。」


 唐突に扉が開かれた。数人の女をつれ、長身の男が二人がいる部屋へと入ってきた。

 白い髪を背中まで伸ばし、きらびやかな装飾の施された衣類を纏う美形の男は、甘いマスクを張り付けイヴの前に歩み寄る。


「何しに来たの?邪魔しないで頂ける?私はセフィと二人の時間を楽しんでいるのよ?無粋だとは思わなくて?」


 棘のある言い方で美形の男に言うとイヴはマクベスから離れた。といっても首に回していた腕を放した程度だが。


「相変わらず眷族に泥酔しているな。」

「眷族ではないわ。セフィは私の伴侶よ。そんなことより、何のようなのかしら?アルカード。」

「君の眷族、いや、伴侶だったね。彼がヴラドを殺した。と聞いてね?」

「あぁ。俺が殺した。それかどうかしたか?アルカード卿。」


 不意にマクベスが、二人の話に割って入った。イヴは小さくため息を溢すと、マクベスにすべてを任せた。


「君は、ヴラドのような真祖を殺すことが、どれだけの大罪が分かっているのか?」

「知らないな。俺は忠告したんだ。止めない奴が悪い。」

「貴様……!」


 アルカードが、深紅の双桙をたぎらせ、マクベスの襟を掴んだ。冷酷な瞳がマクベスを据えている。対するマクベスも、冷たい視線で応戦する。

 今にでも殺し合いそうな二人を見て、イヴがアルカードを制した。


「アルカード。セフィに手を出したら私が貴方を許さないわ。」

「……ちっ…。」

「化けの皮が剥がれたか。アルカード卿。」

「マクベス。止しなさい。」


 イヴが強い口調でマクベスを叱咤した。マクベスは即座に頭を下げる。イヴがマクベスを“マクベス”と呼ぶことは少ない。彼をそう呼ぶ時は大抵、怒っているときだ。


「彼を殺すよう指示したのは他でもない私よ。牙を向けるなら私にしなさい?」

「……とんでもない。私は貴方に牙を剥くなんてしませんよ。」


 再び甘いマスクを張り付け、連れのヴァンパイアともども、アルカードはその場を後にした。

どうもありがとうございました~

とりあえず一段落?

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