カレーライス恐怖症
お食事タイム。
食堂室が作られた経緯は俺には理解出来ないが人も増え結果的には良かった。
それにしてもアークニンの判断はあまりにも独特。
誰も寄せ付けないアークニンの人隣りが分かる貴重なエピソード。
さすがは奇人変人の自称異世界研究の第一任者。
今日のメインディッシュは生徒たちがいることもありカレーライス。
ガラガラと人数分のお皿が運ばれてくる。
単純なんだよなアークニンは。今の子供たちがカレーライスで喜ぶと思うのか?
せっかくなら一流とは言わなくても立派なコックがいる訳だしフレンチでも。
無理せずにイタリアンでも和食でも構わない。
それなのにカレーライス? まさかのインディー? ガーディアン?
ケチったな? もっと豪勢なら生徒たちからの尊敬も得られたろうに。
一口食べてみるが何の変哲もないカレーライス。
辛さも抑えられていて中辛ってところかな。
何だったら美人三姉妹の二人が作ったカレーの方がよほど神秘的であり恐ろしい。
畏怖の対象だろう?
ライスも本場感はゼロ。贅沢にも出来たてのブランド米。
もし米騒動でも起きれば摘発の対象だろう。
カレー用の米などくず米で充分。一等米である必要はない。
それなのに何も知らずに贅沢しやがって。
ははは…… こんな風に貶すのはアークニンを信用してないのもある。
それとどちらかと言うと俺はカレーが好きではない。
その理由を話せば長くなるので今は触れないが一つだけ言えるとしたら口内炎。
お口には優しくないとだけ言っておこう。
ナンでもあればまだいいのだがライスだからな。無いものねだりとなる。
アークニン曰くナンは子供向けではないそう。
ただの奴の好みの問題ではないだろうか?
「美味しかったです! 」
当然カレーだからそうまずくは作れない。
おかしな香辛料もどきで誤魔化さない限り味は保障されるだろう。
生徒たちが満足すればそれでいい。
「久しぶりに食べますがやっぱり美味しいですね」
三年ぶりだそう。
ミホ先生は名家なので庶民食のカレーを食べることはめったにないそう。
俺とも意見が合いそう。
「どうだお前は? 」
スプーンを置くと感想を求められる。
美味いかと問われればまずいはずもなく頷く。
「デザートもあるぞ」
出されたのは何の変哲もないケーキ。
うーん。カレーからのケーキ。
もはや和だか洋だか分からない。どう言う組み合わせしてるんだ?
まさかケーキにカレーをぶかっけるんじゃないだろうな?
アークニンなら有り得る。ワイルドだろ?
いや逆に何も仕掛けがないほうが異常。必ず何かある。
何かあると分かっていながら食べ進める恐怖。
だがシンプルにショートケーキ。生クリームが際立ってかなり美味い。
美味いがそれがどうした?
紅茶で流し込む。
これはタピオカでもいいかも。
やはり何の変哲もないデザート。
俺の警戒し過ぎなのかもしれないな。
カレーにしろデザートにしろ文句はない。
だが普通でない博士のことだからな。警戒を解くのは建物を出る時でも遅くない。
普通のケーキに普通のカレー。
博士が手を叩く。
「今君たちが食べたカレーは異世界で取れたスパイスを使用している。
ケーキも古代に発明されたケーキの元祖。
その当時はもちろんケーキなど作られていなかった。
当時の人が異世界の者に教わってできたのだと言われている。
信じる信じないは君たち次第だ。よく考察して自分の頭で考えるように」
明らかにおかしな人間。何でも関連付けようとするのは詐欺師の常套手段。
騙されてはいけない。幼気な高校生に嘘を教える怪しい博士なのだから。
「まさかこの紅茶も何か…… 」
ただのホットティ―だと思ったがミルクティーだったか? まさかレモンティー?
などと冗談言ってる時ではない。
うぐぐ……
突然苦しみだした部長。生徒に何をしやがる? 毒でも盛ったか?
「済まん…… 紅茶はどこにでもある普通の紅茶。
買ったのは私ではないので詳しいことは分からないが至って普通の紅茶のはず。
残念だがご期待には応えられないようだ」
部長以外が拍子抜けする。
「食べ過ぎですよ。詰まったみたい。お水もらえますか? 」
部長は緊張からかそれとも単に食い意地が張ったのかカレーが利いたのか。
急いだせいなのか苦しそう。ミホ先生がゆっくり水を飲ませてあげる。
まったくガキじゃないんだから恥ずかしい真似をするなよな。
続く