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第2話  最強の高校生スタート②

 先ほどの少年、天理到真あまのりとうまの人生のターデニングポイントを挙げるならば9歳の時だろう。


 小学3年生の時、校外学習で移動中のバスに乗っている時だった。特に問題もなく目的地に向かっている時に()()は起きた。


 そう。異世界召喚である。

 通常ならば異世界召喚と来たならば勇者となって世界を救ったり、追放されて成り上がるといったテンプレを期待するだろう。


 だが彼の場合は違った。

 クラスメイトごとまとめて召喚されたのだが彼らを召喚したのは魔族側の方だった。さらに最悪なことに呼び出した方の魔族たちはピンチに瀕しているとかそういうのではなく、実験体モルモット補充や『まあ、良いのが出ればいいか』というガチャのような感覚で召喚したということだ。


 本人の意思にも関わらず暗殺技術を教え込まされて、挙句の果てに魔術師や戦士として適正がないと見なされれば実験体モルモットとして使われ、死んでいたクラスメイトたちも多くいた。

 到真もその一人であり死にはしなかったものの人外の体にされてしまい9歳の少年にはあまりにも苦痛で筆舌に尽くしがたい経験であり、彼の人生においてつらい体験の一つとなった。


 実験体となっていたある日の隙をついて何とか脱走した到真だったが、既に人外、それもエルフや獣人といった種族とは違う、言葉にすると人型の合成生物キメラとなってしまっていた到真が暮らしていけるような所は人里といったようにはなく、山奥で余命いくばくかわからない生活を送っていたところを当時のとある連合軍の一員に延命と引き換えに連合軍への勧誘を受け、連合軍の兵士の一員として壮絶な戦線で戦っていた。


 そうした戦いの異世界生活も2年前までの話。魔王が討伐されてエルドシアも戦争の傷跡が残りつつも平和に向けて各地で復興が進められている時だった。


『ゼルドース帝国魔術師団総帥アリアス=ゼルドースの名においてトーマ=アマノリの除団を命じます』


 そう告げるのはエルドシア屈指の強大国家であるゼルドース帝国の皇帝であるギガル=ゼルドースの娘にして帝国の軍事力でもある帝国魔術師団現総帥アリアス=ゼルドースであった。

 王族が着るような華やかな服装ではなく黒を基調とし、所々に金具や見えはしないものの『ルーン』と呼ばれる付呪魔術エンチャントに使われる魔術加工が仕込まれ、実践的な機能が込められた軍服を思わせるような外套コートを身にまとい、靴も動きやすさを最優先にしたデザインであり、端正に整った顔、その肌は不純を許さぬごとく艶があり、紅蓮の炎ごとき真っ赤でストレートな長髪、いくつもの戦線を経験したと確信するほどの覇気を持ち合わせており、指揮官としても謙遜ない女性。しかも皇帝であったギガル=ゼルドースは魔王との決戦の時に指揮を執りその際に魔族によって負わされた傷が原因で少し前に亡くなっていることから次期皇帝の座も確約しているなど、まさに完璧を体現した女性であった。


 そんなアリアスに対して到真は”ワフク”と呼ばれる東洋の軽装に身を包み、腰には”カタナ”と呼ばれる使い方に癖があるが使いこなせば強力な東洋の剣を腰に下げ、告げられた内容を真摯に聞いていた。


帝国魔術師団はゼルドース帝国の中でも相当のキャリアであり、ましてや魔王を討伐した到真はさらなる褒賞があってもおかしくないはず。

それなのに解雇宣告に等しい命令が下されたが、到真の方は「まあ、そうだよね」と言わんばかりの納得した顔で聞いていた。


『.....自分で言っておいてアレですがもう少しリアクションがあっていいのでは..?』


通常ならば冷静なアリアスでだが今回ばかりはあまりにも解雇された本人が納得しすぎてツッコミを入れてしまうくらいには意外さを隠せなかった。


『いやだって自覚あるし』

『..私でももう少し反応をみせますよ?』

『そうか?』

『...戦争とは残酷ですね...』


帝国の首都メルバルの中央にそびえ立つ荘厳な城での一室の話だがその会話の雰囲気は城に合わないくらい気軽な雰囲気を持ってた。


『魔族は殺すとは言え女子供まで虐殺したようなものだし、それに与した人間や一部の獣人などの多種族も草の根一本残さない勢いで殺してきたし』

『..貴方はたった14歳で魔王を討伐、それだけでなく幾つもの戦線での活躍は数えきれないほどの同胞の命を救ったのですよ』

『どちらかというとその頃は魔族に対する怨念で動いていたようなものだったよ』

『否定はできませんね...』


長年の戦争が終わり、これまでの戦争の悲惨さを知っているアリアスは到真の発言に対して否定しようにもどこか共感を覚えざる負えなかった。

『加えて』、と到真は前置きをして


『平和になった世界には俺のような切れすぎる刃はいらないだろ。いくら俺の活躍があったからって、そうたやすく俺のやった所業が連合軍の仲間たちの記憶から消えるわけがない』


どこか哀愁を漂わせる到真の発言にアリアスは再び共感を感じざる負えなかった。


魔族との戦争の中で生まれた様々な非人道的な魔導技術、兵器、戦争終盤では捕虜となった魔族での人体実験の数々など、戦争による負の遺産が生まれるのをアリアスはその目で見てきた。ましてや実験体となった魔族の大半は到真の手によって送られてきたものでもあるということも。

そうしたことから連合軍では彼を恐れるあまり、中には排除せんとする者もいることを到真も察していた。


到真も憎まれたりすることは承知の上で、魔族への憎しみも相まってその行為は止まることはなかった。

そうした経緯も相まって今回の命令には至極当然として受け入れていた。


『...貴方には本当に重い物を背負わせてしまいましたね...』


自分たちの世界の都合で無関係の子供に血塗られた経験をさせてしまった。言葉にせずもそう受け止めているアリアスを到真はただ察するに留めていた。


『今回の命令には私のできる限り貴方の要望に応えるとします。除団することになるのは変えられませんが何か要望等はありますか?』


少しでもこの子の未来を希望あるものにする。それが私たちにできる償いだ。そうした決心の下に到真に尋ねるアリアスに到真は少し考えた後いくつかの質問をした。


あと2話分投稿します。

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