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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
2章 学園生活と前衛VS後衛

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決勝戦……敵の正体

~決勝戦:湖畔の対決~

「さぁ~~って、お楽しみのトーナメント最終日! 泣いても笑っても最終決戦、**《ルーシュ vs イリュウ》**だぁ!!!!!!!!!!!」


 司会の声が会場全体に響き渡る。熱気が渦巻く中、俺は決勝戦のフィールドに足を踏み入れた。目の前には、相手――あの気まぐれでつかみどころのない男、イリュウが待ち構えている。


「会場は盛り上がってるかぁ!!」


『おおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!』


「トーナメント始まって以来、先生方も見に来てくれたぞぉ!!」


 前衛組の生徒に合わせ、今回は教師たちも勢揃いしている。だが、後衛組の生徒は会場への立ち入りを禁じられているため、ここにはいない。


「さてと、改めてよろしく、イリュウ」


「よろしく~。楽しも~ねぇ」


 彼は相変わらず、力が抜けた調子で微笑む。


(この調子で戦闘中もヘラヘラしてるのか?)


 そんなことを思いながら、俺はフィールドの奥へと進んだ。


 目の前に広がっていたのは湖。その周囲を陸地が囲んでいるステージだった。水上ではなく、あくまでも湖は中心に据えられたまま――広大な空間だ。視界が開けているため、小細工が効きにくい代わりに、実力がダイレクトに反映されるタイプのフィールドといえる。


「それでは決勝戦、READY~FIGHT!!」


(さて、あいつは掴みどころのない変わり者だ。普段の訓練では寝てばかりで、まともに魔法を使った姿も見たことがない。それなのに王国ギルドに所属していて、成績も優秀。クシィとの戦いを見た限り、魔物との関わりがあるのは確かだ。だが、それ以上に――強さを求めながらも、どこか諦めているような雰囲気を纏っている……)


 俺は彼のことを考えながら、警戒を強めた。


 武器は連結剣――柄のない刃を複数つなげ、自在に形状を変えて戦うスタイルだ。本体の剣に加えて六本の刃が存在し、戦況に応じて分解・再構築される。どこかメロの戦法にも似ているが、こちらはより攻撃的だ。


「うん、面白い」


 心の中に湧き上がる高揚感が抑えられない。


(いたっ)


 俺は水面に映る影を捉え、一瞬で斬撃を飛ばした。


 湖の上を走る方が近道になると判断したが――どうやら、イリュウも同じ考えのようだった。


「やっぱり真っ直ぐ来たね~。でも、それじゃあダメージは与えられないよ」


 水しぶきを上げながら、イリュウが無傷で現れる。


 その様子に、俺は違和感を覚えた。


「へぇ、俺の動きがわかってたのか。それじゃ、これはどうだ?」


 俺は間髪入れず、連撃で斬撃を浴びせた。だが、イリュウは片手一本の剣で、すべての斬撃を弾き返していく。


(ん? 1本だけ?)


 その瞬間、違和感が脳裏を駆け抜けた。俺はすぐにブレーキをかけ、近づくのをやめた。――と、その時。


 バシュッ!


 上空から、一振りの剣が俺の眼前に落ちてきた。水面が大きく波打ち、湖がしぶきを上げる。柄の無い刀身が複数降ってきたようだ。


「やっぱり気づくんだ。流石だね」


 イリュウは、落下した剣を再び魔法で集め出す。


「こっちもそう簡単にはやられんよ」


(少し焦ったが、なるほど――遠隔系の能力か)


 イリュウは拾い集めた剣を一本に連結し、まるで蛇のようにしならせて構えた。それは全長4メートルに及ぶ長大な蛇剣へと変貌していた。


 次の瞬間、その蛇剣がうねりながら襲いかかってくる。


 俺は剣の軌道を見極め、受け流しながら間合いを詰めていった。


(長物は、近づいてしまえばこっちのものだ)


 俺はタイミングを見計らい、剣に向かって斬撃を叩き込む。


 パチン!


 無数の斬撃が次々に命中し、蛇剣はバラバラに分解されていった。


 だが――


(しまった!)


 バラバラになったはずの剣先が、いつの間にか目の前に迫っていた。


 避けるのが一瞬遅れ、俺の頬が一筋、浅く裂かれる。冷たい風が切り傷をなぞるように通り抜けた。


 これが、トーナメントで初めて受けたダメージだ。


「あれ~? 血は赤いんだ? 紫とか青が出てくるかと思ったのに」


 イリュウは相変わらずの軽口を叩きながら、剣を再び構えた。


(おかしい――さっきの斬撃は確実に当たっていたはずだ。なのに、なぜダメージが入らない?)


