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危ない社会科見学

危ない社会科見学。

七月のある日、東京の外れ。

何度かの捜索を経てついに例の場所へ。

生徒たちはワクワクドキドキだろうが俺には嫌な予感しかしない。


電車を乗り継いで二時間以上。そこからバスで三十分。

そこからまた徒歩で十五分。歩くと言うか登ると言うか。

気の遠くなるような時間を掛けてようやく目的地。

何もこんなくそ暑い時に出向かなくてもいい。

しかし夏休みまでにお邪魔することになっていたので入ってすぐに例の場所へ。


例年以上の暑さが体に、精神に堪える。

だが生徒たちは部長をはじめ涼しい顔。

どうやら俺が課したハードワークにも慣れ精神的にも肉体的にも成長したらしい。

もはや理想形と言っても過言ではない。


それに対して俺は日頃の不摂生が祟って夏バテ気味。

運動だってランニングぐらい。暑いから二日で終了。

これでは説得力も何もない。

目的地に近づいたことで気合いが入り足取りが軽くなった。錯覚かな?

この錯覚こそが危険なんだよな。


「大丈夫かお前ら? 無理してないか? 」

「先生! かなり疲れました。でも動けます」

歯を食いしばる生徒たち。うう…… 泣かせてくれる。

「もうすぐだ。俺をおぶってくれ…… もちろん冗談だ」

いくらハードワークを課したとしても夏の暑さには敵わない。

彼らにも疲れが見え隠れする。俺も苦しい。少しだけ後悔してる。


「青井先生…… 」

ミホ先生はもう歩けないそう。

「無理なさらずに。旅行だってもうすぐなんですから」

ここで無理をすれば台湾旅行は中止。それは可哀想だし今更キャンセル出来ない。

そうなったら俺が代わりに…… たとえサマー部の引率を蹴ってでも駆けつける。

ああダメだ。パスポート切れてたんだった。

「はい。でもここまで来れば」

副顧問として参加してくれるのは有難いのだがお荷物になっては意味がない。

俺ももう少し暑くなく体力があればミホ先生を担げただろう。

だが生徒以上に疲れていて立ってるだけがやっとの俺では絶対に無理。


「疲れたよ先生! 」

部長も限界らしい。

運動部ではないので体力自慢がいる訳でもない。

相当無理してたんだろうな。弱音を吐く気持ちも分かる。

「我慢しろ! もうすぐだ! 」

「先生限界! 」

「我慢だ。我慢あるのみ! 」

どうにか精神論で誤魔化すが限界が近いのは皆同じ。

これだと帰りはどうなるのだろう?

いや…… 果たして無事に帰してくれるのか?

 

「青井先生…… 私はもうダメみたいです」

集団から遅れ始めたミホ先生。

「ミホ先生は無理なさらずに。俺の背中にどうぞ」

「いえそう言う訳には…… 」

何を恥ずかしがってるんだ? 押し問答してる余裕はない。

それでも頑なに拒否。歩くと言うから驚く。

ミホ先生の顔から血の気が引く。このままでは早々にぶっ倒れる。

「遠慮なさらずに! 」

「ありがとうございます。もう少しなので頑張ります」

どうやらまだ動けるらしい。まさか俺よりもタフなのか?


「先生! 」

部長が遮る。

「何だ疲れたか? 暑いのか? 我慢しろ! 」

「前方に建物らしきものが見えてきました。あれですよね? 」

興奮気味の部長が汗だくになりながら白いTシャツを捲る。


虫刺されや日焼け対策として七分袖を採用してる。

さすがに長袖では暑すぎるので七分袖で。

ついでに言うと下はジャージのズボン。

靴下は白禁止。シンプルに汚れが目立つから。

ミコは動きずらいと嫌がっていたがどうにかジャージを穿かせた。

短パンでもいいがどうも山奥らしいので念の為に長ズボンを用意してもらった。

これでは暑さが余計に際立つだろう。

だがこれもおかしな虫がつかないようにする為。


俺もミホ先生も同様の格好で臨んでいる。

部の結束を高める為に男女や大人、子供関係なく同じ格好。

もちろん本格的な探索の場合はもう少し厚着となり荷物も増えるだろうが。

今のところはバックパック一つに収まる範囲までとしている。

彼らには窮屈に感じるだろうがこれも実践を見据えて。


お菓子も一人五百円まで。チョコ等の高カロリー品や非常食はこちらで用意。

もしもの時に備えるのが我が部。

ドリンクもペットボトルではなく水筒を各自用意。

本格的に見えるだろうが登山や旅となればまだまだ甘い。

とは言えアークニン博士の秘密の研究所までの小旅行ならこれで充分だろう。


さあ到着だ。


                   続く

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