助手
ついに謎の紙の束を購入。
アークニンに無価値なゴミを売りつけられる。
厳重に箱に入れられた紙の束。これで一万は安いか? 高いか?
それから博物館限定のお土産を何点か。
これで旅の思い出になっただろう。
閉館間際に急かされるとついつい不必要なものまで。
もうすぐ閉まると分かった途端に購買欲が出る不思議。
さすがは館長。商売上手。
「ようやく決断したか。よろしいとっておきの情報を教えてやろう」
サービスだそうだ。善行はするものだな。
「私が見つけた異世界の扉は偶然の産物だった。
要するに再現性がなく二度と見つからなかった。
海外だったからな。現地のガイドの後をついて行ったり政府の許可を得たりと。
だから地図と言う地図などなく」
偶然の産物とは。これではあまりにも心もとない。
「例の夫婦の話を聞き新たな行き方を発見した我々は隊を結成した。
しかし何度試みても異世界どころか旧東境村さえ発見出来なかった。
異世界探索にはトラブルが付きもの。非協力的なことも。嫌われたらお終い。
そこで一度身を引いて助手に任せることに。
彼は私に劣らず研究熱心で異世界への道を模索していた。
そしてある時何かのきっかけで手掛かりを。旧東境村への行き方を見つけた。
それが何かは最後まで教えてくれずに一回目の調査に。
もちろん何事にも慎重な彼のことだから発見してから教えるつもりったのだろう。
ともかく一行は旧東境村へ向かった。
常に連絡を取り合い現在地を示してくれた。
もし何かあった場合の対策の一つとしてだろうが。
何より私を尊敬してくれてもいたのだろう。
そしてある日ぷっつりと消息が途絶えてしまった。
その場所がここだ。地図を見て欲しい」
アークニンは惜しげもなく地図を示してくれた。
「うおおお! 」
「本当ですか博士? 」
「少なくてもこれで旧東境村を発見出来そうですね。先生? 」
「ああそうだな。異世界も目の前さ。ははは…… 」
それぞれが勝手なことを口々に述べている。
興奮し過ぎて己をコントロール出来ないらしい。
これがいつも冷静で無口なミコまでとなると相当だ。異世界となると人が変わる。
俺だって実際浮かれてるもんね。
「アークニン博士。一つ疑問があるんですが?
なぜここまで分かっているのに探しに、助けに行かないんですか? 」
ミホ先生が不思議そうな顔をする。そこは俺も引っ掛かっていたところ。
これでは見捨てたも同然じゃないか。
「それはもちろん助けに行きたいさ。当然だろ?
しかし私には正直旧東境村がどこか正確には分からない。
いや仮に分かっていてももし彼らが異世界に行ってれば探しようがない。
何と言っても人手不足。
前にも言ったように最低でも処女二人と純粋な少年一人が必要なんだ。
行方不明事件を起こした私の元へ集まる者は限られている。
純粋な少年少女など親が許すはずがない。
メンバーが揃わなければ仮に旧東境村を見つけられても意味がないことになる。
助手が消息を絶ったのは異世界に行ったからだと推測される。
だから少なくても異世界の扉を開かなければダメなんだ。
無駄金を使ってる余裕は私にはない。もう資金も尽きかけている。
次がラストかもしれない。だから慎重にことを進めている」
「それに比べて君たちはどうだ?
仮に異世界を見つけられずとも旧東境村さえ見つかれば面目も保てる。
行くべきは我々じゃない。君たちなんだ。
君たちに賭けるのも悪くないと本気で考えているよ。
だからこそこれだけ包み隠さずに教えてあげるのではないか」
「アークニン…… 」
「悪かったな。不器用で伝わり辛かったと思うが私は君たちを応援してる」
「気づかなかったよアークニン。俺にそこまで期待してるなんて」
「任せたぞ青井。そして異世界探索部よ。君たちの手で旧東境村を見つけてくれ。
そして異世界を発見して欲しい。
もしまだ生きてるのであれば助手たちと合流して欲しい」
アークニンの胸の内を聞き気を引き締める。
嫉妬深い彼も我々の活動に全面協力をしてくれるらしい。
どうやら誤解があった。アークニン何だかんだ良い奴だったらしい。
とてもそうは見えないのが奴のかわいそうなところ。
「はい! アークニン博士の願いを胸に行って参ります」
生徒たちは思いを無駄にしない。
「うん。それでいい。お土産ぐらいはもらうからな」
ようやく異世界がホラでも夢物語でもないことが分かった。
俺は今猛烈に感動している。
「では健闘を祈る。私も研究に忙しいのでこれで失礼するよ」
アークニン退場。
続く