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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
1章 最強の賢者と7度目の転生

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弱い前衛と……頼らない後衛


 少し森を移動すると、鼻をつく血の臭いが漂ってきた。


「やはりダメだったか。血の臭いが濃い……それに」


 足元に、無惨に転がる数人の死体が視界に入る。


「3、4……あと一人はあそこか」


 目を凝らすと、少し大きな木の根元に一人の男がうずくまっている。かろうじて息はあるようだ。


「息があるな。喋れるか?」


 服装と装備から判断して、Aクラス先遣隊のリーダーで間違いない。


「助けてくれ……死にたくない……」


 彼は必死に訴える。


「すまないが、助からない……」


 そう告げると、男は低くうめき声を上げた。


「状況を教えてくれ」


 男の痛みを和らげるため、治癒魔法をかけながら促す。


「ありがとう……俺たちは村に着いた。森の状況を偵察するため、ひとりを向かわせたんだ。すぐに戻るはずだった……でも、戻らなくて、全員で森に入った。奥には進むなと言われてたんだが……少し歩いて気づいたんだ。たった20分も進んでないのに、そこは最奥だった……」


 悔しそうに唇を噛む男の目は、すでに虚ろだ。


「その幻影魔法に気づくのが遅れて囲まれて……このザマさ……」


「辛い思いをしたな。遅れてすまない」


「2体だけ……異常に強かった……何もできずに、次々やられた……気をつけろ……」


 その言葉を最後に、男の手から力が抜け、冷たくなっていった。


「くそっ、最初からこんな……」


――ドォォオン!


