二人の関係
土曜日の夜、一昨日台湾旅行から帰って来たミホ先生。
どうしてもお土産が渡したいと言うので会うことに。
「台湾旅行か…… 行きたかったな…… 」
お土産をもらい土産話までされたら憧れと言うか後悔がと言うか。
本当に一緒に行けなかったのが悔やまれる。
「青井先生。ホラ落ち込まないで。そのお菓子美味しいですよ」
真夏の熱々ビーフシチューで限界だと言うのに直前まで食べていた甘いお菓子。
初めて食べる分にはいいがもう限界だ。しかも感動して見せないといけない。
「どうです? この食感? 」
「はあ…… 確かに。美味いな。ははは…… 」
さっき食ったわ! そしてもう飽きたわ!
「もう元気を出して。ほらこのタピオカドリンクをどうぞ」
なぜかもうすでにストローが刺さっている。
「うん…… 爽快って? うわ…… 甘い」
「どうです? 駅前のタピオカドリンクのお味は? 」
そう言って勧めるミホ先生。
「まさかミホ先生は先に飲まれた? 」
「はい。少しだけ」
恥ずかしそうに照れながら袋をガサガサ。
「ははは…… 少しだけですか? これは参ったな」
一気に熱々ビーフシチューで心も体も燃えてきた。
そうか…… ミホ先生も意外にも大胆だな。これなら今夜は期待していいのかな?
「はい飲みかけですが」
半分ほどになったドリンクを見せてくれた。
何だもう一本買ってたのね。期待して損したな。
「ではそちらをください。これでは多すぎて飲み切れない」
「もうしょうがないですね」
何と思ったよりもあっさり交換に応じる。正攻法が効くらしい。
「いや…… 済みませんワガママ言って」
「ふふふ…… いいですよ。子供みたい」
どうやらミホ先生は俺を恋愛対象と見てない様子。
いや違うか。筋金入りのお嬢様(予想)だから俺みたいなのが珍しいのか。
だったらもう少し甘えてみようかな。
「ミホ先生はいいですよ。俺なんか異世界探しに連れて行かれるんだ!
そしてもう二度と帰って来れないんだ! ミホ先生もだけど」
少々駄々をこねる。
ミホ先生は優しいから抱きしめてくれるに違いない。ほら早く。
「そんなこと言わず青井先生も楽しめばいいんですよ。面白そうじゃないですか」
天真爛漫なミホ先生。異世界を楽しめと?
そうは言うが異世界は現実には存在しないんだぜ? あればまだやる気も出るが。
誰がやる気が出るってんだよ? まったくふざけやがって!
おっと…… まずいまずい。本音が出かかった。失望されてしまう。
たぶん俺のことはまだ生徒想いの教師ぐらいにしか思ってないはず。
だが実際は金曜日を待つ哀れな男。
ミホ先生か…… 実際俺をどう思ってるんだろう?
出会ったあの頃とは違う。当時の格好いい英語教師ではない。
ミホ先生。この呼び方もどうも他人行儀でいけない。
学校外では先生はとってもいいのでは? でも俺から提案するのもどうかな?
「ミホ…… 」
ダメだ。恥ずかしくて堪らない。もういい大人なのにな。
もっと関係を深めれば自然とそうなっていくだろう。
でもせめてミホ先生はやめたいんだよな。
そうだ。二人の時はお互い呼び方を決めるのもいい。
待てよ…… これは俺の妄想だよな?
危ない危ない。勝手に彼女だと思ってるが相手は同僚ぐらいにしか……
いや…… たとえ同僚でもいい。どう思われてようと構わないさ。
彼女とこの空間を共にできる喜びを噛みしめている。
「青井先生何か? 」
「いえ…… もう遅いですし今夜は泊まって行かれてはどうですか? 」
さりげなくさも当然の選択のように思わせる。
「そう言う訳には…… 」
恥ずかしそうに顔を赤らめる。
いや俺以外の男にそんな隙を見せたら危険だ。俺は紳士だから問題ない。
ちょっとジョークを言うだけ。
「申し訳ありませんが今夜は…… 」
丁重に断られて良いんだか悪いんだか。
「ほら防音になってますんで安全ですよ」
「青井先生! ふざけないで! 」
うわ怒らせてしまった。当然か? ジョークが通じなかったんだな。
「しかし明日は日曜日ですし何と言ってもデートですから……
ほらミホ先生にも手伝ってもらいたいことがありますし」
さあもうひと押しだ。ミホ先生も強く迫れば落ちないはずがない。
「もう青井先生怒りますよ! 」
おっと機嫌を悪くされては困る。ここは慎重に。いや逆に畳みかけるか。
「分かった。着替えですね? そんなものは近くのコンビニで済ませてしまって。
そうだ。何なら女性用の着替えもありますしほら歯ブラシだって。
今から帰るには遅い。暗いし寂しいでしょう? 」
ミホ先生の視線が刺さる。
うん俺何か変なこと言ったっけ?
続く
<Relationship>
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