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因果の剣  作者: 悠希 碧
ヴァンパイアと騎士団
6/16

Light of the Silver life

急展開っ!?

思わぬ形で終わりを告げた事件。

ジェネスはとうする!?

「なに………?」


 ジェネスはシェインの言葉を聞き返していた。彼の目には驚きの色が見え隠れしている。

 シェインはそんなジェネスに驚いたようにふたたび告げた。


「え…だから、例の眷族が死体で発見されたらしいの。」

「いつ発見された?」

「たしか…昨日の夜更け…だったかしら…。マージンが見つけたらしいわ。」

「一体誰に殺された…?眷族と言ってもヴァンパイアだ、そう簡単に殺せるもんじゃねぇ筈だ。」


 ジェネスは思い詰めたように 額を手で押さえると考え込んだ。

 彼の言う通り、ヴァンパイアには不死性と言う魔導があるのだ。眷族と言えども、不完全であろうと多少なりの不死性がある。

 寿命の存在しないヴァンパイアはいくらでも生きるし、戦場での生命力も桁外れなのだ。最強の戦闘民族と言われているほど彼らは強い。


「たしかに、ヴァンパイアを殺せるなんてそれほどまでに強い人間、あるいは…」

「同族殺し…。」


 シェインとジェネスは一つの答えにたどり着く。ヴァンパイアは同族間での殺し合いが全種族中最も多い。


「死因はなんだか聞いたか?」

「たしか…片方は腕を切り落とされていて、胸を一突きされたらしいわ。それもたぶん…腕でよ…。もう片方は頭を握り潰されていたそうよ。」

「同族殺しが一番濃厚だな…。今頃マージンは明るいうちの現場検証に向かってる筈だ…。はぁ…なにがあったんだ。」


 ジェネスは冷め始めた黒い液体、珈琲を一気に飲み干してつぶやいた。

 シェインは渦巻く白いミルクを眺めている。


「あ、俺より精神年齢が高過ぎて老化したシェ……。」


 皮肉を織り混ぜたジェネスが、シェインに話しかけた刹那。ヒュッ、と何かが空気を斬る音が耳を掠めた。

 次いで、ギャリイイイイン。という金属の悲鳴が店内にこだました。

 店にいた者たちが一斉に二人に注目する。中には腰を抜かすものもいた。

 蒼い、異彩を放つ抜き身の刀身がジェネスに向けて振るわれたのだ。もちろんそれを振るったのはシェイン。

 対するジェネスは、その異彩な剣を、テーブルの上にあった食事用のナイフで受け止めている。

 ナイフには、淡くほのかに紅い魔力がなぞるように迸っている。


「いやいや、あぶねぇな。てかテーブル斬れてんぞ?」

「危ない…?私の剣を剣も抜かずにあしらってるあなたの言葉とは思えないわね。それに大丈夫よ、もう直したわ。」

「周りを見ろ阿呆、みんなビビッてんじゃねえか。」


 シェインは蒼い刀身を持つ剣、魔剣であるそれを腰の鞘へと戻した。

 ジェネスもそれに倣い走らせた魔力を振り払いナイフをテーブルの上に置いた。

 今にも落ちそうなテーブルの端は、今やもとよりも綺麗になっていた。

 ふと、ジェネスの耳につけた金属製のピアスが音をたてた。


ザザッ―――

《ジェネスさん、聞こえますか!?》


 耳元でネメアの声が適度な音量でこだました。

 ジェネスの耳についているピアスは、魔具と呼ばれるものだ。

 魔力を持った道具であり、それがあれば才能のないものでも容易に魔術が使えてしまう。

 ジェネスのそのピアスには、通信の魔術が掛けられている。魔術が苦手なジェネスなりの工夫だった。


「あぁ、聴こえる。どうした、珍しいな。」

《そんなことより今すぐ本部に戻ってください!》

「あ?どうゆうことだ。説明しろ。」

《マージンさんが…殺されました…。》

「……は?」


 ジェネスは切羽詰まったような早口で話すネメアに問い掛けるも、帰ってくる答えは、全く予想だにしないものだった。

 彼は驚きのあまり、勢いよく立ち上がった。シェインが驚いたようにジェネスの顔を見つめた。

 銀の騎士が殺された。そんな事を簡単に鵜呑みにできるほどジェネスは出来ていない。

 信じられないという心情が見え隠れしている。


「どうしたの…?」

「マージンが……殺られたらしい…。」

「なっ…そんな、彼だってアークナイトなのよ!?」

《?ジェネスさん、そこに誰がいるんですか?》


 ネメアはジェネスたちの会話を耳ざとく聞き付けたらしく、問い掛けた。


「あぁ、シェインが一緒にいる。」

《なら丁度いい、ローレンさんも連れてきてください。》

「わかった、すぐに戻る。てわけだ、いくぞ。」

「ええ、分かったわ。」


