第8話 邂逅②
瀕死の黒猫を治療し猫用のミルクとフードを購入した到真は自宅へと戻った。
猫なんぞ飼ったことのない到真はとりあえず店員さんに聞いたどのような猫にも使えるキャットフードとミルクにしておいた。
家に帰るとまだ黒猫は寝ていたためミルクとキャットフードの用意をした後、お気に入りの異世界産の高級茶葉で淹れた紅茶を飲みながらTVのネット配信サービスでアニメを見ていた。
既に異世界ファンタジー経験者の到真からしたらあまりそういうものを見なさそうだが作品の設定が新たな魔術の参考になったり、ダークファンタジーなどにおいては現実感のあるシリアスなストーリーがいいとして異世界から帰還した後も好き好んでいる。
お気に入りなのはイギリスを舞台とした某吸血鬼バイオレンスアクションであり、OVAだがそのクォリティといったら何度も見てもすごいものだ。
そうしながら紅茶を飲んでいると黒猫が目を覚ました。
辺りを見回した黒猫は到真に気づくと若干ではあるが威嚇気味になった。今の到真は外見に使っていた魔術を解除しているため白髪と赤い目、体中の傷跡が目に映ったからだ。最もそんな視線は異世界で慣れている到真は用意してあったミルクとキャットフードを黒猫の前に置いて一言
「いいぞ」
裏表のない言葉に警戒を少し緩めた黒猫は一口食べるとそのおいしさに目を輝かせて勢いのまま頬張ると到真は納得のいく表情でそれを見ていた。。
「やっぱりドラゴンエキスをかけると格段にうまいよなぁ」
黒猫の様子からキャットフードだけでは栄養面は回復しても魔力的な側面は回復が足りないと考えた到真は0.1mlではあるものの異世界最強クラスの種族でもある龍種からわずかにだが抽出したエキスを混ぜていた。龍種は恐ろしく強く、中には国をも滅ぼす力を持つものもいるが、その栄養も最強クラスであり龍種の肝から作った薬ともなれば一ヶ月は不眠不休で動けると噂になるほどの栄養である。そのわずか0.1mlでも貴族や王族がこぞって求めるものであり、元気にならない理由がない位の代物だった。
そんなものを猫に使うなど貴族たちが聞いたら卒倒するレベルの豪華な食事を黒猫は本能のままに平らげるととんでもないことをした。
「うむ、今までの中で一番うまかったぞ。礼を言うぞ人間」
「ブーーーーーーーーーー!」
まさかの猫が喋ったという事態。それも本来魔術がないであろう世界でこの様な事態に遭遇してしまった到真は思わず口に含んでいた紅茶を吹き出してしまった。
ゲホッ、ゲホッとむせながらも事態をあるがままに飲み込んだ到真は黒猫を見つめて
「お前喋れたのか!?」
「あ、すまん。つい気が緩んだ上にこんな美味しいものを食べた余り気を付けるのを忘れとった。」
「...........................」
未知との遭遇を久々に感じている到真をよそに黒猫はまた辺りを見回して「ふむ」と一匹で納得すると、
「見たところおぬしが助けてくれたようだな。この恩は必ず返す。ではさらばだ」なんといい庭へと出ようとして
「待てい」
「ブニャァ!?」
我に返った到真によって尻尾をつかまれ悲鳴をあげると、キッ!と到真を睨み付け
「何をする!」と若干涙目になる黒猫だったが到真の方はお構いなく淡々と答えた。
「いやなにお礼だけ言って帰ろうとしているんだろ。せめてお前が何者なのか説明するべきだろ。いくら恩を返すと言ったってなにも言わずに帰るノカー。ヒドイナー。傷ツイタナー」
ヨヨヨと明らかなウソ泣きなのだが、黒猫には効いているようで「ぐぬぅ」と悩んではいるようだ。
「だがこれはおぬしの為だ!下手に知ろうものならおぬしまで巻き込まれるぞ!!」
黒猫の方も負けじと反論する。
ならばダメ押しと言わんばかりにビーンズ並の粒を指弾の要領で黒猫の先ほどまでの傷があったところに命中させると黒猫はさらなる悲鳴を上げてのたうち回った。
「ほらみろ、まだケガが完治していないんだろ。ケガ人は大人しく安静にしてなさい。」
「いや儂人では「関係ありません」....はい」
まだ抵抗する黒猫だったが有無を言わさない到真の圧でおとなしくなった。
(確かにこれまでの様子からこの少年は悪い奴ではない。加えて....この感じは人でもあるが奥底に《《ナニカ》》がある。そしれそれにくらべたら儂なんぞはちっぽけな.....、いや絶対に勝てん)
いざ何かが起きたとしてもこの少年ならば大丈夫かもしれない。そうした感情の下しばらく到真の世話になることを決めたのだった。
作者もそのアニメは好きです。
あと更新についてですが今は時間があるため書いていますが、場合によっては更新がなかったりします。不定期で申し訳ございませんがご了承ください。