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先生だって犯すさ

早朝の出来事。

二人は挨拶もなく勝手に部屋から出て行く。

俺を起こさないように気遣ってるんだろうな。


いつもガチャンと言う音で目が覚める。

そして二人がいないことに気づきすぐに追いかけエントランスで捉える。

これが俺たちの土曜日のルーティン。

先生と生徒の鬼ごっこって奴だ。


土曜日の早朝と言うこともあり近所の目はさほど気にしなくていい。

いや気にしてるうちに二人が行っちまうのでそんな場合ではない。

そうして駅前までしつこく縋りつく。

さすがに駅まで行くとお巡りさんもおり目立ちもするから諦める。


「行くな! 戻って来い! カンバック! 」

願いを込めるが効いた試しがない。

「先生それじゃあね。また来週」

前を向き一切振り返ろうとしない。俺よりもよほど大人な二人。

「お願いだもう少し。何もしないからもう少しだけ! 」

素直に頼んでも決して首を縦に振らない。

だからって何かで釣ろうにも起きたばかりでは考えも浮かばなければものもない。

「先生も今日は忙しいんでしょう? 私たちも旅行の準備があるから。

構ってられない」

これまでか。粘った甲斐はなかった。

「またね先生」

二人は駅前に消えて行った。


これも毎週のことなのでさほど気にしてない。

上手くあしらわれてお終い。虚しい抵抗を見せるだけ。

ただ見せ続けることが大事。いつかは報われる時が来るだろう。

こうして我に返る。すると急に怖くなる。

この場面を生徒や保護者に目撃されたらと思うとぞっとする。

ただ時間帯が早朝なのでセーフ。今のところ学校関係者にばれることはない。

かなり目立つはずだがな。朝から熱心に指導してる真面目な先生だと思われてる?


さあ夏部の引率の前に腹に何か入れておこう。

「君。そこの君少しいいかな? 」

交番のお巡りさんが近づいて来た。

険しい表情と横柄なものの言い方から俺を不審人物だと睨んでるな?

俺を子供を食いものにする何かだと考えてるようだ。

まったく本当に失礼な奴だ。疑ってどうする? もちろん間違ってはいないが。

身分証を見せ先生だと納得してもらって初めて人間扱いを受ける。

何か勘違いされたらしい。本当に勘違いかは微妙ではあるが……

しかしだ。先生だからって犯罪者ではないとは限らない。


「もうよろしいですかお巡りさん? 急いでますんで」

「ああ悪かったね。おかしなのが幼気な少女に迫ってるって目撃があってさ」

「それは物騒だ。生徒たちにもさっそく注意喚起しますんで」

「ええぜひお願いしますね」

「分かりました。失礼します」

危ない危ない。ばれたらお終いだ。社会的立場を失うことに。

俺がいくら否定しても彼女たちが吐けば俺は終わる。


急いで立ち去り夏部の引率に向かう。

うわ…… もうこんな時間だ? 急がなくちゃ! 遅刻したらシャレにならない。

ダッシュで改札を通り抜ける。


「うーん」

「どうですか? 」

どうですかと問われても何一つ分からない。

ただの紙に見える。これは時間が掛かりそうだ。

いや待てよ。時間が掛かるとか言う問題ではなく迷宮入りするのでは?

アークニンから購入した明らかに怪しい紙の束。

異世界から戻って来た男が拘束される直前に妻に送ったもの。

仮にこれがアークニンの言う通りだとして俺にどうしろと?

解明出来るとでも言うのか? 

アークニンが俺に託した汚らわしい紙の束。

だがそれ以上の情報がなければ偶然に頼るしかない。


「うん…… うーん」

「早く! 」

「うんうん」

「まだですか? 」

もう集中してるのに急かすんだもんな。

適当に相槌を打ってるのがばれたか? 

悪いとは思うけど仕方ないんだ。

「冷めますよ」

「うーん。これは済みません」


テーブルには先日一万円で購入した紙の束。

何が書かれてるか未だに見当もつかない。

中身を調べるにしても法則や手がかりがない限り無為に時間が過ぎて行くだけ。

そもそもこれはその手のものか?

アークニンが適当に作った偽物の可能性も残っている。

慎重にとは思うがどうもやる気が起きない。

そもそも一枚一枚調べるのは面倒なのでパラパラめくってる。当然見つからない。

それも当然だよな。アークニン博士が分からないことが俺で分かるはずがない。

ふう疲れるな。

やはり一枚一枚丁寧に調べる必要があるのだろうか?


「青井先生早く! 」

別に今日は金曜日ではない。

土曜日である。


                  続く

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