 俺は、焦る心を抑えながら思考を巡らせた。


(奴の剣には、まだ何か仕掛けがあるのか? それとも――)


「赤い血の人間ですよ」


 俺は切られた頬を軽く拭い、笑みを浮かべた。だが、目の前のイリュウは、俺の言葉に気に留めた様子もなく、まるで子どものような無邪気な好奇心で続ける。


「それにしても変わった能力だね~。指を鳴らして気を散らし、こっそり切りかかってるだけかと思ったけど……違う。君、本当に“斬った”動作がないのに、斬撃が飛んでくる。それに範囲が広いし、剣筋もめちゃくちゃだ。まるで剣を握ったことのない素人が振り回しているように見えるけど――」


「ちゃんと斬ってますよ、その首をね」


「怖いなぁ。でも少しわかってきたよ。君の斬撃の“源”――魔力が指を鳴らした瞬間に感じられる。それで、いったい何をしている?」


(思考が速い……しかも、一つ一つの仮説が鋭い。状況を何十通りもシミュレートして、最も合理的な結論に迫ってきている。ほぼ正解に近い。だが――俺は前衛だ。そこがこの戦いの肝だ。前衛の“動き”に混乱すれば、その先を見抜くのは難しいはずだ)


「そっちの能力も奇妙だな。剣を直接操っているわけじゃない。他の何かを媒介にしている。それも攻撃だけじゃなく、防御にも利用しているようだ。まるで――見えない紐か糸のようなものだな」


(射程圏外から剣が飛んできた理由はそこにある。攻撃にも防御にも使える“無形の力”。それは、俺の能力に通じる――“動かない”タイプ。攻守ともに優れた戦い方ができる証拠だ)


「へぇ……ここまで正解に近い回答を出したのは君が初めてだよ。ギルドの仲間にも教えてないんだけどね。防御に使っているものまで見抜かれるとは思わなかったなぁ」


(だが、まだ何か隠しているな……。気になるのはあの剣だ。あれはただの武器じゃない。能力を引き出すための特殊な媒体だ。問題は、どこまで自在に使いこなせるか――その範囲だ)


「バレちゃったなら、もう遠慮なしだよ。行くよ~」


 イリュウが一気に距離を詰めてくる。


 速い――! 六本の剣がバラバラに動き、まるで生き物のように絡みつきながら攻めてくる。


(だいたい見えてきた……。何か“いる”な――)


「時間がないから、少し本気を出すよ」


(とはいえ、あまり見せたくないが……仕方ない)


 俺は指を鳴らす。


 パチンッ


「おおっと! これは――!?」


 突然、会場のモニターが一斉に故障したかのように映像が途絶える。


「音も聞こえないぞ? どうなってるんだぁ?」


 司会のデンが、困惑した表情で魔術師たちに掛け合う。


「メロさん、これは一体どうしてでしょう?」


「さっぱりわかりませんね……。楽しみにしていた戦いなだけに、早く映してほしいところです」


 だが、魔術師たちも原因がわからないようだった。


(とまぁあっちでは混乱していると思うが気にしなくていいや……)


パチンッ


 俺は再び指を鳴らし、水しぶきを上げて視界を遮る。


(本当はこうやって逃げ隠れするのは性に合わないんだけどな。とはいえ――仕方ないか)


 深く息を吸い、詠唱に入る。


~~~~~~~~~~~~~~~ 我纏いし精霊よ、汝の力を我に分けよ。夜の加護を授けたまえ――天駆ける夜の月読命つくよみのみこと―― ~~~~~~~~~~~~~~~


 詠唱が終わると、空が闇に包まれ、世界は一つの大きな月に照らされる異空間へと変わった。


 月光が降り注ぐ中、俺はイリュウを見据える。


「ほう……それがイリュウの“精霊”か。だが――精霊らしくはないな」


 イリュウの周囲には、月光に照らされたスライムのような生物がまとわりついていた。


 その奇妙な生物は、身体の形を歪ませながら変化し、まるで剣を握るかのように見える。


「お前、見えるのか?」


 イリュウが目を細め、スライムのような生物を一瞥する。その瞬間、彼の顔にかすかな憎しみが浮かんだ。


「でもね、こいつは精霊じゃない――魔物なんだよ。昔、呪われてね……」


 彼はスライムを睨みながら、静かに続けた。


「それに比べて――お前のは**“本物”の精霊**か?」


 その言葉の背後に潜む感情を、俺は敏感に感じ取った。イリュウにとって、あのスライムの存在はただの力の源ではなく――過去の**“傷”**そのものなのだ。


 だが、戦いはまだ終わらない。闇と月が支配するこの世界の中で、俺たちはお互いの力を試し合う。


 ――本当の決着は、ここから始まる。


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