第31話 龍夜叉⑥
「いやね、人の性癖までには口出しするつもりはないんだよ。だから聞いておくけどこれって合意「んなわけあるか!」デスヨネー」
「貴様、何者だ?」
空気を読まない到真の発言にツッコム鳴。そんな漫才じみたやり取りの最中に気分害した声で魔族が問う。
「天理到真ですが何か?」
その名を聞いた茂雄はその顔を現実を受け入れられないと歪ませる。
「何故生きている!?ククリは!?奴ならともかくあのお方が直々に与えた《《人形》》まで倒したのか!?」
「人形?............ああ、あいつらのことか。お前が元締めか」
「ヒィ!?」
茂雄は自身の発言の最中に到真が一瞬放った冷酷な殺気に当てられすっかり縮こまった。
「何者か知らんが見た以上生かしては帰すわけにもいかんな」
茂雄の様子にも気にかけずに人差し指を魔族が到真に向けて刺したのを見て鳴は何しようとしているかすぐに察して叫ぶ。
「到真君逃げて!あなたじゃ勝てない!!」
「遅い!【雷精よ】!」
シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
「......................................................................................................................は?」
魔族の頭の中はフリーズした。
確かに呪文は唱えたはず。それによって生じた雷撃の一閃が到真の心臓を貫くはずだった。
しかし発生せずに肝心の対象については一切影響もない。
「【雷精よ】!【雷精よ】!どうしてだ!?どうして使えない⁉」
今までは使えてたはずの魔術がこの時使えなくなるという初見の事態にただうろたえ、困惑するしかできないでいた。
「もう魔術は使えねえよ」
「どういう..........」
到真の発言の意味も分からなかったがその答えは懐から取り出された一枚のカードだった。
そのカードには魔法陣らしき円模様が中心にあり円周外部の上半分は太陽が、下半分は月が描かれており,
まるで一日の時の流れを表している。
「こいつは昔作った自作の魔術装置でこいつを何らかの形で俺が認識することである魔術を使うことができる。」
「まさか..........」
「そうだ。一定領域内の起動中の魔術の絶対解除。これが俺の特魔術、【真なる理】」
その魔術がもつ他魔術に対する絶対的な効果に猫神を含め到真をのぞく一同は絶句していた。
たとえ相手がどれだけ魔術や陰陽術が達人クラスであってもこの術さえ使ってしまえば自分有利のワンサイドゲームへと変貌してしまう。
術による戦いにおいてどれだけ硬い素材の防具を纏っていても術を防げるのはあくまでも術以外になく一方的に蹂躙されるだけだ。
中には魔術特攻して物理的な破壊を捨てた術が相手ならまだ希望はあるがそんな相手が出るのはごくわずかであり奇跡に近いものである。
攻撃に関しても同様でロケットランチャーやマシンガン連射しようがそこに霊力がこもっていなければ効果は格段に薄くなるうえに思念型の妖に対しては全くの無力なのだ。
そんな反則級の性能に鳴の頭はいつしか天理到真への関心が占有した。
(只者じゃないのは知っていたけどここまでなんて.....到真君って何者なの?)
「ま、俺も使えなくなっちゃうんだけどネ☆」
「「「「は?」」」」
テヘペロ(*'ω'*)と言わんばかりのドヤ顔でぶち込まれた致命的な弱点暴露に周りの空気が一瞬停止した。
「いやいや、俺を中心に展開されてんだぞ。どうあがいても俺が効果を受けちまうだろ」
(オワターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!)
「ブッハハハハハ!どうやって魔術なしで我と戦うんだ!」
「いやいや何言ってはんの。これがあるでしょうが」
爆弾発言に鳴は心のそこで諦めの絶望の咆哮をしたのに対して魔族の方は腹の底から盛大に笑い転げた。
到真の方も一切諦めも動揺もなく朗らかな様子で腕、いや拳を構える。
「ハハッ.......?拳かそれは?」
「うん拳」
その瞬間間合いを詰めた到真の右ストレートが魔族の顔に綺麗にめり込んだ。