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お買い上げ

ついに動き出したアークニン。

カズトを誘って二階へ。


心の奥底に閉じ込めたどす黒いものを解放しようとする。

「ほらリラックスして。良いんだよ」

「はい博士。正直に言います。俺どうしても抑えられないんだ」

簡単に落ちてしまうカズト。

「よしまずは異世界に行くといい。そうすればおそらく君の願望は叶うだろう」

意味深な物言いで迷える子羊を惑わせる。


「カズト君。もう迷うな。君の思うまま行動すればいい。

もしもの時に何か役に立つかもしれない。これを君にあげよう」

黒光りした鋭利なもの。

「これはナイフ? 」

「そうだ。誰にも気づかれないように持ってなさい。

カズト君。もう君の役目は分かってるね? 」

「はい博士! お任せください! 」

「よろしい。行くがいい! 」

「はい! 」

ついに準備は整った。

これで悲劇は再び繰り返されることになるだろう。


先にカズトを一階へ。

アークニンは二階をぐるっと回ってから下の階へ。

密会に気づかれないように慎重に。

教師はおろか生徒たちにも気づかれることはなかった。

何事もなかったように時間が過ぎていく。


一時間が経過。

「間もなく閉館のお時間です」

館長が急かす。

「ああまだ買い物してなかった! 」

生徒たちが騒ぎ出す。ミホ先生も釣られてお土産コーナーへ。


「これなどいかがでしょう。もうあと十分で閉館ですよ。

それまでにお買い求めください」

「うーん。高いな」

値切るのが習慣なので館長相手に最後まで粘る。

「申し訳ありません。これらは大変貴重な物で定価以外でお買い求め出来ません。

お高いでしょうから無理なさらずに。どうしても欲しい物があれば次回また。

この紙の束以外は今表示されてる値段でお求め出来ますのでご安心ください」

今までもこれからも値段はそのままだそう。要するに高く設定してるのだろう。

館長がぜひお土産をと迫るので一個ぐらい買うかな。


邪魔が入る。

「どうだ青井? 決心したか? 」

アークニンはどうしてもこの紙の束を買わせたいらしい。

俺としてはお土産の方が気になるんだが。

生徒たちも動こうとしない。うん一人だけ様子のおかしいのがいる。

「おいどうした? 元気ないみたいだけど」

「大丈夫です。興奮してつい」

どうやらミコは疲れたらしい。

もう閉館の時間だ。お土産を買ったらすぐに帰るとしよう。


お土産リスト一覧。


異世界人の骨  百万円

異世界の石   五十万円

異世界探索録  十万円

パンフレット  一万円

異世界の想像図 一万円

デッサン    五千円

饅頭      二千円

パン・クッキー 千円

チョコ・アイス 五百円

その他     百円


ほぼインフレぼったくり価格だが博物館が決めたことだからな。

ここはアークニンの異世界研究の成果を発表する私設の博物館。

ラボの横の小さな博物館。公益性はまったくない。

そもそもこんな田舎の山奥では誰が来るものか

俺たちが今年になって初めての来場者かもしれないな。

まさか出来てから最初のお客様ってことはないよな?


「おいそろそろ時間だぞ。本当にいいんだな? 」

「アークニン。お前って奴は…… よし分かった。これも生徒の為さ。

この紙の束を購入するよ。偽物だったら訴えるからな! 」

「まったく人の善意を疑うとは情けない奴だ」


「うわああ! 」

大喜びの生徒たち。だがこれが仮に本物でも解明には相当な時間を要するだろう。

それこそ顧問の掛け持ちなどやってたらすぐ卒業だろうな。

「それでいくらだ? 」

これ以上の時間稼ぎも交渉も必要ない。定価で買うつもりだ。


「本来は十万や百万でも買えない一品。だが同じ異世界を志す仲間だからな。

お高くは致しません」

「おいもったいぶらずに早く言えっての! 」

「持ち運び便利な箱をつけまして一万円で結構です」

うわ…… さすがは商売上手。ゴミを売りつけるテクニックには惚れ惚れするな。

「わああ…… 安い! 安ーい! 」

ミホ先生が喰いつく。

「もっと大きな箱ですと一万二千円です」

「うーんそれも安い! 安ーい! 」

のりのりのミホ先生。こちらが恥ずかしくなるレベル。

とりあえず落ち着かせてから。


「よし分かった。一つ頂くとしよう。それからまんじゅうとクッキーも。

他に欲しいのはあるか? 」

生徒も遠慮してるようで静かだ。

「異世界想像図! 」

部長がねだる。

「よしそれも追加で」

結局かなりの出費となってしまった。

もうすぐ閉まるとなるとどうしても購買欲が。

これは乗せられたかな?


                 続く

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