前編
ええ、お嬢様と・・・竜様のお世話をすることになりました。
お嬢様の境遇は知っておりましたよ。
お父様とお母様を亡くされて、お嬢様から見れば叔父夫婦、今の旦那様ですねに引き取られたンですよ
で、いまの今まで貴族令嬢として育てられたンですよ。
不幸な境遇・・・って言われても、ちゃんと食事も3食とお茶もいつでも食べられて、綺麗で清潔な服やドレスも着られて、淑女教育も受けられて学校にも行かせてもらえて居るンだったら、私みたいな平民から見たら幸福だと思うンですけどねえ。
独りぼっちだったと、確かに奥様お嬢様からみたら叔母様ですねは、あんまりお嬢様に構っては無かったですね。御坊ちゃまが病弱でその看病で忙しいので、お嬢様のお世話は、メイド達に任せっぱなしでしたね。血が繋がって居ない子供に対しては妥当だと思います。
婚約話が持ち上がって、あちらの家から家庭教師が派遣されて来て、その先生が厳しい方だったンですよ。ちょっと躓いただけでビシバシ言うお嬢様は萎縮していたみたいですよ。
その婚約者がキツイ方で、若い子が言うには俺様系って言うンですか?毎回お嬢様に怒って居るンです。挨拶とか、学業の成績とか、読んでいる本とか、お茶会とか、ドレスとかこう細かい所に。
その度に謝っておりました。元々引っ込み思案なお嬢様が何も言わなくなりましたね。
お嬢様がピクニックで行かれた森の中で迷ったときどうも婚約者の方が原因みたいなんですよ。乗馬があまり得意で無いお嬢様を置き去りにしてしまったみたいですね。
お嬢様の馬だけ帰ってきたとき、婚約者の方は馬を切り殺したそうです。急いで捜索隊出したみたいなんですがその時にはもうお嬢様は竜の番になって居たンですよ。
ご存知でしょうけど、この国は竜が創造したとあり、この国の貴族達は竜の血を引いて居ると伝えられています。この国では竜は崇めるものですけど、他国では倒すものだそうですけど考えられませんね。
でお嬢様と竜様の出会いは、お嬢様が落馬して柔らかい草地だったから怪我は無かった様なんですが、暗いし、道は分からないし、背中は痛いしで心細かったンだそうです。でそこで竜様に会ったンですが、怖くて何も言えなかったそうなんです。で、竜様に巣に連れて帰られて食べる気はなく、日が明けたら人がいる所まで送るとか言われたそうなんですが・・・・・
そこでお嬢様が竜様が探して居た番だと分かり即座に契って正式な番になったそうなんです。
話が急だと思うでしょう、でも番ってのは竜にとっては重要な存在でなんでも存在をなすのに必要なんだそうです。
要は子作りですよ子作り、竜は数が少ないから他種族と子作りが出来るそうなんですって、民話とかで竜の間に子供が生まれたとか本当のことみたいですよ。
で、お嬢様、婚約者が居るのに「そんな事」をしてしまった。しかも結婚前、この国では神と崇められる竜とはいえ流石にどうかと思ったンでしょうね。
竜様と一緒になることを認めてもらおうと思って帰ってきたそうなンです。
初めは「お嬢様騙されて居るんじゃないか?」と思いました。だって心細いところを優しくされて、捧げちゃったなんてよくある話じゃ無いですか?子供できて居なきゃ問題ないでしょ?
なんで竜だと信じたってですか?そりゃお嬢様が戻られた時竜に乗って帰られたからですよ。
初めは飛龍(正式には竜では無いそうですが、我が国では伝令用に使われております。)だと思っていたんですよ。でそいつが人の姿になったときビックリしました。
でお嬢様が「この方と結婚します!」とおしゃったンですよ。
旦那様と奥様は驚愕しておりましたよ。
で一番に正気を取り戻したのは奥様で、「客としてもてなす様に」と言い残して去って行きました。婚約者の方の家に連絡でしょうね。
竜様ですか、大の男が二人がかりで無いと運べない様な家具を片手で持ち上げたり、強い酒を水の様に飲んだりと随分かけ離れて居るんです。
そう言えば、お嬢様以外に喋って居るの見た事ないな。
それからお嬢様と竜・・・様のお世話をする様になったのですが、二人とも新婚でもここまで一緒には居ないだろうと言うくらいべったりなンですよ
寝る時は一つのベットで眠り、食べる時はお互いに食べさせ合う、お風呂だって一緒に入るンですよ。
移動する時は手を繋ぎ、時には竜様がお嬢様を抱き上げてと、別々なのはお手洗いに行く時くらいですねその時はドアの前で待って居ました。猫みたいだなあと思いましたよ。
肝心のお世話なんですが他人がお嬢様に触れるのを竜様が異常に嫌がるんです。メイドでも着替えを手伝うときでも睨みつける。うっかり手を触れしまっただけで唸る。これが男だったら視界に入るだけでも目線で殺されそうになるくらい。
まあ、お嬢様が止めれば直ぐにやめるんですけどね。
だから部屋の掃除とかは、お二人がいない間に素早く行いましたね。あとはお食事は食堂に作ったものを置いておくだけにしておくとか簡単に温めたり出来る様にしておくとか。とにかく竜様と接触しない様視界に入らない様にして居ました。
お嬢様もそれまでの大人しく引っ込み思案なのが嘘みたいに竜様と一緒にいるのが当たり前かの様に振る舞うんですよ。
小さい子供みたいに抱っこをせがんだり、一緒に本を読んだり時には歌を歌ったりして、顔を合わせる度にキスして居ましたね。
離れて居るところを見たことないくらい
以前は私どもにも丁寧に接してくれて居たお嬢様は「彼と食べたいから朝ごはんはサンドイッチにして」とか「彼と散歩したいからお庭に誰も入らない様にして」とか「彼と一緒に入りたいからお風呂を用意しておいて」とかそれはもう堂々とお命じになるンですよ。
お二人が使った後の寝室とか浴室の掃除をする度にお嬢様が受けてきた淑女教育はどうしたンだと思うくらいでした。
旦那様も奥様もこれにはお手上げでしたね。帰って来てから一応お医者様には見せた様なンですが、前より健康だそうですよ。
こうして竜様とお嬢様は甘い時間私どもには不安な時間を過ごして居ました。
そんな時に婚約者の方が乗り込んで来たンですよ。