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10話 国王の判決

 父とルビーは捕らえられて牢に入れられました。

 我が家にも兵士を連れた調査官が来ました。


 調査官に応対した母は取り乱して泣き喚き、話にならなくなってしまいました。

 それで執事が、私を呼びに来ました。


「お父様とルビーが牢に? 一体何をしたんです?」


 私はそこで初めて、父とルビーが王宮へ行っていたことを知りました。


「なるほど……」


 調査官から事情を聞いて、私は頭が痛くなりました。


「コランダム子爵とルビー嬢に他意がなかったことは国王陛下もご承知です。しかしお咎め無しでは示しがつきませんので……。形式的なものです。取り調べが終わったら、明日には釈放になるでしょう」


「お手数おかけしてしまい申し訳ありません……」


 私は父とルビーが捕らえられた理由に、内心でほとほと呆れ返りながらも、調査官の質問に答えました。


「はい。ルビーは作法が未熟で、日常的に子供のような振舞いをしておりました。おそらく甘えが出たのでしょう……。ルビーが自分から令息に腕を絡めることはよくありました」



 ◆



 翌日。

 父とルビーは釈放されて帰宅しました。


 父は一気に老け込んだように呆然として。

 ルビーは不服そうに憮然として。


 そして、さらにその翌日。

 国王陛下の判決が下りました。

 ガーネット伯爵が訴えていた件の判決です。


 王宮からお使いの文官が来て、国王陛下の判決の内容を記した文書を読み上げました。


「ルビー・コランダム嬢は、コランダム子爵家の後継者として不適当である。認めることはできない」


 まあ、これは……。

 父とルビーが牢に入れられた時点で解っていた結果ではあります。


 王宮に行く前までは五分五分だったと思います。

 しかしカーネリアン王子に無礼を働いた時点で、ルビーは失格が確定しました。

 さらに国王陛下の御前でルビーは許可なく発言し、その発言内容も無礼でした。

 そこで完全に潰えました。


 爵位を継ぐどころか。

 ルビーは貴族との結婚すら難しいでしょう。


 ですが、それで終わりではありませんでした。



 ◆



「サフィール・コランダムを、コランダム女子爵と認める」


 王命により、父が爵位を剥奪されました。

 そして私がコランダム女子爵となりました。


 私は王宮の大広間で、大勢の貴族たちが見守る中、国王陛下より爵位の継承を認められました。


「王国貴族として微力をつくしてまいります」


 私はまだ若輩であるため、後見人が付きました。

 私の後見人は、婚約者アルマンディン様の父ガーネット伯爵です。



 ◆



「タイタナイト公爵が私の後押しを?」


「そう。公爵閣下もコランダム子爵にはご立腹で、それでサフィール嬢に代替わりさせることに協力してくださったんだ」


 私が早々に爵位を継承できた件について。

 アルマンディン様が裏事情を教えてくださいました。


「兄さんがスフェーン様と学院で一緒で、仲が良かったからね。それで父親同士も仲良くなったんだ。スフェーン様は第二王子殿下とも仲が良いから、第二王子殿下からも国王陛下に進言していただいた」


 アルマンディン様は、ご家族の煌びやかな交友関係を語られました。


 ルビーの件で、多数の貴族家から意見があったのも、ガーネット伯爵夫妻や、アルマンディン様のお兄様たちが人脈を駆使してくださったおかげのようです。


 私が打ち明けた我が家の事情を、アルマンディン様はご家族に相談なさり、そしてご家族が協力してくださったのです。


「末っ子で甘やかされてるって言われるのが嫌だったから、おねだりはしないようにしていたんだけど。事が事だから家族に協力してもらったんだ」


 私には、見えました。

 アルマンディン様の後ろに、末っ子を溺愛するご家族の姿が。


 私がアルマンディン様に魅かれたのは、私が持っていないものを彼が持っていたせいもあるかもしれません。

 アルマンディン様には、屈託の無い明るさがあります。

 それはおそらく愛されて育った者が持つ明るさでしょう。



 ◆



 爵位を剥奪された父をどうするか。

 コランダム女子爵である私と、私の後見人ガーネット伯爵と、コランダム家の親族とで話し合いが行われました。


 親族たちは、ルビーの教育を怠った父に怒り心頭でした。

 これ以上、王都で恥を晒すことは許さないということになり。

 父には、母とルビーと一緒に、領地に引きこもってもらうことになりました。


 父が引きこもる領地の家は、領地館(カントリーハウス)ではありません。

 領地にある小さな館です。

 小さな館といっても貴族にしては小さいというだけで、執事が何人もの使用人を統括している館です。

 生活に不自由することはないでしょう。


 これであらかた一段落。

 あとは、私とアルマンディン様の結婚式の予定を残すのみ。

 と、思っていたのですが。


「ルビーが?!」


 両親とともに領地へ行ったルビーが、私を訪ねて王都へ舞い戻って来ました。


 ルビーは王都へ来ることを禁止されているわけではありません。

 これは両親にも言えることですが。

 大人しく領地の館にいるなら生活の保証はするけれど、言うことを聞かないなら面倒は見ないということです。

 私に切り捨てられる覚悟があるなら王都に来てもかまわないのです。


「はい。ルビー様は居間でお待ちです」


 執事にそう告げられ、私が居間へ行くと。


「お姉様!」


 不服そうに顔を歪めたルビーが居ました。

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