第37話 雷崎家の後始末
更新遅れてすいませんでしタァァァァァ!
「以上が現時点での報告です。」
「分かった。後はこちらで片付けるから普段の業務に戻るように」
「では失礼します」
北海道札幌市のとある大きな神社の裏にあるこれもまた大きめの和風の家の書斎では狩衣と呼ばれるゆったりとした白い服を着た一人の男がスーツ姿の部下の男から報告を聞いたのち下がらせた。
茶髪の髪を中心に分けただけの髪型、丸眼鏡をかけてはいるがその顔はアイドルグループにも引けを取らないくらいに若々しく目つきの良さも相まって実際野暮用で外に出たときは思わず話しかけられた経験がある。(流石にその時の服装は洋服だが)
男の名前は清羅達也
北海道を活動範囲としている陰陽師の一族の長にして五大家の一角である清羅家の当主で到真たちとクラスメイトな清羅汐奈の父でもある。
そんなイケている顔立ちもここ最近の書類仕事が多いせいか寝不足で目元にクマが見える。
「まさか猫神様行方不明の話から国家存亡がかかるとはな...........」
寝不足の原因である雷崎家の清羅家に対する攻撃、国家転覆計画並びに壊滅は陰陽師界隈に瞬く間に広がり騒がせた。
鳴を載せて(本人は爆睡していた)、帰還した猫神の報告により一連の事件が明らかとなった。
雷崎家を取り潰そうにも既に猫神の手で壊滅しているらしい。
また明るみになった翌日に、安部家の使者が直々に来訪して雷崎家の今後と他色々の報告を受けた。
雷崎家の保有していた財産は一度安部本家の手で草の根残らず回収されたのち賠償金として支払いする手はずとなった。
また唯一の生き残りである雷崎鳴は猫神の証言もあり責任は追及しないとともに身柄は清羅の手で委ねられることになり学費といった諸々の費用は雷崎家の資産を利用することで合意した。
雷崎家が管理していた範囲については本家が直々に選んだ分家の精鋭たちが務めるらしい。どうやら一日で他の分家がこのようなことをしていないか本家が調べたうえで選んだらしくこれらに公安の超常現象専門の部署と関東の外寄りにある妖怪コミュニティと合同で治安維持に務めるとのこと。
少し話はそれるがこの事件を機に他の五大家の者たちも傘下の調査を行いその結果、雷崎家ほどではないが多くの《粗が見つかったらしく使える人材は一度本家に迎え、粗を出した者は叩き出されたらしい。
達也が受けていた報告も清羅関係の調査だったが、清羅家は他の家に比べて五大家の歴史は遥かに短いので、さほど苦労しなかったしそのような輩がいなかった。ちなみに達也個人としては清羅家が雷崎家にターゲットにされた理由に幕末に五大家の座を結果的に奪ったことへの逆怨みと予想したが今となってはただの妄想に過ぎないので割り切っていた。
むしろ達也の寝不足の原因はほかにある。
(まさかあの人のご子息が関わっていたとはね...........)
