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アークニン博士

ついに目的地へ到着。

「おうこれだこれだ。たぶん…… 」

自信がないのは当然で初めてお邪魔するのだからあやふやにもなる。

「もう先生しっかりしてください! 地図通りならこれで間違いありませんって」

部長は自信満々。

地図については俺もまだ研究中。所謂初心者だ。しかも苦手だとの自覚もある。

だから地理の得意な生徒たちに任せている。

おそらく俺の能力では一生たどり着かなかっただろう。

北と南だって右か左かで迷ってるぐらいだからな。

生徒を失望させたくない。

ただ誰しも得意不得意が存在する。そんな時は拘らずに任せればいいのだ。


道なき道を通り抜けようやくたどり着いた目的地。

遠くからでは見辛かったが赤っぽい建物で西洋風な施しがされている。

とても不気味…… ではなくお洒落な建物。

庭園もゴージャスな上にかなり個性的。

バラとヒマワリのアーチでお出迎え。

それ以外にも多くの花が咲き誇る。


そしてアークニンと言ったらこれ。

彼は出会った当時からおかしなものが好きで特にヘビを可愛がっていた。

だから探せば何匹かは本物が見つかるだろう。

目の前にはでかでかと訪問客を驚かせようとヘビの彫刻が。

それでは足りずに至る所に紋章。

あれ? ヘビだけではない。これは恐らくワニ?

そうするとどこかにワニまで? 

これは探索には持って来いだな。

今が真夏でなければ庭園を散策するのも悪くない。

巨大ヘビと凶暴ワニの恐怖に怯えながら。


庭園を抜けると館が迫って見える。

形は歪み色は禍々しい赤紫。まるで血のようだ。

キュビズム? シュールリアリズム?

圧倒的で俺ではとてもとても。

独特のスタイル。ユニーク過ぎて逆に笑えてくるほど。

まあ人の趣味だからな。客だしお洒落だと褒めるのが大人の対応。


「どうだ凄いだろ? 」

皆呆然として感想一つ述べない。

ミコなど踊り出す始末。


「いらっしゃい」

謎の男登場。

不気味な見た目と瞳の奥に秘めた妖しい願望。

心の中で何だかとんでもないことを企んでそうな冷たい目。

「アークニンか? 」

「久し振りだな青井! 」

積もる話は後にして目的を伝える。

「そうだった。お前たちは見学に来たんだったな。こっちだ」

応接室に通される。


「改めまして私が異世界研究の第一人者のアークニン博士である。

何でも聞いてくれていいよ」

全面的に協力すると約束してくれた。

笑顔が不気味な男。

何を考えているか分からないところがある。

人生経験のある大人はまだしもただの高校生ではコロッと騙される。

彼の狙いがいまいち掴めないので出来れば紹介したくなかったがつい……


「あなたがあの有名な! 」

部長が椅子から飛び出す勢い。

「おお、私のことをご存知かな? 」

驚いた様子。それもそうか。まともな奴ならアークニンなど興味を持たない。

かなり胡散臭い科学雑誌にたまに顔が載る程度。

俺も忘れてなかったが異世界探索部の顧問でもなければ一生会わなかっただろう。


「アークニン。久しぶりだな。あれから何年経つかな…… 懐かしいよ」

改めて握手を交わす。

研究に没頭するあまり老け込んで見えるが昔の面影も。

「メガネを外したんだな? 」

「ああ最新の手術でほらこの通り。もうバカにされることはない」

お洒落なメガネもあったが学者風が良いと爺臭いのを掛けてたので笑われていた。

当時俺も同じようにメガネを掛けていたので気持ちが痛いほど分かる。

俺は勉強の時以外では掛けないようにしている。そこまで視力が悪くないからな。


「お前こそ見えるのか? 」

「それが最近目が悪くなった気がしてな。若い子が皆綺麗に見えてくるんだ」

冗談を言ってみる。

「ははは…… それは昔から変わってないだけだろうが」

「いやいや本当に目が悪いんだって! 」

「ははは…… おっと…… お前の教え子たちが詰まらなそうにしてるぞ」


久しぶりだったからつい…… 談笑してる時ではなかった。

「いいか。生徒たちにおかしなことを吹き込むなよ」

「おいおい何を言う。私は純粋な研究者。

彼らだって私の研究に興味があって来たのだろう? 

それにしても直接会うのは何年ぶりかな…… 」

「アークニン。長くなるからその話は後にしてくれ。日帰りツアーなんだからさ。

いつまでもベラベラ話してたら日が暮れちまうよ。ちなみに泊まる場所は? 」

念の為に聞く。長引けば宿泊もあり得る。

そうなったら生徒たちに危険が及ぶのは間違いない。


                続く

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