第54話 異能組織⑥
路地裏で露草はひたすらに走っていた。
脳裏浮かぶは別れる前の二人の声だった。
『露草、あなたが捕まったら全てが終わるかもしれない。だからあなただけでも!』
『心配すんな、後で灯と一緒に追いかけるから!』
自分を逃がすために残った二人の声が脳にフラッシュバックして、涙を浮かばせていた。
「お姉ちゃん.......!ユート君..........!」
自分が捕まれば世界が、全てが終わってしまうという重責と、3人でただ平穏に暮らしていたい願望、そして希望が露草の心をぐちゃぐちゃに、そして複雑にしていた。
そんな中でも助けを求めてただひたすらに走った。
「警察.............はだめ。組織の手が及んでいるかもしれない。けど、スマホは一向に繋がらないからユイさんにも助けが呼べない......!どうすればいいの........」
袋小路な状況でも希望を探そうとするが、現実はそう甘くはなかった。
路地裏を抜けた通りにでたら既に大男、バディスが先回りしていたからだ。
「いやはや、ようやく見つけたっス。君にまで『付与』されていて正直焦りましたっス」
「噓.......!なんで」
バディスがここにいるということは、勇人と灯が既に捕らえられたということに、露草の顔は絶望に染まった。
「おっと、あの二人はしっかり生きていますよ。姉の方は異能の過剰使用で体力が尽きて倒れていますが無傷っス。勇人君の方は、抵抗が激しかったので腕の一本が折れてしまいましたがそれだけっす」
二人の生存に安堵すると共に、露草は別方向に逃げようと足を踏み出す。
「おっと逃げないでくださいっス」
「うぐッ!」
逃げようとした露草をバディスは一瞬で組み伏せた。
二人の間の距離は10メートルはあったはずだが、異能で強化されたバディスからしたらこの程度の間合いはないに等しい。
しかし
「⁉」
突如として背後に感じた微かな、しかし恐ろしく鋭い殺気をバディスは感じた瞬間に、組み伏せを解いて、本能で右へと跳んだ。
『感応増幅』を捕らえる絶好の機会だったが、あのまま組み伏せていせば確実に死んでいた。
その証拠に、左脇腹に出来た深くもないが浅くもない切り傷が生存の危機であったと、身体に警鐘を鳴らす。
懐に入れていた止血剤で応急処置をして、露草の方へ顔を上げると一人の人物が彼女のそばに立っていた。
一見すると普通の高校生の少年だが、右手には匕首、またの名をドスと呼ばれる短刀を持っており、刀身に流れる血が先程バディスを切った代物だと確信させた。
そして少年の目は鋭く、殺気を帯びてバディスを捉えている。
そして口が開いた
「あいにくとコイツはうちの学校の後輩でね。死にたくなかったらとっとと帰れ、筋肉モリモリマッチョマン変態野郎」