 ジェネスとシェインは、テーブルの上に金貨一枚を起き、店をあとにした。

 人の合間を縫うように駆ける二人は、相当な速さで走っている。

 ジェネスは結構なスピードを出しているつもりだが、しはそれにぴったりとくっついて並走している。


 彼ら二人が本気を出して走れば、数十キロもの距離など数分足らずで到着してしまう。

 もはや人間と呼んでいいのか疑わしいほどだ。


「ネメア!」

「ジェネスさん!」

「マージンの遺体はあるか?」

「はい、あります。転移の魔術で銀の騎士の部下が移動させました。」


 大粒の汗を額に浮かべながら現れたジェネスに、ネメアは案内した。

 マージンの死体は、騎士団本部の療養室に安置されていた。


「マージン…。」

「マージンさんの死体は、十字架の杭が心臓に打たれて木にはりつけにされていたそうです。」


 生気の無いマージンの死体には無数の傷跡が残っていた。激戦の証だろう。

 隣の机に置かれていた、生前マージンが愛用していた2本の短剣は、脆くも半ばからへし折られている。

 マージンの体に残された死体に残る最も大きな傷は腹部に残るまるで巨大な剣を突き立てられたかのような大きな傷だった。


「死後どれくらい経った?」

「状態からして、一時間たってないと思われます。」


 そうか、とジェネスは呟いて、マージンが眠るベッドの横にある椅子に腰掛けた。

 後ろにたつシェインは悲しげに目を反らした。

 この世界で、死と言うものは二つある。1つは精神の死。今のマージンのような状態が精神の死だ。

 もう一つの死は、肉体の死。この世界で魂のなくなった肉体は魔力に還元され消えていく。死後1週間ほどで肉体は完全に魔力となっていくのだ。

 

「シェイン。辿ってくれ…。コイツを殺した奴のこと。」


 ジェネスは、張り詰める静寂を振り切るようにシェインに言った。

 シェインは驚いたように目を見開いた。しかし、すぐに表情を改め、マージンの死体へと手を翳した。

 シェインはこの国で三本指に入る魔術師でもある。

 シェインの翳した手を中心に、青白い魔術式が展開されていく。

 彼女の体を覆うように青白い魔力が迸る。


「もう少しよ。」

「悪いな。」


 ジェネスは労いの言葉を掛けながら、シェインの魔術が終わりを告げるのを待っていた。





♂♀





 今から数時間ほど前、マージンは昨日見つけた眷族の死体のある場所へ赴いた。

 昨日見つけた時は辺り一面闇に包まれていて木があること以外把握できなかった為、現場検証に駆り出したのだ。

 歩くこと数十分、マージンは昨日目印として残したナイフを見つけた。

 辺りを見回すマージンは、すぐに表情を凍り付かせた。屋敷があったのだ。

 さほど大きくはないが、それでも相当の値段はするであろうほどの広さ。しかし廃れていて、所々雨に侵食されていた。

 見るからに不気味なその屋敷にマージンは一歩踏み出した。

 無論だが、ここら近くには数名の部下である銀の貴下の騎士を置き、厳重に警備している。それほど危険はないはずなのだ。いや、だった。


「貴様。人の家に土足で入り込むとは、礼儀がなっていないな。」


 不意に、背後から声が聞こえた。

 マージンは身を引きながら振り変えると、そこには初老の男、ヴラドが立っていた。短く刈り上げた白い髪に深紅の瞳、憮然としたその顔つきには不穏なものが感じられる。

 ゴトン、とヴラドの手からボーリングほどの大きさのものが離され地に落ちた。

 それは頭蓋だった。まだ皮と肉を被った、配属していたはずの騎士の頭だった。


「憲兵がいた筈だが、どうやってここまできた。」


 マージンは眼鏡の奥にある瞳を細めながらヴラドに問い掛けた。もちろん、どうなったかは予想がつく。


「あぁ、虫どもか。あんな烏合の衆がどれほど群れようと俺には遠く及ばん。皆殺しにしてやった。」

「ほう。貴様、ヴラドだな?」

「俺を知っているとは、なかなか勤勉なやつだ。見所がある。」


 淡々と言葉の押収を繰り返す二人。マージンはヴラドのことを知っている。もちろん、それは真祖の一人であるからである。

 ヴラドは紅く血の滴る腕を舐めた。


「さて、小僧。俺の屋敷に何のようだ。」

「いや、貴様の眷族に世話になったようだからな。その礼を返しに来た。だが、また世話になってしまったようだ、借りは大きくして返さんとな。」


 マージンはそう不敵に言うと、腰に提げられた短剣に手をかけた。十字架を模した2本の短剣を引き抜いた。

 

ヴラドとマージンの戦いが始まる!

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