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真夏のビーフシチュー

一万円でアークニンから売りつけられた紙の束。

異世界探索部の為にも合宿までに調べられるだけ調べておきたい。

そう思うのは余裕のある最初だけ。すぐにやる気を失う。


ふう疲れるな。何で俺がこんなことを? やってられるかよ。

俺は考古学者でもなければ異世界研究者でもない。ただの英語教師だ。

つい愚痴がこぼれる。

面倒だが一枚一枚丁寧に調べる必要があるのだろうな。


「青井先生早く! 」

今日は別に金曜日ではない。土曜日である。

だから本来だったらお客様など来ない。侘しい食事をしていたことだろう。

しかし今夜は特別。用があるとミホ先生の方から。


昨夜のお楽しみの痕が残ってないか一応は確認した。

だから戦利品やお宝が出てくるようなことはない。

あるとすれば女性用の歯ブラシとか雑誌とかその程度。

どうにか誤魔化せるもの。

絶対にばれる訳にはいかない。

俺の楽しみを奪われてなるものか。


当然あいつらだってそうだろ?

いや逆に困らせようと面白がって仕掛けてるかもしれないが。

本当に困った。大人を試すような真似をするんだから。

そこが憎めないところでもある。


「青井先生! 」

ミホ先生が訪れるのは今回が初めてのこと。だが緊張してる様子はない。

逆に俺が落ちつかずに怪しまれる始末。

初めての訪問とは思えない落ち着きよう。毎週来てる奴らもいるにはいるが。

その二人と比べても落ち着いてる。

まさか俺を信用してるのか? ははは…… それは甘いと言うもの。

チャンスがあれば逃しはしない。それが今の俺。

昔の俺のままだと思わないで欲しい。

「これは失礼しました」



ちなみになぜミホ先生がいるのか? そう言う関係だからとしか言えない。

お土産を渡す間柄とでも言えばいいのか。


紙束をまとめて慎重に紙袋に収める。

ごちゃごちゃしたテーブルの上を片付ける。

これで少しはすっきりしただろ?

最後にふきんを掛ける。

いつ洗ったかも覚えてないふきんを丁寧に細部まで。細かいところまで。

無駄だって分かっても変なところが神経質だから止められない。


「頂きます」

二人で夕食を共にする。

ビーフシチューが今夜のメインディッシュだ。

後はシンプルにサラダとヨーグルト。

ヘルシーな食材。頭が下がる思い。

「どうです研究は進んでますか? 」

嫌味を言いに来たのはない。心配してのこと。そう信じたい。

「まだこれっぽっちも進んでません。早くしないと合宿に間に合わないかも」

合宿ではこの紙束を使って調べることに。

思う存分楽しむ為にも一刻も早い解明が待たれる。

ただまだアークニンに騙されてるパターンもあるので慎重に判断。

アークニンと言えばあれから連絡が取れずにいる。どうしたんだろう?


「頑張ってください」

励ますミホ先生。つい優しさに甘える形になる。

それにしてもこのくそ暑い時期にも関わらずビーフシチューとはどう言うつもり?

いやまあいいか。俺の為にわざわざ振る舞う彼女には感謝しかない。

味覚音痴でもない限りこれはうまいはずだ。

いつも作ってくれる二人は変なものばかり。

おかしな料理を作るから任せておけない。


なぜミホ先生がここにいるかと言うと実は俺たち付き合っていたんだよね。

と言うのは冗談。

今週の前半に台湾旅行へ行って来たのでそのお土産を持って来てくれたところ。

実はまったく同じものを昨夜もらったばかり。しかも二セット。

どうやらお土産係がいてその者に全て任せたか三人の誰かが選んだのを真似たか。

お土産を買うのも旅行の楽しみ。

だがそれは自分用だったり大切な人用であって顧問ではこれが限界。

そうするとミホ先生も俺をその程度の存在としてしか見てないのか?


とにかくそのお土産がばれては関係が疑われる。

だからミホ先生が来る前に食べきろうとしたがかなりの量とカロリーでダウン。

諦めて隠すことにした。ただそうすると気になってしまい不審に映る。

「そこは汚れてるので近づかない方が…… 」

「もうだらしがないんですから! 」

そう言って片付けようとするのでかなり危険。

とにかくミホ先生の為にも気づかれないようにしなくては。


お土産のお返しにと明日デートに誘ってある。

これが果たしてお返しになるかは疑問だが気持ちを伝えるにはちょうど良い。


                続く

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