第18話 到真、陰陽師を鍛えるってよ④
すっかり夕方から夜に染まっており学生が出歩くには遅い時間へとなっていた。今までの攻防はすっかりお互いの時間を忘れてしまっていたようだ。
また翌日に同じ場所で集合の約束をした後到真は自宅へと戻った。
「ただいまー」
「お、戻ったか。随分長い寄り道だったな。」
「まあな」
出迎えた黒猫に夜ご飯の準備をしつつ、到真は今日の出来事を軽く黒猫と話していた。最も鳴を鍛えていることは内密にしてる。
だが話を聞いていた黒猫が一瞬警戒気味になったのを到真は見逃さなかった。
「陰陽師か...........」
「やっぱ敵対している感じか?」
「いや、儂のような妖は陰陽師側にはひとまず味方として見られているが、基本的に陰陽師は妖を敵として見ているのが多い。実際に妖側も人間相手に襲ったりしているからそのスタンスは否定はせん。じゃが余計なトラブルを避けるためにも儂とおぬしの関係は秘密にしておいたほうがいいじゃろ。」
いつの時代も共存はシビアなものだ。そう改めて実感していた到真は夕食や明日の支度といったものを済ませると自分の部屋へと戻ろうとしたときふと話を吹っ掛けたのだった。
「そういえばケガの具合はどうだ?」
「ん?ああ、ケガは今ではすっかり治っている。しばらくすれば全快するじゃろ」
黒猫のケガの具合を確認して「そうか」、と相槌を打った後自分の部屋へと戻った。
至って普通の男子高校生の部屋だがアイテムボックスから二つの試験管を取り出した。
片方の方は黒猫の治療の際に使ったものでキズにあった呪いが収められていがもう一方の方には虫と思しき生物が試験管の中にいた。
「魔刻蟲がこの世界にいたとはな....」
魔刻蟲、それはエルドシアにおける魔術的生物、通称”魔物”の一種だ。母体を中心として眷属たる蟲とテレパシーのようなものでつながっており母体の指示の下に活動する昆虫である。
その性質から様々なところで運用されていたりもしている。
そんな生物が 現実世界にいることも十分問題なのだが、この生命体が実は鳴の体に秘密裏に埋め込まれていたこと。
鳴の魔力回路を構築した際に摘出した魔刻蟲を支配している魔術を解析したら魔族が得意とする支配の魔術であることが到真にとって重大であった。
「黒猫のキズにつけられていた呪いも魔族たちが得意とする闇系統の魔術だった。加えて魔族が支配している魔刻蟲、これを無関係と断言するのは明らかに無理があるな。」
真相は不明だが滅ぼしたはずの魔族が暗躍しているという事実。到真が修羅に堕ちてまで殺してきた魔族が今も生きていることに誰にも感じさせないようにしつつ到真の中には憎悪といった感情が渦巻くがそれを抑え自分を律する。
明らかに雷崎家はこの件について大きく関わっている。調べてみるのも一つの手として到真は呪文を唱える。
【我が眷属よ・今ここに現れよ・そして我が命を携え】
詠唱からしばらくして到真の影がぶれると自身の影に雷崎家について気づかれないように探るよう命じたのだった。




