第4話 最強の高校生スタート④
そうして異世界から帰還した到真だったがやはりというべきか、その後の生活は一筋縄ではいかなかった。
まず立ちふさがったのは教育の差だった。
小学3年生の時に異世界に飛ばされていた到真だったが、魂が異世界に飛ばされていたようなもので、彼の肉体は植物状態のまま病院の一室で入院していた。
費用については彼の両親は旅館を経営していたのもあって問題なかったのだが、5年間の教育の差というのは実に大きい。しかし異世界で手に入れたチートスペックの到真の肉体はそのまま帰還した時に植物状態だった到真の肉体を上書きし、異世界にいた頃の肉体のままだったので、少し魔術を使ったのもあってそこまで問題ではなかった。
最大の問題ともいうべきは異世界と現実世界の世の中の差であった。異世界で戦争真っ只中の生活を送っていた到真にとって普通の行動でも、平和な日本においては問題があったりしたりとして自分を抑えながら到真は暮らしていた。
彼の実家は日光にあるのだが中学生として異世界から帰還した後学生生活を送っていたがそうした認識のずれで、絡んできた不良を秘密裏に半殺しにしてしまったり、あまりの力で物を壊しかけたりとしてなかなか平穏な生活を送ることはできなかった。
そうした経験もあり高校では環境を変えるべく親との交渉もあって東京の都内の高校に進学し、自身は2人の姉のうち次女の方が昔使っていた都内の一軒家を使わせてもらい暮らしていた。
そうして迎えた高校生活初日。
一般の学生ならワクワクするくらいのものでも到真にとっては戦場生き残るくらいの覚悟で準備していた。
朝食を食べ終え体中の傷と白髪と赤い虹彩を魔術で色を変えて誤魔化し、洗面台で身だしなみを整えていざゆかんとしたときに時計を見た到真はあることに気づいた。
「今.....7時半....?」
到真が住んでいる家から学校までは一時間ないくらい。最も家から最寄駅までのバスにそのまま乗れた場合でありバスを逃せば10分くらいはさらにかかる。
加えて学校の朝のHRは8時25分から始まる。つまり......
「遅刻じゃねぇぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
脱兎のごとく家を出て(カギ閉めはしっかりした。)全力疾走でバス停に向かい走る到真。彼の肉体は彼の魔術の師匠によって施された制御術式によって人間の肉体と同じ状態ではあるものの、異世界でスパルタな人でもでもやらないようなウルトラハードな修行の末、この状態の身体能力でさえ身体能力の高さが売りのただの獣人が相手なら圧勝できるくらいには鍛えたられている。
アスリートとは比べものにならないほど高い身体能力による全力ダッシュで東京の住宅街を駆け抜ける到真だったが、不幸なことにバス停につく頃にはバスはほんの紙一重で出発してしまっていた。
バス去った後、一人バス停にポツンと残された到真だったが、遅刻は絶対という状況の中で小さく「...フフフ...」と狂ったような微笑みを見せ、
「...............やってやんよ。世界がその気ならやってやんよ.....!」
明らかに到真がものふけっていたのが原因なのだが本人には関係ない。
手に入れ力は納得のいかない運命を捻じ曲げるためにもあるのだッッッ!!
というしょうもない決意(本人にとっては重大)をしつつ自身の心の奥深くへと意識を向け、唱える
【我に秘められし原初なる力よ・我が脈をたどれ・そして今解き放たれん】
その瞬間、世界は改変された。