第7話 邂逅①
「さて、治療していきますか。」
リビングへと戻るなり瀕死の黒猫をスペースを確保したテーブルにそっとおき、治療の準備へと取り掛かった。
治療といっても魔術によるものだが、異世界の魔術知識が豊富な到真にとっては手間はかかれどそこまでハードなものではない。
魔術師において術式の構成力と魔力操作のセンスがとりわけ重要視される。魔算核特性と呼ばれる各魔術分野に対する適正が到真はあまりにも偏っているだけであって魔導士としては差し詰め超一流でもある。
そうしたことからも問題なく準備を進めていた。
「まずは呪いの解析だな」
黒猫に付けられた呪傷はまず呪いを解析して剝がすなりしないと治癒の際に障害となる。呪いへの耐性は異世界トップクラスだがそれによって行き場を失った呪いが他の人に害をなすかもしれない。そうしたことを避けるためにも魔術による治療の際は下準備がなりよりも大切である。
【我が眼は世界の刻証を写し取らん】
ファンタジーの定番の鑑定の魔術の中でも術式系に特化した【グラム・アナライズ】を使い呪いの術式を調べる。
「よくある衰弱系の呪いだな。ただその呪いの効果は高いうえにどうゆうわけか神性特効を組み込んでいる。加えて治癒を阻害する効果もあることでより高めているな。呪いで死ぬことはないが出血やその他要因で死ぬ可能性は十分あったわけだ。..一般人がこの呪い食らったら永久に植物状態ものだぞこいつは。」
明らかに猫一匹に使うようなものでない呪いを分析した到真は次にその呪いを剝がす準備へと移る。
「とりわけ捻ったものでもなかったから基本的な浄化の術式で大丈夫だな。触媒には塩と純水でいいか。純水は水道水を成分分離処理して作るとして、あと呪いを誘導するものは......手鏡で代用できるな。」
術式の構成要素でもある霊装は特殊な素材で作ったり加工を施したものを使うが、凄腕な魔術師となると日用品や料理器具といったものでも霊装としては使うことができる。その中でも塩は古来より浄化効果があるとして使われてきた。
他にも普通ならば魔術に無縁なものでも自身の魔術的な解釈を通して代用することもあったりと、まさに弘法筆を選ばずな者たちである。
触媒となるものを選んだ到真は化学実験の器具に似ている実験器具を使いながら魔術に使える様に調整する。
調整をすました後、黒猫を中心に魔法陣を描いていき四方に純水、食塩を溶かした純水、手鏡、試験管を置いて準備を完成させる。ミスがないかと確認した後に呪文を唱える。
【穢れ無き清浄よ・彼の者に巣くう呪いを喰らえ・そして清め溝ぎ祓い給え】
詠唱が終わった途端に魔法陣が光り輝くとこれはまたこの世のものとは思えないことが起きた。
食塩を溶かした純水が意思を持ったように黒猫の傷にまとわりつきその色を紫へと変える。そして今度は純水の入ったガラスの容器に飛び込むと紫の霧へとすがたを変える。そして手鏡に向かった途端方向を変えて試験管の中へと入っていった。
到真はその隙を見逃さずに試験管に栓をすると今度は亜空間を作り出してものを保管する魔術である【アイテムボックス】から過回復で腐り果てて死なないように薄めた回復薬を取り出すとその一滴を黒猫の傷の箇所に垂らした。
すると傷を光が埋め尽くした直後には傷はきれいさっぱりに無くなり息の荒かった黒猫も今はスースーと寝息を立てて眠った。
一連の流れを見届けた到真は黒猫をクッションの上へと移し防御性の高い結界を周りに張ると、猫用のミルクとフードを買いに外へと出かけるのだった。
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