2回戦目・・・それと急展開
~ベスト8決定とリリスの挑発~
その後の戦いでは、ロックやリリスも登場し、勝利を収めてきた。特に、何も情報を引き出せなかったものの、イリュウも難なく勝ち上がっていた。
どんでん返しもなく、俺の言っていた通り、ベスト8は予想通りの結果になった。
ベスト8進出者リスト
《レイン》:ジャックPT、学園6位、20歳、女
《アーサー》:リリスPT、学園25位、15歳、男
《ディムズ》:ジャックPT、学園35位、19歳、男
《ルーシュ》:ルーシュPT、学園10位、16歳、男
《リリス》:リリスPT、学園18位、12歳、女
《ロック》:ロックPT、学園15位、20歳、男
《クシィ》:ジャックPT、学園12位、18歳、男
《イリュウ》:リリスPT、学園2位、17歳、男
(学力テストを含む成績なので、強さだけでは少し変わってくると思う。特にリリスはもっと上だと思うし、他にも隠している能力を持っているやつがいるかもしれない。)
「ルーシュ、私たちは決勝だね!」
声をかけてきたのはリリスだ。
「そうだな。そう言えばさっきは一発だったな。」
先ほどの戦いでは、今大会最速の2分、しかも一撃で勝利した。
「えへへ、もっと褒めて。」
「まだ体力もあるし、次もビシッと決めたいところだな。」
「はいっ、がんばります!」
「もう決勝の話か?気が早いねぇ。」
この嫌な感じはロックだ。
「あんたには1回勝ってるし、イリュウはいつも寝てるから、私が決勝に行くのが普通だよ。」
「言ってろ。イリュウどころか俺にも勝てねぇよ。俺はまだ本気を出していない。」
「それ、すぐやられる敵のセリフだよ?」
リリスは純粋なのか、おちょくるのが上手いのか、分からない。
「おい!今ここでやってやろうか。」
「ロック、熱くなりすぎだ。この後戦えるんだ、空気を悪くするな。」
俺が止めに入る。
「お前もジャックに勝ったからって調子に乗るなよ。」
ロックはそのままどこかへ去ってしまった。
「悪いやつじゃないんだけど、すぐ頭に血が上るよな、あいつ。それにイリュウもまだ何か隠してるし、油断しちゃダメだ。」
俺はリリスに気を悪くするなと声をかけた。
「ふんっ、私ロック嫌い。」
リリスも不機嫌そうに出ていってしまった。
部屋の隅で、クシィがボソボソと独り言を言っていた。
「あれ?俺、イリュウに負けるの確定なんだ?」
ジャックPTはみんなあんな感じなので、ほっとくことにした。
~2回戦第1試合の番狂わせ~
少し時間があいたが、このまま2回戦第1試合が開かれた。
ジャックPTの《レイン》 学園 6位 20歳 女 VS リリスPTの《アーサー》 学園 25位 15歳 男
勝った方が明日俺と戦うことになるのだが、6位と25位では勝つ方が決まっている。このままだとジャックPTの3人と当たることになり、実質壊滅させるようなものだな…。
考えていると、会場が盛り上がっている。
「ここでクリーンヒットは痛いぞ、レイン選手~!」
実況者のデン君が熱くなっている。
予想外の展開で、20分と経ってもなお決着がつかない。それに押されているのは6位のレイン。
「あれ?どうなってんのこれ?」
あの後リリスと話していて観戦していなかった俺は、この状況をジャックに聞きに来た。
「それがよ。レインが長引くのが嫌だからって最初から全力で行ったんだ。まぁそれで決着がつくと思ったが、それを見越していたのかことごとく防がれて、今やジリ貧状態さ。」
戦略も大事だが、明日を考えると早めに決着を付けたい。アーサーはそこを利用したというわけか。
レインはモデル体型の女性で、お姉さんタイプだ。みんなの憧れで、さらに強いといった羨ましがられる存在。気が強いのが欠点で、こういった速攻を好む。
それに対してアーサーは防御タイプで、我慢して溜めて開放するスタイルだ。真逆のタイプがうまく噛み合った時、一方的な展開になる。
「展開はこうだ。」とジャックが話してくれる。
レインは身体の柔らかさを使って、予想外の場所からの攻撃が得意な格闘タイプ。さらに、空間に魔壁を生成し、逃げ道を塞いだり、自分が飛び跳ねたりするのに使うスキルを持っている。それを駆使し、一気に間合いを詰め攻撃をしていたが、途中で転ぶようになったという。解説者メロが言うには、アーサーが生成した壁を壊していき、動きを封じていっていたらしい。あるべき場所の壁がなくなり、着地や思うように動けなくなったところに一撃を貰ったというわけだった。
「それに、メロはどうやって作った壁の場所を判断し、使う前に壊したかがわからないとも言っていた。だから余計に体力を使ってしまって、判断が鈍ったんだよあいつ。」
ジャックは話してくれた。
「面白いな、それ。続き見させてもらうわ。」
俺はジャックの横に座った。
現状はというと、ダメージの大きいレインを追いかけるようにアーサーが手についた武器を振り回している。見た目はナックルだが、肘まで覆われている。それにアーサー自身が青白く光っていた。ナックルが何かに接触すると、拳から青白い爆発を起こして大きなダメージを引き出しているようだ。