猫神の実力を疑うわけではないが一本取った相手、更にその一族相手に単独で壊滅したとは少し疑ってしまった上に周りに知らされていないが従魔となっていた猫神を見た達也は独自に調査を進めた。
その書類が整理された机の真ん中に置かれた履歴書には名前が書かれていた。
『天理到真』と
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「以上が雷崎家の後始末といった所か」
「まあ、ぶっちゃけそうなるよな」
達也が報告を受けていた同時刻
到真は東京の郊外で東京のビル街を見渡せる高さにある草原から少し離れた所で猫神から雷崎家のその後の報告を受けていた。
到真は白シャツに黒のジャケット、ズボンは動きやすさを優先したのかカジュアルな茶色の物で一般的なスニーカーを履いている。
赤目、髪は黒で髪型はいつも通りの少し全体的にツン立った感じだ。
猫神も小柄な黒猫の姿で話している。
「しかし鳴のやつこんなところに墓作って墓参り大変だろ」
「本人がそうしたいと言ったのだ。覚悟の上じゃろ」
今日が快晴かつ学校の創立記念日で休日とはいえ普通なら来ないようなところにいる理由は鳴の母親である鳴海の墓参りだ。
彼女は娘の為に命を捧げた。その結果もあって雷崎家の負の運命を断ち切れたのだ。ある意味最大の功績者でもある。
他の一族の遺体は火葬されて適当な墓地の無縁塚に放り込まれたが彼女の遺体は鳴の希望もあって個別に移されたのだった。ちなみに挨拶はしており離れている理由は娘と二人っきりの時間があってもいいだろうという到真と猫神の配慮だ。
「あの場にいたほかの連中、議員と言った奴らも皆死んでいて大ニュースになっていたな」
「雷崎家と無関係ということにしてあるから問題はなかろう。それに死んだのは確かあまり政治に関われないグループらしい」
「野党なそれ。あとそんなことは言うんじゃありません。確かに言っていることは的外れだがな」
それよりも、と到真の顔に苦笑いと冷や汗が出るとともに左を指さした。
そこには建物の一部が見えていたがそこからでも明らかに一般ピーポーが「宝くじ100億当たったよウェーイ!」なミラクルが起きない限り手に入らないくらいにきれいでありむしろ全体を一度見た到真からすればその冷や汗がやめられない止まらない。
「ボクとしては学園生活初っ端近くで豪邸手に入れちゃった方がコワイよ!?」
「言ってたではないか、『大きな家が丸々欲しいと』」
「言いましたよ!?ケド実際手に入るとは思わないじゃん!?むしろ最高すぎて俺の全幸運使っちゃったのか心配ですよコンチクショー!?!?」
そう到真君まさかの富豪入りしちゃったのである。
確かに異世界でえた財産の時点で一生、いや三生は遊んでもあるのだが異世界の通貨とこちらの金が合わない、平穏に暮らしたいといったことから封印していたのだが今回の雷崎家の一件で猫神が丸々洋風の大豪邸をプレゼントしてきたのである。
実家は和風だが部屋の区分や異世界で過ごしてきた建物はどちらかというと洋風なのでそこは良かったがいきなり大金が入ったことにより到真の金銭感覚がここ最近ガクブル状態のままだった。
この洋館はどうやら雷崎家が持っていたものらしく財産が清羅家にわたるときに入手したらしい。
「しかしどうして鳴を鍛えるのを続けることにしたのだ?」
ガクブルで若干涙目な到真へ猫神は鳴との特訓を続けることにしたことに質問する。
鳴との特訓の件は既に知らされている。
「ベツニー。このまま続けていれば財産の入手の伝手が得られるとかオモッテナイヨ~?」
ひょうひょうとする到真に猫神は、こいつ思っているなとジト目になる。
ならば
「何故肩入れする?お前にそこまで関係あるとは思わんが」
「じゃあ逆に聞くけど肩入れしない理由いる?」
追撃をかけたつもりが返されてしまった。
「理由なんかいらねえよ。.......しいて言うなら見たくなったかな?こいつがどこまで成長するか、どんな未来を生きるか、な」
どこか懐かしむ到真の顔をみてこれ以上の追及は野暮だとした。確かに理由がいるかいらないかの話ではない。
「あ、そうそう言うのが遅れたが儂、お主の従魔になったから三食ドラゴンエキス頼むぞ」
「ゑ?あれ毎日は流石にこっちとしてもキツイし、というかいつ従魔になった!?」
「二人とも~、何しているの~?」
「ム、鳴が呼んでおるな。」
「いや何無かったことに................ッって、逃げるなー!」
到真の懐にヘビーパンチな発言をした後鳴の呼ぶ声に応えて猫神、いや夜月は向かう。
魔術的な懐に支障をきたすまいと猫神を必死で追いかける天理到真。
そんな光景にどこか笑ってしまう雷崎鳴。
彼らの物語は始まったばかりだ。




