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旧東境村

長々とアークニンの作り話を聞かされもう限界。

異世界から生還した男の話なんてホラに決まってる。

こうまでして俺たちを引き止めたいのか? 情けなくなってくる。

アークニンはもはや正気を失っているのでは?


「おいお前らもうここから離れよう。聞くだけ無駄だ」

「でも先生…… 」

「ほら早く。逃げられなくなるぞ」

ヒソヒソと気づかれないように。まずはゆっくり後退り。

ゴーと言ったら振り返って全力疾走するように指示してある。


「おいそこ何をしてる! この高名な博士の言が信じられないのか! 」

自分で言うところが何とも情けない。

クソ! もう少しで逃げられたのに気づかれては次の手を考えるしかないな。

取り敢えず時間を稼ぐとするか。


「そのホラ話に根拠はあるのか? 」

おかしな博士に付き合う必要もないが招かれたからには一応聞いてやるのが礼儀。

しかし徐々にアークニンのペースに。このままでは危険。

「まだ疑ってるとは何と愚かな! 良いか。信じぬ者は救われんぞ! 

ただの白紙を送ってくる馬鹿もおるまい。メモにはこう書いてあった」


『一人の少女を探せ。彼女こそが異世界への道標だ。旧東境村にて』


「一人の少女がキーになるとこう言いたいんだな?

それで肝心の旧東境村ってどこにあるんだよ? 」

「さあな」

「おい! アークニン! 」

おかしいな? 奴はすべて知ってるのでは? 

知っていて敢えて焦らしてる気がする。

それはなぜ? 俺を、我々を試してるのか?

異世界の扉を開いたはず。ならば当然旧東境村だって見当がついてるだろう?

知らない振りするなど。一体どう言うつもりなんだ? それとも本当にまだ?

どうせ聞いても嘘を教えるかはぐらかすかのどちらかだろう。

奴のチームにでも加わらなければこの疑問は解消しないだろうな。


「ふふふ…… 私にはさっぱり分からん。後は自分の手で調べるんだな」

うわ…… その手で来たか。俺を揺さぶる気だな。

「ははは! どうやら作り話だなこれは。インチキに決まってる! 」

まだどっちかさえ分からない状況。ここは博士の反応を窺う。

「インチキとは無礼な! 作り話のはずがないだろう!

現に私の…… いや何でもない」

「私の? その後何と言おうとした? 」

これはまさか真実なのか? とても信じられないが。


「仕方がない。まずこの紙の束を購入してもらおうか。話はその後だ」

どうやらまだ話してないとっておきの秘密があるらしい。

「この汚らわしい紙束を買えと? いくらだ? 」

「一万円でいい」

「それは高すぎる! これがまだ本物だと言う確証がない…… 」

値切ってみる。無価値ならもっと安くするに違いない。

本物なら当然相手にしないだろうな。

「別に買わなくてもいいさ。しかし次はないぞ。

もしあっても今の十倍か百倍かそれ以上になってるだろう。

あの時買っておけば良かったと後悔しても遅いからな」

自信満々の博士。

ここまで言うのは少なくてもアークニン本人は本物と信じているのだろう。

だったら買わない選択はない。しかし何か嫌なんだよな。


「どうした? これは異世界に興味を持ってくれたお前への感謝の気持ちだ。

子供たちを失望させたくないだろう? お前だって一応は教師だからな。

遠慮せずに持っていけ! 」

どうする? どうする? もはや金の問題ではない。

俺は奴に屈してすべてを認めることになる。それは敗北を意味する。

異世界否定派の俺にはどうしてもそれを認めることが出来ない。


「先生! 」

「青井先生! 」

プレッシャーを掛ける生徒たち。おいおい冷静になれよ。

ただのゴミに一万もだぞ? 払えるか! 俺は信じない!

「もう分かったよ。皆が欲しいって言うなら仕方ないな。

でもな… 少なくてもこのゴミは現在無価値。やっぱり…… どうするかな? 」

ゴミは資源にもなるしリサイクにもなるが値段がつけられることはない。

しかも微妙に高い一万円。千円なら試しにスパッと。


「まったくこの期に及んでセコイ真似を。昔から変わらんなお前。

良いだろう。一時間待ってやる。それまでに決めろ!

私も決して金儲けがしたい訳ではない。崇高な目的の為に生涯を捧げている。

ゆっくりどうぞ」

俺を中傷してイメージダウンを図ろうとしても無駄だぞ。

俺はケチな訳ではなく無駄を省きたいだけ。決してセコイ人間ではない。

そんなことは生徒たちもミホ先生も分かってるはずだ。


                  続く

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