第44話 異能力⑤
6限のLHRも終わり生徒各々下校する中で到真はぐったりして昇降口にいた。理由は言わずもがな勃発したプチ争奪戦だ。
学園トップクラスの美少女二人と同じ班という事態になり女子に飢えている男子、あとどういうわけか女子もいて最後の一枠を到真に決めてもらおうと、脅迫じみた懇願して来てスポーツテスト以来の逃走劇となった。
最後は先生の提案によるくじ引きでクラスの他の女子が選ばれたが、敗者《選ばれなかった者》や鳴や汐奈の信奉者の嫉妬と殺意の視線が移動中続いており到真に非はないはずだが精神的に疲れていた。
「なんでぇ..........こんな目に......(若干涙目)」
ただ力任せでやれば解決できるだろうが後々が悪くなるのでもどかしさもあってふてくされていた上に精神的な我慢は限界のため、もし他の面倒ごとが来たら暴発しかねないのでさっさと帰ろうとした時だった。
「天理到真君って君だよね?」
がタイの良いいかにも不良そうな学生が到真に話しかけてきたのだ。
「ヒトチガイデス」
「いやいや、他の生徒にも聞いたが君だって言っていたよ。ユートさんから連れてこいって言われたから悪いけど少し付き合ってくれない?」
「(噓だクラスメイトが僕を売るなんて)あの野郎どもあとで物理的に雑巾にしてやる」
「心の声と逆になってるぞ」
そうしてあれよあれよと連れてこられた先は校舎裏のいかにも面かせな場所だった。
いたのは180㎝くらいの高身長な赤髪をストレートに刈り上げた美男な少年だった。
Ýシャツに制服のズボンだけだったが、脱ぎ捨てられた制服のブレザーとネクタイから察するに中等部のものであり先の不良が高校の制服からも喧嘩強いのだろう。
不良学生が呼びかけると到真の方を振り向いて近づいてきた。
「あんたが天理到真か、俺は篠田勇人だ。よろしく」
「ハイそうですが何でボクを呼んだんですか?」
「それは........二人っきりで話そうか」
後ろの不良にアイコンタクトをとって帰らせた勇人は二人だけなのを確認して話へと移る。
「少しあんたに聞きたいんだけど武術か何かやっているのか?」
「え?まあ確かにやっていますね。流派とかは考えたことはありませんが」
「ただやっているだけか?」
「そうですが」
わざわざ二人っきりにしてまで聞きたいことか?、そう疑問に思う到真だったが勇人の方はどこか敵かを見定める目で到真を見ていた。
「正直に話す気はないってことか」
「え?」
「なら拳で聞き出す!」
「ちょっ!?」
勇人の言葉と共に右ストレートが顔面に迫ったのでバックステップで躱した到真だったが勇人の方は追撃を仕掛ける。
勢いは良いがあくまで喧嘩で鍛えたのか動きは洗練されたほうではない。
動きのぎこちなさや前動作から次の手を読めてしまう。
右ストレート、左フック、上段回し蹴りなど勇人の攻撃を全て躱していく。
そうしていくうちに勇人の動きは遅くなり息も切らしていく。
「ハァ、ハァ、やっぱ俺たちを狙って組織から来たってことか」
「さっきから何言ってうぉ!?」
それでも追撃は一向にやめる気はないようだ。
会話の最中も攻撃の手を緩めていない。
(しゃーなし、どっかでガードしてその隙をつくか)
ここまで来れば言葉での説得は少し難しい。
そう判断した到真は次の手がまた回し蹴りなのでこれを左でガードしてその隙をつこうとしてー。
「!?」
突如として到真は後ろに下がったのだ。
何かされたわけではない。
自分から下がったのだかそれでも理由はある。
(今、衝撃が一点集中できやがった!)
攻撃を受けた際その衝撃は受けた場所を中心に体に分散していく。
しかし今ガードした蹴りの威力が文字通り一点に収束していたのだ。
よほどの武術や格闘技ならできなくもない。だが勇人は明らかに動きは素人のはずなのにできたのだ。
考えられるとしては勇人が余程の技量を持っているか、何かしらの超常能力をも持っているか。
どちらにしろ普通の相手じゃない。
(すこしやるか)
先程と違い臨戦態勢へと移行する到真に少し後ずさり気味になる勇人だが彼も残った体力を振り絞り構えた瞬間ー
「コラーーーー!!何してんのソコ二人!!!!」




