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第2話「鏡の外へ、最初の一歩」
ある日、灯子はファッション誌のページをめくっていて、
ふと手を止めた。
〈街で見つけたリアルモテ女子〉――。
どの子もモデルじゃない。ただの学生や会社員。
でも、みんな自分の「好き」をまとって、笑っていた。
「私も……外に出てみたい」
声に出した瞬間、胸がどきんと鳴った。
それから灯子は、少しずつ準備を始めた。
メイクの練習。ウィッグの手入れ。
服のコーディネート。
鏡の前で何度も「変身」をくり返す。
カメラのタイマーで自撮りをして、
笑顔の角度を研究する日々。
でも、ドアノブの前に立つと、
手が止まる。
冷たい金属に指を置いて、何度も引っ込める。
「やっぱり無理かも」
声は震えて、胸の奥に沈んでいった。
ふと、部屋の隅に置いてある古いTシャツが目に入る。
色あせたグレー。
何度も洗って、袖がよれている。
大学に行かなかった日々を一緒に過ごした服。
灯子はそれをそっと畳んで、引き出しにしまった。
「ありがとう」
心の中で、静かにそうつぶやく。
深呼吸をひとつ。
ヒールを履いた足が、ほんの少し震えている。
でも、その震えごと、前へ。
カチャリ、とドアが開く。
まぶしい光が差し込んだ。
頬をなでる風。
カツ、カツ、とヒールの音が、
初めての街に響いた。
――地味子は、もう、部屋の中の“あかりちゃん”ではない。