 突然、森の奥から大きな音が響いた。


「展開が早いな……あいつらか」


 俺は音のした方へ急いで駆け出した。


「ひぃっ! こっち来るなぁ!」


 ダンの情けない声が森に響く。彼は5体の魔物に囲まれ、逃げ惑っていた。


「おい、ダン! もっと粘れ! 詠唱ができねぇだろ!」


 魔法使いチップが怒鳴る。


「私の《守護盾プロテクタ》も、もう持たない……早くして!」


 聖職者キキが苦しそうに言うが、前衛の2人が敵についていけず、後衛の善戦も意味を成していない。


「こいつら……強すぎて……ぐはっ!」


 格闘家ハルが吹き飛ばされ、大きな木に叩きつけられた。


 それでも、魔法使いのデールが詠唱を終え、2体の魔物を撃破する。


「まだいるぞ! 立て、お前ら!」


「次の詠唱まで粘れって言ってんだ!」


 しかし、ダンは固まって動けず、ハルは意識を失ったままだ。無防備な後衛に魔物が迫る。


「くそっ、間に合わん……」


 必死の詠唱も、どう考えても時間が足りない――その時。


「またせた」


――パチン。


 指を鳴らす音と同時に、残りの魔物3体が燃え尽き、灰と化した。


「お前、Eクラス……?」


 呆然とするチップを一瞥し、俺は手を伸ばした。


「立て。止まってる暇はないぞ」


 まだ戦いは終わっていない。次々と新たな魔物が押し寄せてくる。


「前衛が戦わねぇと、後衛は何もできないんだよ」


 俺はダンを見据えた。


「お前が怯えて止まったら、パーティー全滅だぞ」


「でも……」


「信じろ、仲間を」


 ダンは怯えた表情のまま、剣を握る手が震えていた。


「仲間を信じられねぇなら、今すぐその剣を捨てろ。だが、それなら戦場に立つ資格もない」


 ダンは歯を食いしばり、震えをこらえながら剣を握り直す。


「……やる、俺が守る!」


「それでこそ前衛だ」


 俺はフッと笑い、次はキキに向かって言った。


「ハルを頼む。ダンが踏ん張るから、お前ら後衛も気合を入れろ」


「ええ、任せて」


 キキはハルに治癒を施しながら、微笑む。


「ダン、あんたならやれるわ」


「チップ、デール!」


 俺は振り返り、魔法使いコンビに声を飛ばす。


「一番強い魔法、用意しとけ! 威力はどれくらいだ?」


「最高出力なら森ごと吹っ飛ぶぜ!」


 チップが胸を張る。


「それで十分だ」


 俺は笑みを浮かべる。


「全力でいけ。あとは俺たちが時間を稼ぐ」


 ダンは震える手で剣を構え直し、深く息を吸い込んだ。


「やるぞ……俺が守るんだ!」


 俺はその姿を見て、満足げに頷く。


「そうだ、その調子。お前が守れば、俺たちは勝てる」


 こっそり**《強化魔法ブースト》**を使い全員を強化する。


「さっきの魔法。威力がどれだけ出せるか教えてくれ。」


 デールが先に答える。


「範囲を絞れば、森一帯を焼き尽くせる。ただし、発動には最低でも三分はかかる。それと……あんたも巻き込むかもしれないぞ。」


「それで十分だ。」


「おい、本気で言ってんのか?」


 チップが驚いた声をあげる。


「あんた、Eクラスだろ? その魔法に耐えられるなんて無理だぞ!」


 俺は無言で周囲の様子を一瞥し、前衛のダンに目をやった。彼はまだ震え、剣を握る手が頼りなさそうに見える。


「ダン、まだ怖いか?」


「……ああ。怖いよ。俺には、無理かもしれない……」


 俺は彼の肩に手を置いた。


「それでいい。それが普通だ。だが、戦わなければ皆が死ぬ。お前が戦えなきゃ、仲間は守れない。それでも前に出るんだ。」


「……でも、俺……」


 ダンは唇を噛んでいたが、しばらくすると震える手で剣を握り直した。


「わかった……やってみる。」


「それでいい。お前はそれで十分だ。」


 次に、俺はチップとデールを見やる。


「三分で全力の魔法を使え。あとのことは俺がどうにかする。お前たちは詠唱に集中しろ。」


 二人は目を合わせ、不安そうにうなずいた。


「分かった。やるしかないな……」


 魔物の数は30を超えていた。一体一体は大したことがないが異様に連携が取れている。そしてその奥に2体、魔王の気配を漂わせる縞々模様の魔物が2体……


 魔物たちは次々と押し寄せてくる。前衛のハルは意識を失い、ダンは立ち尽くしていたが、ついに覚悟を決めたのか、一歩前に出る。


「ぐっ……来いよ!」


 ダンが叫び、剣を振り回す。無様でも、その姿勢に何かが宿っていた。


 後衛のキキは、震える声で**《守護盾プロテクタ》**を展開し、ダンの背後を守り続ける。


「よし、いいぞ。そのまま耐えろ!」


 援護しつつ奥の2体を牽制する。


(コイツラを抑えておけばコイツラなら勝てる)


 しかし、魔物の勢いは止まらない。次々に湧き上がる異形の群れが、まるで森そのものが生きているかのように襲い掛かってくる。


「詠唱はあとどれくらいだ?」


「あと一分……!」


 チップが焦りながら答える。


「くそっ、もう間に合わないか……」


 魔法使いの2人の魔力に気づき、縞々2体が俺の一瞬の隙をつき、2人に迫る。


「しまった!」


 その時、俺は指を鳴らした。


パチン──


 その音とともに雷が走る、空気が一瞬にして凍りついたように変わる。魔物たちは魔法使いの手前で動きを止め、わずかに後ずさる。


(ここまでできるかコイツラ)


 少し本気にさせられて焦る。


「雷魔法……Eクラス、お前。」


 俺は一歩前に出た。


「集中しろ、チップとデール。最後の詠唱を仕上げろ。」


 ダンは体を震わせながらも、必死に魔物の攻撃を防ぎ、キキの回復魔法を頼りに立ち続ける。


「すぐ終わるぞ……!」


 チップが息を切らしながら叫ぶ。


「あと……十秒!」


 俺は笑みを浮かべ、最後に一言だけ告げた。


「これが俺たちの勝利だ。」


 そして──


「フルフレイムメテオ!」


 轟音と共に、森一帯が炎に包まれた。岩系と火系の混合魔法で隕石ってか。


 俺のこっそり**《強化魔法ブースト》**もあってか、いつも以上の火力に少し動揺する2人。縞々2体も魔法にあわせて俺がとどめを刺していた。というか、あの威力でも倒せないと踏み攻撃をしたわけなのだが……


 しばらくして、炎の嵐がようやく収まり、森の中は静寂を取り戻した。焼け野原となった大地には、もはや魔物の影もなかった。


「……生きてるか?」


 俺の声に、デールが咳き込みながら答える。


「なんとか……」


 キキが疲れ切った様子で、ハルを抱き起こしていた。


「これで……終わり……?」


「そうだ。終わった。」


 俺はダンの肩を叩いた。


「よくやったな。」


 ダンは放心したように俺を見上げた後、小さく笑った。


「……ありがとう。」


「これで分かったか?」


 俺は彼ら全員に視線を向けた。


「前衛がいなければ、後衛は何もできない。そして、後衛がいなければ、前衛は生き残れない。」


「お前たちは一つのチームだ。それを忘れるなよ。」


 チップとデール、そしてダンは静かにうなずいた。彼らはようやく、互いを支え合うことの大切さを理解したようだ。


「これがパーティーね」


 嬉しそうに聖職者キキが言う。


「そう言えばEクラスお前なにもんだ?」


 全員がこっちを見る。


「荷物持ち」

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