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第47話  異能力⑧

 充満した煙がトイズの視界を封じ込め、意識を一瞬だが切らした。


「ゲホ、ゲホ、戻るのでアル!」


 巨人に命令して、自分の周りを固める。

 一瞬ではあるが意識をそらさせられたことで逃がしたことを確信したトイズのは次なる手に備えると同時に全身の全神経が警告していた。


 一撃でももらったら死ぬ


 生きるために、勝つために、トイズは自身の生存本能をフルで回して備えるのだった。


 -------------------


(さて.........どうしたものかねぇ)


 煙幕を張ったことで一時的に時間を得た到真は身を隠してこれまでの戦闘の分析へと移っていた。

 異世界エルドシアでもこうしたことは結果として命を助けたことはいくつもある。その為、戦闘における分析は欠かせないものとなっていた。


(現時点で3つの要素がある。一つ、奴は何かしらの物質を使って人形を作り操る、この物質は多分生物以外ならいける。二つ、人形の数に限り制限はない、もしくはその上限が大きいか。そして三つ、人形は壊された後でも簡単な命令ならいける......だな)


 さっき到真の足に土人形の残骸が絡みついたことからもちょっとした命令ならいける、そう判断した。


(射程距離や他の要素もあるかもしれないが今じゃわからない。そして............)


 到真は煙越しではあるがビル群のある方角を見ていた。


(何かしたの能力で監視している奴がいる。この感じ多分()()()()()()()()。)


 戦闘が始まってすこしたったぐらいから到真は何者かに見られている感覚がしていた。

 異世界エルドシアの経験から何者かが能力を使ってこの戦いを見ていることを確信したのだ。

 龍神の力を使えば瞬殺だが敵の素性が判明していない以上、手札を知られるのはなるべく避けたい。


 しかし到真からすれば腑に落ちない点がさっきの戦いで存在した。


(何であのシルクハットはほかの術を使わない?仮にPS魔術師でもやりようはあるだろ?)


 PS魔術師とは異世界エルドシアにおける魔術師のタイプだ。

 特定分野特化型《Particular Specialization》魔術師と呼ばれることからPS魔術師として一般的には呼ばれている。


 この型の特徴は一分野に対しては追随を見せない才能だがその一点に特化しており、他の分野に対して適性がないことだ。


 そのいい例が到真だ。


 特魔術ユニークと呼ばれる、魔術師が自身の得意分野を極めた末に一から編み出した魔術で、到真専用の魔術でもある【真なる理(ヴァールハインケス)】の効果である一定領域内の魔術解呪が示す通り、到真は解呪ディスペルといった魔術の適正は群を抜いて高いが他の分野だと龍神ザルトレアの力無しに詠唱の短縮や省略といった芸当はできっこない。


 その為に魔術師界隈では良い印象を受けないが、逆に言えばその分野では無類の強さを持っているため軍や実戦を伴う魔導職では一部で好待遇で迎えられることもある。


 また、誓約ギアスとよばれる魔術をかけることで自身の他の才能と引き換えに伸ばしたい適性を高めて、生まれつきには遠く及ばないが後天的にPS魔術師となるものも一定数いる。


 しかしあくまでその分野に特化しているだけなので、研究の末に詠唱さえすれば誰でも使えるように整備された呪文なども使えなくはないのだ。


(もしかして()()()()()()()使()()()()ってことか)


 実は雷崎家の一件の翌日に到真は鳴と夜月の協力の下、とある検証をした。

 その結果、異世界エルドシアの魔術は陰陽術に比べて威力はでるが効率面でいれば陰陽術の方が遥かにいいことが判明した。


 無論それはあくまで同じくらいの適性があった場合であり、鳴のように異世界の魔術のほうに適性があったりした場合は逆だが、それでもこの世界では異世界式の魔術は消費魔力が異世界の時と比べて幾分か増しているだ。


(あの時はそういうことだとしていたが.............それなら)


 そうこうしているうちに煙幕が晴れたので、到真は身を出して戦場へと戻る。

 気づいたトイズが鉄の巨人を向かわせるがむしろ好都合であった。


「【憤怒の炎獣よ・その炎牙で・喰らいつけ】!」


 三節の魔術言語ルーンで軍用魔術、歩兵級ルークの【バスタード・フレイム】が起動される。


 ゼルドース帝国の魔術師団で習うことが許可される軍用魔術は3つの階級で威力と運用が分かれる。


 単騎兵を相手とした歩兵級ルーク


 重装備や城壁などの破壊で使われる竜騎兵級ドラグーン


 国単位やそれ以上の相手を対象とした、複数人の儀式で行使される軍団級レギオン


 通常、歩兵級ルークを短縮、もしくは詠唱破棄できるか、竜騎兵級ドラグーンを三節以内で発動すればその時点で超一流の魔導師扱いされるが、歩兵級ルークでも殺傷性は他の魔術と比べて段違いなので一般人には教えることが禁止されているが、到真はかつて魔術師団に在籍していたがゆえに一応は使えるのだ。


 詠唱によって起動され、膨大な熱エネルギー圧縮して、右手のひらに発生した人体を一瞬で灰に変える熱量の炎弾が鉄の巨人の右腕に向かって放たれる。


 着弾による爆発とそれによる爆音と衝撃、そして火力が巨人の右腕を融解させ、使い物にならなくしてしまった。


「なななぁ..........!何で他の異能が使えるでアリますか!?」


 巨人の右腕があっけなく潰されたことにも驚きだが、異能力は一つしか使えない、そんな大前提が崩されてトイズは目の前の事態が受け入れられていないでいる、そんな光景から到真は予想が当たっていたことを確信した。


「何ででしょうね~?それよりも《《俺の手札がまだあるかもよ》》?」


 あり得ない

 しかし到真の余裕の表情がハッタリであろうとなかろうとトイズの焦りを助長させるのには十分すぎた。


「~!人形ヒトガタ!、人形ヒトガタァ!!」


 迫りくる到真に半狂乱になりかけるも夢中で異能を発動させるが到真に全て粉砕させらせる。


「アアアアアアーーー!」


 残った力を全て用いて鉄の巨人をもう一体生み出すが素材不足か、一部道路も混じっているが腕だけはしっかり鉄で出来ている。


 二体の巨人は到真を潰さんと迫るが術者が冷静でないからか動きも単調で先ほどと比べても躱しやすい。


「そろそろ決着と行くか」


 巨人を下がらせて盾にして守りに入ったトイズだったが、その言葉だけはしっかり聞き取ってしまった瞬間に到真は、巨人を挟んでトイズの正面に立っていた。


【我に秘められし原初なる力よ・わが脈をたどれ・そして今解き放たれん】」


 身体強化、【ストレングス・ブースト】によって引き上げられた身体能力を余すことなく利用した構え、そしてそこから放たれる拳は巨人を粉砕して、トイズを吹っ飛ばして、この戦いの勝者を決めたのだった。

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