第32話 龍夜叉⑦
「ゴブッ!?」
ゴッ!と拳がクリーンヒットした音と共に唐突な顔面への衝撃によって魔族がよろけた。
何とか姿勢を保ったがその顔はさっきと見るからに違い鼻は変な方向に曲がっておりそこから魔族特有の青い血が垂れてローブと地面に青色を与える。
一方の到真は右手で拳を作り左手を手刀のようにして拳闘のステップのような動きと共に呼吸を整えていた。
「おま、お前えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
劣っているはずの人間によって自身の顔が無様な物へとされた怒りに身を任せて到真へと殴り掛かる。
明らかに素人の動きではあるがその速さはプロの格闘家と謙遜ない。
だが到真は冷静に引き付けて最小限の動きで躱して空ぶった魔族の左腕が伸びきったタイミングで下からの右肘打ちで左腕を無慈悲に破壊する。
うめき声すらあげる間も与えずに左フックが魔族の右側頭部を捉えると共に肘打ちの形からすかさず放たれた右拳が胴体を捉えて魔族を中心にあった樹木の幹へ吹っ飛ばした。
その隙を逃さんとすかさずに茂雄が繰り出す。老体ではあるが当主であるため身体も勿論鍛えられている。
先の魔族ほどのスピードではないが動きの無駄はない。
しかしその拳も先の魔族と同じく空を切っただけだった。
「てめぇはすっこんでいろ」
「ガバァァァ!?」
背中から声が聞こえたかと思いきや衝撃が背中から体内の隅々へと駆け巡り体内をズダボロに破壊して魔族ほどではないがこれも同じく吹っ飛ばした。
外見上は魔族の方がダメージあるように見えるが先の衝撃と共に放たれた魔力が茂雄の体内を蹂躙するとともに陰陽師として命といえる体内の霊力の流れをかき乱しており術師としても既に再起不能である。
「う~ん。やっぱし鈍ってんな~。まあ久々だししょうがないか。」
(あれで鈍っているの.....?)
手をプラプラ振りながら感想を述べる到真だったが一応上位の術師を見たことがある鳴からすれば今の到真の格闘技術は上位の術師相手でも引けを取らない、いや十分上にある。
今のが全盛期でないことがさらに到真の異質さを際立たせていた。
「ありえん..........ありえん」
先のダメージで一向に動けそうにない魔族がうわごとのごとくうめく。
「今のは夜森人の暗殺技術だぞ.....!何故貴様が使えるんだ........!」
夜森人とはエルフの中でも、魔族に与した者たちの総称である。
森人たちの持つ精霊の加護はないが、闇夜での戦闘の強さ、何よりその残虐さが実力主義の魔族に気に入られて、夜森人たちも思想の完全な対立から森人を憎んでいたために協力していた。
そんな彼らの門外不出の技術をどうして人間が身につけているのか全くわからなかった。
「いう義理はないが............しいて言うなら魔族舐めプしまっくたから逆襲されたんだよ」
「おのれ......おのれぇぇぇ.........!」
意味は分からずとも嘲笑されていることを痛感されることが魔族のプライドが酷く傷つける。
もし動けなのなら八つ裂きにできるのに、魔術が使えれば圧倒できるのに、そう思うことでしか出来ない現状が更に屈辱となりその顔には先のような余裕も冷静もなくただ負の感情だけが満たしている。
そんな様子を到真は見て一言
「やれやれしょうがない。特別に最強魔術【メガトン☆クラッシュ】で倒してやろう」
「ヒィ!?」
手のかかる子供を相手にするような言い草と裏腹に未知の攻撃に対して魔族は受けるしかないので無駄とはわかっていても身構えてしまう。
「いくぞ~!【メガトン☆~」
気の抜けた掛け声とは再び裏腹に一瞬で間合いを詰めた到真は上半身に魔力を全て費やして防御する。これならば魔族の基本スペックと相まってギリギリ耐えれるだろう。
しかしその結果は無情にもーーーーーー
「クラッシュ】!」
「hgoenqovaemolgviwlegrmoipaerm@!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
パンチ系だと予想したが魔力が込められた蹴り上げがアソコ、そうアソコをぶち抜いたのだ。
言葉にもならない悲鳴をあげて魔族は泡ふき、そして倒れた。
そして到真はさっきの位置へと戻り
「説明しよう!【メガトン☆クラッシュ】は相手の下の付け根をぶち抜くことでどういうわけか相手はぶっ倒れる必殺魔術なのだ!!」
((いやただの金的だろ................))
あまりの惨い攻撃にこの瞬間だけは猫神からも鳴からも同情されちゃった魔族でしたのだ。
なろうでの更新遅れてすみません。