攻撃のたびに出る青白い光がまとわりついている。一定量だろうか?周りで光っていた青白い光がアーサーを包み込んだ。その瞬間、真っ白に光った。するとアーサーが全身に鎧を着たような格好に変わっていた。
たぶん、攻撃や防御で力をため、段階的に強くなっていくスキルだろう。それがマックスまで上がると全身に包まれ、ステータスが大幅に上がるといったところか。
試験だとそういう時間はなかった。だから本領発揮できていなかったというわけか。
(こいつおもしろい)
白い鎧に包まれ、青いラインが光るデザイン。アーサーは更にゴツゴツしたナックルをかざし、一瞬で間合いを詰め、力いっぱい振りかざした。
「試合終了~~~!アーサー選手の勝利!!」
~ルーシュの強引な乱入と「賢者」の秘密~
負けると思われていたアーサーが勝ったことで、更に盛り上がると思われた会場だったが、残念なことに美女をボコボコにしたアーサーはめちゃくちゃブーイングも受けていた。俺が戦っていたらと思うと悲しくなる…。
俺はフィールドと音声をつないでもらって、乗り出して叫んだ。
「おいっ、アーサー聞こえるか?その状態、いつまで続く?明日、それもう1回できるのか?」
大きな力には代償がある。
「ル、ルーシュさんですか?えっと、これはあと30分は持ちますが、多分3日ほどは使えないと思います……」
「今から戦えるか?俺と!」
急な展開に会場がザワめきだす。
「15分休め、そして15分で俺がお前を倒せなかったら、お前の勝ちでいい。どうだ、やるか?」
アーサーは少し考えたが、
「はいっ、ぜひ戦わせてください。」
「おお~っと!急展開!この状態が切れてしまうと見抜いたルーシュ選手、今から戦えと強制的に乱入だぁ。これは許されるのか?」
デン君が会場のみんなの代わりに話してくれている。
「普通は認められませんね。でも、明日この状態にならないアーサー選手は勝ち目がないということで、この条件を飲んだのでしょう。」
メロも俺の提案に乗ってきてくれている。
「それじゃ納得行かない!」
そう声をかけてきたのは、俺と戦うはずのディムズだった。
「わかってますよ。今すぐ準備お願いします。15分と言わず、先輩は1分ですけど。」
俺は目も合わせずにフィールドに入った。
「デン君、合図を!」
俺は早くしろと言わんばかりに実況者にも催促をした。
ディムズは納得していないようだったが、次戦う予定だったので準備も終わっており、10分早く始まるだけだと思い直し会場に入ってくれた。
「面白い展開になってきたが、これは満場一致ってことでいいのかな!?みんなぁ~」
デン君がもう一度確認を取る。
『早く始めろ』とか『いいぞ』とか『そもそもディムズが勝てるかよ』とか色々言われていたが、戦いが始まった。
~急展開の連鎖とルーシュの正体~
フィールドは砂漠。
(あそこまで言ったんだ、ディムズは逃げることはしないだろう)
パチンと指を鳴らし、砂を斬って砂埃を巻き上げた。
案の定、場所がわかればすぐにこっちに向かってくる。その影を確認し、俺も突っ込んだ。
「よくも俺がお前と戦えるのを楽しみにしていたのに、ただぶつかって終わりとか、そんなしょうもない終わり方だけはしたくなかった!少しでもお前に爪痕を残してやられたかった。このボケェ!!」
と、なんか投げやりなセリフが聞こえたが、ディムズはハンマーを振りかざし、砂に叩きつけた。
こいつもジャックPTで、弱くはない。慎重で影も薄いキャラ、隠密にはもってこいのタイプだ。それが周りに隠れるところもない砂漠フィールドで、砂埃を立て視界を奪ってくる。分身か影を使って残像を作っているのか、5体ほどに増えている。
俺はすべての影を狙い、構えた。
パチンッ。
綺麗に鳴った音が会場全体に響いた。
「まもなく約束の15分になります。フォールドは山。お互いの準備はできていますでしょうか?」
デン君がうまいこと進行してくれている。
アーサーもあの状態だと回復も早いようで、ほぼ全快だと言っていた。ちょっとチートな能力なような気もする…。
「イリュウ以外にも楽しめそうなのがいるなっ。」
俺はアーサーに向かって話しかけた。
「俺もルーシュさんと戦いたくて参戦しました。レインさんと当たってしまって、この状態にならないと勝てないと思って明日どうしようと少し落ち込んでいたんですけど、こうやって戦える場を作ってくれてありがとうございます。」
アーサーは俺と全力で戦えないと思っていたようだった。
「それとのその能力、光魔法だろ?後で話してくれるか?」
俺は不意を突いた。
「はぁ……やはりお見通しでしたか、賢者様。」
「え?なんでお前それ知って……」
俺も不意を突かれた。
「あれ?俺のこと知ってて言ってきたんじゃなかったんですか?」
アーサーもわけがわからなくなっていた。
「まぁ、すぐわかることなので後で全部話しますね。ちなみに内緒ですよ。」
アーサーは落ち着いていた。
「お互いにな。」
俺はまた面白くなったと思った。




