第43話 異能力➃
「ユイ、頼まれていた食料品買ってきたぞ」
「ん、ありがとマネル」
中部地方のとある道の駅で一人の青年と少女がキャンピングカーの中にいた。
男の方は先程の戻ってきたのでビニール袋を持っているが少女のほうは先ほどからずっとパソコンを弄っている。
「何してんだ?」
「異能組織の情報システムにハッキングしてんの」
「お前何してんの!?」
少女の方は気楽に答えるが内容が内容だけにマネルと呼ばれる青年は気が気でしかない。
「あっちには”電脳”の意能力者が多くいるんだぞ!?もし居場所がばれたら流石に厳しいぞ!」
「ダイジョブダイジョブ。精々行動履歴をかすめるだけだし電脳では私の”電界”には太刀打ちできないよ」
だから大丈夫、そう断言する少女、ユイだがマネルからすればいつ落ちるかわからない綱渡り状態なので不安になってしまう。
しかしその後にユイの顔が少し険しくなった。
「ちょっとマズイ展開かも。連中、露葉ちゃんたちの居場所掴んじゃったぽい。」
「ッ...!今すぐ向かうぞ!連中の手に渡ればどうなるかわからん!」
「話は最後まで聞け!!」
シートベルトを絞めて発信させようとするマネルだがユイの全力チョップでどうにか静まるのだった。
「《《確かにマズイ事態だけど最悪でもない》》。むしろ私たちが行ったらより面倒になる。」
「どういうことだ?」
?マークのマネルにユイはパソコンの画面を見せる。そこには様々な資料や行動履歴があったが取り分け大きかったのは一人の少年と黒猫のものだった。
「ここに書いてある天理到真っていう少年、バディスをワンパンで倒したらしいの。加えて黒猫の方もAランククラスの実力者だって。」
Aランク
異能組織において異能を極限まで極めた者のみに与えられる称号、その実力は相性もあるが異能戦においては無類の実力で組織にも10人も満たさない。
ましてやかつて組織にいたこの二人もAランクだからこそそれがどれだけの強さか思い知っているので先程の少年と猫がどれだけの実力か察することができる。
そこでマネルは気づいた顔でユイを見る。
「お前まさか」
「そ、この二人に託そうと思ってね」
「いや危ないだろ!もしあの二人が邪な者だったらそれこそどうなるか」
「じゃあ聞くけどバディスたちAランク複数相手に善戦できる。私は実質戦闘能力は皆無だから」
言っていることは確かになので反論の口が閉じてしまうがそれでも不安がある。
しかしユイが重要な局面で的外れなことを言わないのも知っているので納得した。
「それでも念の為近づいておくぞ。いざとなったら俺も動く」
「OK。そしたらこの子にメールしておくから」
異能組織の目的の重要なピースである3人が確保されれば今のお互いいるという何よりも代えがたいものが失ってしまう。
誰にも二人っきりの平穏な生活を壊させない。
その決意の下に互いの手を強く握り占めていた。
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