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第20話  到真、陰陽師を鍛えるってよ⑥

 早速散った四人の術師のうちの一人である鳴は霊力を体に纏い索敵をしていた。


(到真君のアドバイスを参考にするなら下手に探索の術を使うよりもこうして霊力を纏えば温存できる上に霊力の微細な変化から妖の出現場所がわかるはず)


 到真によれば周りの霊力が()()()()()()()ために微細な霊力の変化もより伝わりやすいらしい。

 霊力を纏って探索していた鳴だったがしばらくして突然東の方向に気配が動いたを感じた。


「そこね!」


 自身の霊力が掴んだ気配を信じて向かった先は小さな公園だった。だが鳴が到着と直後として虚空から三匹の妖が現れたが素早く札を取り出し詠唱へとつなぐ。


「【雷精変成槍、急急如律令】!」


 生み出された雷の槍がそれぞれ三匹の妖を貫き再び虚空へと帰す。

 そうして次の妖を探そうとした時だった。


「あら、珍しいですね。貴女が私より先に討伐するとは」


 不意に話しかけてきたのは眼鏡をかけたOLを思われる巫女服の術師だった。

 彼女の名は雷崎蕾(らいざきつぼみ)、今までの討伐数とその強さは一位であり次期当主として有力候補である。


 彼女は鳴に対して由香里のように当てつけはしない。彼女の努力を知っており術師として成長しようと努力する者に対しては礼儀を欠かさないがそうでないものには礼儀なんぞないも同然な態度を取る。


今回のも自分より先に鳴が倒していたことに対する純粋な感想だ。


「これは蕾姉さま、こんなところで会うとは」

「偶々ですよ。貶すつもりはありませんがこれで味を占めないように。私も次期当主の座を狙っているので」


 そう告げると彼女は次の妖を探しに消えた。

 そうだ、これは誰もが本気で狙っているんだ。

 そうして自分の気を引き締めた鳴は再び霊力を纏って妖を探った。道中由香里の獲物を横取りして由香里がわめいていたが無視して少しでも確実に獲れる物をとっていく。

 そうしているうちに終了の時刻になり鳴はスタート地点へと戻っていった。


 ーーーーーーーーーー


 スタート地点にはさっきの当主たちと他の競争相手も戻っていった。

 由香里がさっきから鳴を睨んではいるが無視を決め込んで発表へと待っていた。

 今回に関しては過去ダントツに倒した数は多いので少しは結果あるかな、そう願いつつその時間は来た。


「それでは今回の結果を発表する」


 いざ告げられるとなるとやはり緊張は隠せにくくなる。

 そうして告げられた点は驚愕のものだった。




「一位、雷崎鳴 57点

 二位、雷崎蕾 35点

 三位、雷崎暦 32点

 四位、雷崎由香里 16点」


 今まで最下位だった鳴が一位の蕾に大差付けての圧勝に周りの術師も、果てには本人たちも驚愕していた。


「どういうこと!?なんであの落ちこぼれが一位なの!?」


 最下位の由香里が結果を受け入れられずに不正だ、ズルだと喚くが才能に驕りろくに鍛錬してきていないのを周りは知っているので相手にする者はいない。それでもギャンギャン喚いていた。


「五月蠅いぞ由香里、結果にこれ以上文句言うのならば失格とするぞ」


 当主の厳しいおしかりにさすがの由香里も黙る。

 そんな由香里に内心でザマミロなんて思っていた鳴だが後で一人部屋に来るように呼び出された。

 こうして一同は解散して鳴は当主であり、祖父でもある茂雄の部屋の前へときた。


「失礼します」

「入れ」


 かしこまった会話の後に鳴は蠟燭一本だけの明かりの部屋へと入り祖父と向かい合う。その雰囲気は仲のいいとは言えずむしろ冷え切っている方が正しかった。


「先の結果に意見するつもりもないがここまでの飛躍は普通じゃない。何をした?」

「少し自分の得意分野について見直したまでです」


 鳴としてもペラペラと真相を話すつもりもないし実際に自分の適正について見直したのだから問題はない。


「そうか、ならば以上だ。戻れ」

「では失礼いたしました」


 意図を察した茂雄は話はないとして鳴を退出させた。

 そして廊下を歩く鳴は誰にも聞こえない声で呟いた。


「くそジジイ」





 ---------------------------------


 茂雄以外いなくなった自室で茂雄は一人佇む。

 しばらくして後ろを振り返り闇に向かって頭を下げる。

 すると闇の中から声が響いたのだった。


『今回の選定見させてもらったぞ。実によいものだったな』

「ありがたき幸せ」


 闇にへりくだるその姿は先の当主としては考えられないものだった。

 しかし闇からの声は続く。


『中でもとりわけよかったあの金髪ツインテールの娘、名は確か.......』

「鳴でございますかな?」

『そう、その小娘だ。そいつを今回の”姫”としろ」

「確かに今回は良かったですがあんな落ちこぼれなどを........」

『そいつを使えば計画は直ぐに実行へ移れるやもしれん』

「!!!、ではその通りに........。」

『それと例の札幌の猫が届いていないのだが?』

「申し訳ございません。馬鹿がしくじりまして逃走いたしました。深手を負わせているので時間はお掛け致しません」

『なら急げ。...........あ、それともう一つ急ぎの事ができた』


 急ぎの事に疑問を抱く茂雄だったが闇は答える。


『鳴とやらの成長を手助けした奴がいる。そいつは始末しろ、手段は選ぶな』

「御命のままに」


 そうして闇からの返答は止まり茂雄はしばらくしてその顔に笑みを浮かべた。


「計画が成功すれば雷崎は頂点に返り咲く。今まで儂をこき使ってきた安倍の連中や五大家ですら敵ではない。そして儂が頂点へと............フヒィ」


 自分の時代が来る姿を浮かべて笑みを浮かべると部屋にあった蠟燭の火を消した。


 果たしてその火は自分たちか、他の陰陽師たちを示すのかは最期まで知る由もなかった。

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