第53話 異能組織⑤
「露草、どうかした?」
帰宅途中、落ち込んでいた様子の露草を気に掛けて、灯は声をかけた。
「..........私たち、普通じゃないよね...........」
「それは..........」
落ち込む露草を励ましたかったが、灯にも否定することは出来なかった。
彼女らには両親もいない。親族もいない。ただ言えるのは家族は今いる三人しかいないということだけだ。
「初めてここまで話したのは先輩以外にいなかったの。....それでもしもっと普通でいられたらこんな経験が多かったのかもしれなかったかも..........って」
露草が心を開きかけたことに姉の灯としては応援したい。
「別に気にすんなって。俺たちは何であろうと家族だろ」
「そうそう、あれで最後じゃないんだしまた会えるから」
二人の励ましもあって少しだが露草の気も晴れた。
「ありがとう二人とも.........」
「べ、別に気にすんな」
「あ、照れてる~」
「っるせえな!お前もだろうが!」
3人とって大切で、楽しい笑い声が秋葉原から少し離れた通りに響いていた。
が
「あ~、なんかいい雰囲気ぶち壊しですいませんけど捕まえさせてもらいますね」
「「「!!?」」」
どこか気の抜ける返事に反して突如聞こえた声に三人は固まった。
少し離れた前面にヘビー級の金髪オールバックの大男が立っていたからだ。
3人はこの人物を知っている。そしてどういう事態であるかもを。
「バディス.........!どうしてここに!?」
「あ、名前覚えているんですね。おかげでスムーズに進めてられそうです」
「そんなことは聞いてねぇ!どうしているんだよ!」
灯と露草を背に隠しながら勇人は吠える。
「なぜって組織が君たちを確保するためっすよ。自分がどういう存在かわかっているでしょう..........あ、っス」
「ッ!」
自分の口癖の修正をしつつ、さもありなんと答えるバディスに勇人は道端にあった小石を思いっきり投げつける。
勇人たち三人は実は異能力者だ。
彼の異能は『操力』。
自身が認識する力を文字通り操作することができる。
あくまでも『操る』だけなので、力を生み出すことはできないが操れる力には空気抵抗も入っている。これによって通常のエネルギーに加えて本来障害となる空気の力も加わって、どこぞのメジャーリーグの投手並みの速度に匹敵する。
しかし
「甘いっス」
バディスは特によける様子もなく石を捕らえる。そして石は彼の異能力、『強化』で何倍にもなった握力で砂利と化した。
「っち、化け物が」
「心外っスね、あくまで鍛えた末ですよ。これで力の差は分かったと思うっス。お互い無傷で済ませたいので降伏して「断る!」................そうっスよねぇ」
断固拒否な3人にバディスはため息をついた。
自分としてあまり少年少女を傷つける変態感性はない。
だが、かといって見逃す訳にはいかない。
「仕方ないっス。..............殺しはしませんが少し痛い目にあってもらいますっスからな」
先ほどまでの飄々とした空気が一変して冷たくなったのを三人は感じた。
物としか見てない視線とは違う、背筋が凍る様な感覚だ。
「灯!」
「うん!」
勇人の掛け声と共に灯の両手に光が帯びる。そして勇人にも同様の光が全身の縁に沿うように帯びる。
灯の異能でもある『付与』の効果の証だ。
彼女の異能は強化するという点では他の異能である『強化』と同じだが、違いは脚や腕といった部分を強化するだけではないく、異能にすら強化できるという点だ。
その効果もあって、今の勇人の異能はBランク異能力者に匹敵するものとなっている。
「それが『付与』っスか。強化する点は自分の異能と同じですが自分のは自分しか作用しないのが羨ましいっス。ま、せいぜい足掻いてくださいっス。」
こうしてBランク異能力者と同等になった勇人とAランク異能力者のバディスが激突したのだった。
「リィ、俺だ。連中が動き出した。そっちもそろそろ始めるぞ」




