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甘やかされた欲しがり妹は  作者: 柚屋志宇


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09話 王宮での失敗

 ルビーが王宮に招集されたことを、私は知りませんでした。

 私が知らないところで事態は進んでいました。


 その数日間、私の部屋にルビーが突撃して来ることはなく静かだったので、ルビーは何かやっているのかなとは薄々思っていたのですけれど。

 そのときルビーは、母に指導されて作法を学んでいたようです。


 さすがに両親も今のままのルビーが王宮に行くのはマズイと思ったようで、慌てて必要な作法を学ばせていたのです。


 必要な作法。

 つまり、挨拶などの、やらなければならない事を教えたようです。


 ルビーは、やってはいけない事を今まで許されて来たので、やってはいけない事も教えなければならなかったのに……。



 ◆



 国王陛下の招集に応じて、父コランダム子爵と一緒にルビーは謁見するために王宮へ行きました。


 ルビーが当主にふさわしくないという評判は真実か否か。

 国王陛下がルビーに実際に会って確かめるためです。


 特別優秀である必要はなく、当たり前のことが普通に出来れば良いのです。


 ですが、ルビーはやらかしてしまいました。

 やってはいけない事をやってしまったのです。



 ◆



 ルビーが父に連れられて王宮へ行くと。

 王宮の玄関口でカーネリアン王子が二人を出迎えたそうです。


 カーネリアン王子は第三王子で、ご兄弟の中で一番の美貌でいらっしゃいます。


 美貌で末っ子の第三王子を国王陛下は少々甘やかしているらしく。

 そのためカーネリアン王子は、兄君である王太子や第二王子に比べて、少々子供っぽく奔放なところがあるとの噂でした。


 そして……。

 噂通りの奔放さで。

 カーネリアン王子はルビーを見物するために、王宮の玄関口で待ち構えていたのです。


 ルビー・コランダムは跡継ぎとして不適当であると多数の貴族家からの訴えがあったため、ルビーのことはあちこちで話題になっていました。

 それで興味を持ったのでしょう。


「コランダム子爵、よく来た」


 カーネリアン王子は、父とルビーに気さくにお声を掛けてくださったそうです。


「これは……カーネリアン殿下、ご機嫌麗しゅう」

「その娘がコランダム子爵の跡継ぎか?」

「はい。我が娘ルビー・コランダムにございます。……ルビー、このお方は第三王子カーネリアン殿下だ」

「え、王子様ぁ?!」


 ルビーが不用意な声を上げると、父はすぐにルビーを窘めました。


「ルビー、控えるんだ」


 カーネリアン殿下はとても気さくなお方で、ルビーの粗相を笑って許したそうです。


「あはは……。たしかに私は王子様だよ」


「娘が、申し訳ございません、殿下。……ルビー、殿下にご挨拶を」

「は、はい。ルビー・コランダムです」


 ルビーはちゃんとカーテシーをしてカーネリアン殿下にご挨拶をしたとか。


「ルビー嬢は噂とは全然違いますね。こんな可愛い令嬢だったなんて」


 ルビーはストロベリー・ブロンドの美少女です。

 そしてカーネリアン王子と同い年。


 ルビーは作法が拙いので、カーネリアン王子はルビーを自分より年下だと思ったかもしれません。


 奔放で気さくなカーネリアン王子は、ルビーを褒めたそうです。


「やはり会ってみなければ解らないものです。ルビー嬢のように可愛らしい令嬢にはぜひ王宮に来て欲しい」

「そ、そんな、可愛いだなんて……」

「綺麗なストロベリー・ブロンドですね」

「あ、ありがとうございますぅ」

「あはは……。可愛いね。私はルビー嬢が子爵家を継ぐことに賛成です」


 カーネリアン王子は気さくに、それはそれはとても気さくにお話をなさり、ルビーの容姿を誉めそやしたそうです。


 それで、ルビーは気を許してしまったのでしょう。


 王宮に行くとなってルビーは最初はそれなりに緊張していたこととは思いますが。

 カーネリアン王子があまりにも親しみのある振る舞いをなさったので、気を抜いてしまったのでしょう。


「私がルビー嬢を謁見の間まで案内しますよ」

「わあ、ありがとうございますぅ!」


 ルビーはいつものように飛び出して、そしてカーネリアン王子の腕に絡みついてしまったのです。


「……っ!」


 カーネリアン王子が驚愕の表情で固まるのと、同時に。


「無礼者!」


 カーネリアン王子に付き従っていた護衛が、素早くルビーを王子から引きはがしました。


「きゃあ!」


 ルビーは手荒く王子から引きはがされ、取り押さえられました。


「ルビー!」


 父は蒼白になりました。

 護衛は王子を守るようにして、父を糾弾しました。


「コランダム子爵、どういうつもりだ!」

「も、申し訳ありません!」


 父はその場で平謝りしましたが、取り返しがつきませんでした。


 そう、王族の体に、許可なく触れてはいけないのです。


 ルビーはいつものように甘えたつもりだったのでしょうが。

 暗殺者と疑われるような動きをしてしまったのです。


 そんなつもりは無いと言い張っても、王族の体に触れることはそれだけで無礼ですから、そのまま牢に入れられても文句は言えない所業でした。


 とはいえ。

 父もルビーも国王陛下に招集された身です。


 ルビーは護衛に後ろ手を押さえられたまま、引き立てられるようにして、国王陛下に謁見することになりました。


「カーネリアン、一体何があった。説明せよ」


 簡単な報告を聞いていた国王陛下は、カーネリアン王子に詳しい説明を求めました。


「はい、陛下。ルビー嬢がいきなり私に抱き付いて来たのです」


 カーネリアン王子がそう言うと……。


「抱き付いてなんていませんから!」


 ルビーは即座に反論の声をあげました。

 発言を許可されていないのに。


「私は腕を組んだだけです! 王子様は嘘を吐いています! ちょっと腕に触っただけで、私がなんでこんなことされなきゃいけないんですかぁ!」


 国王陛下は、頭が痛そうに額に手を当てたとか。


「もう良い。解った。コランダム、下がれ」

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