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24日目(後)

「稼いでるって? たとえそうだとして、なんで俺がお前らに分け前なんてやらなければならない」


 とりあえず、冷静に質問してくると、向こうは答えた。


「あぁ? 先輩にいい思いをさせるってのは後輩がやらなきゃならない義務ってもんだろうが! 口答えするんじゃねぇよ」


 当然の如く、碌でもない返答だった。

 そんな義務など、法的にも倫理的にも存在するわけがない。

 この世界においてもだ。

 まぁ……別に論理的な理由なんか求めてないのだろうが。

 ともあれ、確認しておかなければならないことはまだ、ある。


「お前たちが、今話題になってる《冒険者狩り》ってやつなのか?」


 どうもこの言い方が彼らの自尊心を刺激したようで、鼻の穴を膨らませながら言う。


「なんだ、知ってるのか……そうよ。俺たちこそが《冒険者狩り》のムルカ、ゼル、そしてゲットだ」


 自らはっきり名乗ってくれるとは、助ける。

 バカなんじゃないのか?

 冒険者組合の規約において、盗賊に身を落とした冒険者は処断して構わないとされている。

 もちろん、これは国の法において、盗賊は根切りにして構わないとされているからこそのことだ。

 つまり《冒険者狩り》なんて名乗った時点で、どのように扱っても許されるということに他ならない。

 それが分かっていないのか、彼らはニヤついているが……。


「怖気付いたか? はっ。だったら金目のものをおいておけ。それで許してやるよ。地上に戻れるかどうかはわからんが、俺たちと戦うよりマシだろうが、新人」


 いまだに状況がわかっておらず、そんなことを言う。


「俺は許す気がないけどな」


 軽くそう言った後、俺は足に力を込めて地面を蹴った。

 魔力を吹き込めて、身体能力を上げて動く……《縮地》の技法だ。

 即座に彼らの背後に至ったことを、数秒後に察したムルカたちだったが、俺はその時にはすでに、一番背後にいたゲットの首を刎ねていた。

 

「なっ……」


 人殺しは、初めての経験だった。

 自分がそれをした時、一体どういう気持ちになるのか、想像の世界でしかなかったが、思ったよりも心は震えなかった。

 頭の中で思っていることはある。

 人を殺してはならない。

 人を殺せば、人間というのは終極的に変わってしまう。

 もう二度と、後戻りは出来ないのだ。

 そういうお題目が、心の中を行き過ぎる。


 だが……この世界において、それは一体どんな意味があるのだろうか。

 野獣のように人を襲い、犯し、殺す者たちが跋扈する世界の中で、俺一人が聖人のような振る舞いをしたとして、意味があるのか?

 もしかしたら、教会がいつか、それこそ俺を聖なる人として列聖してくれるのかもしれない。

 だが、そのために無視した悪魔たちが殺すだろう人々を、一体誰が救ってくれるというのだ。

 碌でもないやつは、その場で処断する。

 それが最も効率的で合理的だ。

 そうではないのか。


 少なくとも、今、現在進行形でなんの罪も無い新人冒険者たちの命を奪い続けるムルカたちについては、今すぐにその命を断つことこそ、世のため人のためだと俺は確信していた。


「……お、俺を殺すのか。神が許さないぞ。人を面白ずくで殺した者は決して天の国にはいけない。お前は……」


 ゲットの後、ゼルの首も刎ね、さらにムルカの足を引っ掛けて転ばせ、剣を振りかぶる俺にそんなことを言うムルカ。

 面白い。

 これがまさに命乞いというやつだな、と冷静に考える。

 しかし……。


「別に俺は何の神も信仰していないよ。お前は地獄行きだがな」


 そう言って、俺はムルカの首も刎ねた。

 軽く飛んだ首は、どうもどこかCGのようで現実感がなかったが……。


「殺してもお前が正しいと思うのなら惑うな」


 アウロラの言葉が頭の中に響いていた。

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「……お、俺を殺すのか。神が許さないぞ。人を面白ずくで殺した者は決して天の国にはいけない。お前は……」 わー面白ーい、お前が言うのか。
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