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年下の男

ベッドから起き上がると、また現実に向き合わなくてはならない。

そうやって、毎日ジェットコースターのような感情とともに生きてきた。

だから、今は、何が起きても怯まないし、男に感情移入しないし、こちらから好きにならないと決めている。


だって、いつも結末は同じって知ってるから。



「松村、今日からよろしくな。」


「松村絵里花です。今日からよろしくお願いします。」


4月のあたたかい陽が降り注ぐ日、私は部署異動後の初日を迎えた。

会社が力を入れている関西の新規事業部へ主任として異動した。キャリアは順調だ。


一か月が経ち、仕事にも慣れてきた。

窓を見ると、青葉が街頭に照らされ、艶めく緑が風に揺られている。

もう20時か…。

部下たちとの面談、業務整理を終え、PCをシャットダウンし、エレベーターを待つ。


「絵里さん!お帰りですか?」

(隣の課の山本悠太くんだ)

「うん、今日もこんな時間になっちゃった」


「駅まで一緒に帰りましょう!」

「うん、そうしよっか」


「お腹空きましたね、飯サクッと行きません?」

(たしかに私は今日は朝から何も食べていない…)

「いいね!行こう!」


居酒屋に入り、話が盛り上がり仕事やプライベートの話を3時間近く話した。

異動後気を張っていたこともあり、緊急が解れたのか、私は久々にお酒が回ってしまった。


「絵里さん?大丈夫ですか?僕、タクシーで送ります。」


山本くんは玄関まで送ってくれた。

「ありがとう。じゃあまた明日…」

と言いかけた。


山本くんに抱きしめられ、キスをされた。

そして、甘く深い関係へと落ちて行った。


翌朝、ベッドから起き上がり、何もなかったように会話をし一緒に会社へ向かった。


(やってしまった…一度限りにしよう。)


それから1週間が経った。

夜、20時。今日はまだ帰れないな…


LINEが鳴る。

「絵里さん、何時に今日終わります?」

山本くんだ。


「あと30分くらいかな。」


「僕もそのくらいなんで、飯行きましょう!」


胸がざわつく。同時に、

「うん、行こうか。」

と返信をしていた。


話は盛り上がり、彼はまたうちに来た。


こんな日々を繰り返し、気づいたら彼は週3日以上うちに泊まりにくるようになった。


家でも飲みながら、色々な話をした。

もう側から見ればカップル同様だった。


ある日、私の行きつけのお店に山本くんを連れて行った。


常連さんたちに「絵里ちゃん、彼氏?」

と聞かれ「違います」と言おうとした瞬間、

「はい、彼氏です!」と山本くんは言った。


あ、付き合ってるんだ。嬉しい!


その後も、

「絵里さん、何て呼ばれたい?」

「なんだろう、先輩たちは絵里花ってみんな呼ぶよ?」

「じゃあ、僕も絵里花って呼ぶね!

僕のことは悠太って呼んでほしいな。」


毎日、バラ色で久々に恋愛ソングなんかを聴いて口ずさんでいた。

1つの事実以外は、全部、全部が幸せだ。


悠太には、彼女がいる


でも、週の大半を家で過ごし、私のことを彼女というのだから、きっと別れたのだろう。

怖くて、彼女と別れたの?と聞けなかった。


四季は変わり夏が来た。

一緒に博多へ旅行へ行った。




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