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第26話  龍夜叉①

 夜の杉並区の大きな和風豪邸である雷崎邸はかつてないほどの厳かな空気であった。

 周りには様々な色の高級車が並んでおりそこから降りてきた人は政治家や大きな影響力を持っているものばかりである。


 そんな様子を眺めている雷崎の男術師は隣にいたもう一人の術師にポツリと呟いた。


「なあ、今までこんなことあったか?」

「ないな。聞いた話によると今日は一族の中でも最大の特別な日なんだと。上層部は結構浮かれていたぞ」

「関係ありそうなのは選定戦かね。鳴ちゃん結構頑張っていたのに結局最下位だったなぁ。」

「無理もないだろ。ほか三人が手を組んだのにくわえてあの後のあやかしの出現位置も彼女にとっては最悪だったからな」

「それなんだけど”姫”についての知っているか?」


 雷崎にとって”姫”とは人柱的なものに等しい。


 雷崎家は”五大家”と呼ばれる陰陽師たちの大きな一族ができた始まりの頃からその一角を担っており五行にはない”雷”を得意としてきた雷崎家は他の五大家相手にも引けを取らなかった。


 だが時代の流れと共にその力に驕ってきた雷崎家はその不遜な姿勢から周りからは反感を買い次第に衰退していくこととなった。


 そして幕末に遂には後に清羅と呼ばれる陰陽師一族にとって代わられて明治維新の遷都に伴って拠点を移した阿部家の傘下に収まること存続してきた。

 そうした経緯から中には成り上がろうとするものが多い。


 ”姫”とはそうした中で近年、雷崎家の安泰と栄光への復帰を祈願してその身を捧げられた女の術師である。


 人柱的な扱いとなっているのはいなくなっても問題ないような()()の術師が選ばれるのと選ばれた者は二度と戻って来なかったからそうなっており今回は鳴が選ばれている。


「噂ってあれだろ、『姫はとある儀式のいけにえとなっている』ってやつだろ。あまり詮索するんじゃないぞ。探ってしまいその翌日に行方不明になった奴がいるんだからな..................................おい、どうした?」


 あまり深入りしないように釘を刺した男術師だったが隣りの様子がおかしいと思い振り返る。

 隣りの術師は右にあった池の方を眺めていた。


「いや、なんか誰かいた気がして」

「気のせいだろ、ここいら一帯には結界が張ってあるし中には”雷豪”が警備しているんだぞ」

「その”雷豪”だがククリさん夕方外出してから見てないよな。ほかの雷豪の面々も見てないらしいぞ」

「職質でもあっているんじゃないのか。明らかに不審者じみているし」

「そうかもなぁ............................................................................て、どこに行ったんだ?さっきまでとなrーーーーーーーーーーー


 ---------------------------------


「お、鳴ちゃん似合っているね」


 そう言い磁々は大広間から離れた一室に入ってきた。

 中には鳴がいたがいつもの金髪ツインテールではなく白を基調として花柄が刺繡さてている和装の花嫁衣装だった。


 服の生地は乱れを許さないのか一切色褪せもなく伝統的な儀礼服で過去にも使われいるにも拘わらず新品同然であった。


「何の用です磁々様?冷やかしは既に他の人からので聞き飽きているのですが」

「心からの感想なんだけど............」


 素っ気ない鳴の対応に磁々は精神的なジャブを喰らいつつもその姿をジッと見つめていた。


 何度も見てもその姿は誰もが迎えたくなるほど似合っておりこれほどの美人を嫁に出来る者は相当な人物であろう。


「最後の機会だからこうして会いに来たんだけどやっぱそうなるよね。その様子だと由香里に言われまくったようだね」


 実際に磁々が部屋へとはいる十分前までは由香里が散々鳴に対してマウントをとりまくった。

 鳴自身はどうでもいいので無視し続けていたのだがいびりは長く続きしまいには着付けを担当する者からつまみ出されるまで続いていたのである。


「もうあの人とは関係ないですから。」

「だよねー。蕾ちゃんが次期当主になったから由香里がこのままいられるとは思えないけど」


 どこか投げやりになっている鳴を何とも思わずに磁々が部屋で適当にダラダラしていると一人の黒装束、さながら忍者と思える服装のの術師が音を立てずに入ってきた。


「失礼します。磁々《じじ》様、たけし様がお呼びに、それとそちらのお嬢さんにも聞きたいのですがククリ様は何処に」

「見てません」

「見てないよ、どうせどっかで通報されているんでしょ。じゃあ鳴ちゃんバイバイ」


 そうして磁々は部屋を出ると鳴が一人残されていた。

 だが実際には鳴にとって最悪でもありチャンスでもあった。


(姫となってしまったのはしょうがないのだけれどもこのまましばらくすれば雷崎家の中でも限られた者しか立ち入れないところに踏み込める。)


 誰にも悟られないようにしつつ待機して約十分したぐらいだった。

 使いの者がきたのでその案内の下に鳴は雷崎家の魔境と踏み込んだのだった。











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