第19話 到真、陰陽師を鍛えるってよ⑤
そうして鳴を鍛え始めて2日が過ぎた
初めの方は苦戦気味だったが到真が言った通り才能の塊なのか基礎である体魔力操作はあっさり慣れていた。
あくまで訓練におけるレベルであり実践レベルには程遠いとしても短期間での習得速度に若干羨ましくなる到真だった。
「ソコッ!」
「甘い」
「ブギャ!?」
到真のスタンスは実践しまくってそこから基礎を修正するタイプなのでひたすら体術の鍛錬が中心となっていた。
鳴も鍛えている方なのだがこの二日間で未だに到真から一本も取れてない。
あと若干反撃の時に到真が意地悪な反撃をしている気がしなくもない。
そんな実践訓練を終えた時だった。
「そういえば次期当主の選定は一定期間内の一定時間内に狩った妖怪の数で決まるというがそれはいつ頃なんだ?」
「週末の日曜の夜ね。10時から深夜2時の四時間で決まる感じかしら。」
「あと何回チャンスはあるんだ?」
「明日入れて3回」
つまりはあと二週間少しで他の候補よりも稼がなければいけないわけだ。
鳴の成長速度は早いが残り二週間少しで実践へと移れるかは少し危うい感じだった。
「ならば残りまでは下手に手数を増やすよりも魔力操作を磨き上げるほうがいいな。手数増やしても使いこなせなければ意味が無い。それと明日のは一位の奴に追いつこうとするな」
「どゆこと?」
「下手に二兎追うよりも確実に点差を縮めていけ、そういうことだよ」
何も三回すべてでトップになる必要はない。
最終的にトップになればいいのだ。ならば今は少しでもその可能性を高めるべきだろう。
「魔力の操作性を高めればより術の発動効率が良くなるうえに一部分に集中させれば強化系の術をわざわざ発動する必要もなく強化ができる。脚力に絞って誰よりも先にターゲットの妖について倒してしまえばいいからな。」
「なるほど」
「相手側のより細かい戦力が分かればいいが今はその時間がない。とにかく魔力量とその操作性を高めるぞ。」
こうして時間は過ぎていくのだった。
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日曜の夜
杉並区の中野区との境周辺にある日本豪邸の大きな庭には巫女服を着た四人の女子を中心に周りに狩衣に身を包んだ男の集団があった。
明らかに不審に思える光景だが誰も不審者に襲われるという気配はない。むしろ誰かを待っている様子であり、四人の一人には鳴の姿もあった。
「あら鳴貴方まだ挑むつもりなの?健気ね~」
明らかに小馬鹿にしている口調で鳴に話しかけたのは20代後半、ブランド品のピアスなどを身につけている従兄弟の雷崎由佳理だった。
プライドが高いが選定では鳴がいなければ最下位であったために鳴をターゲットにいちゃもんつけていたのだった。
「別に好きに言えばいいですよ。寧ろ私が居なかったら最下位になりますがなにか?」
「誰に口きいてんだ小娘!」
図星な指摘をされて荒れ狂う由香里、鳴の方も一歩も引かないので両者とも一触即発の状態へと移行する。
だがその状態もある手を叩いた音が殺したのだった。
「別に喧嘩するのは構わないんだけどさ、そういうのは終わった後にしなよ。ここでやりあわれても餓鬼の戯れに僕を巻き込まないでよ」
気怠そうな声とともに現れた少年は二人を視線だけで沈めた。
彼は雷崎家の中でも最強の五人の術師集団”雷豪”の一角でもある名を雷崎磁々という。
「精々今日も落ちこぼれを痛感することね............」
磁々に注意されて捨て台詞を吐く由香里。そんな彼女に一瞥もせずに磁々は鳴の方に向くと
「鳴ちゃん前より遥かに成長してない?」
「そうですか?」
「僕にはそう見えるな~」
磁々は態度といったものはよくないが実力はある。
そんな彼が落ちこぼれとされていた鳴に興味を示したのに周りの術師はどよめいた。
だがそのどよめきもまたとある老人の登場で静まった。
老骨ながら威圧感のある爺、目は窪んでいるかと思うほどに周りが暗くてこれまた普通の老人とは思えない。だがこの老人こそ鳴の祖父にして雷崎当主である雷崎茂雄であった。
「皆の者、傾聴せよ」
短い言葉だったが周りの術師たちは一切私語もなく爺へと向いた。
「今宵もまた選定戦を行う。規則は今までと同じ22時から深夜2時までにどれだけ、かつどれほどの妖を倒したかで決める。妨害などは各々の判断だが外部からの支援を受け取ったり一般人を襲うなどのこちらが問題ありとした場合は即刻そのものは選定戦から退場とする。質問はないな。では、現時刻を持って開始とする。」
その言葉と共にに中心にいた四人の術師は散開したのだった。
カクヨムでは話が進んでいるのでそちらからでもぜひ




