趣味って奴は複雑で
帰り道。
やっぱりミホ先生きれいだな。うん美人三姉妹にも劣らないほど。
いやそれはさすがに言い過ぎか? でも品があっていいんだよな。
生徒からの受けもいい。
俺と違って慕われてるのがよく分かる。
やはり女性同士の方が良いのかもしれないな。
ここは決断すべき時。俺が身を引こう。
そしてタピオカ部と異世界探索部の顧問になっていただいて俺はZERO館を去る。
前任のスケルトンには悪いがこれもすべて俺…… ではなく生徒の為。
さすがに今すぐでは迷惑が掛かるので九月末で調整しようかと。
それまでに何もなければだが…… ある訳ないよな。そんな大事件なんかさ。
ミホ先生は前身の高校出身で女子高だった当時と重なるのだろう。
勝手な推測でしかないが。プラスに働いてるのは間違いない。
安心して後を任せられる。
俺も辛いが生徒たちを思えばこそだ。
もちろん金曜日のお楽しみまで奪う必要はない。
ただ一つ気をつけなくてはならないことがある。
それは例の美人三姉妹。特に上二人。
あの二人に掛かれば俺みたいにとんでもない目に遭うことに。
どれだけ信頼関係を築こうが慕われようとあの二人に関わればタダでは済まない。
ミホ先生を招いたのは俺だ。もしそのような兆候があればすぐにでも止める。
それがミホ先生に対する責任。
甘くない。二人は決して甘くないぞ。ほら今もこっちを見て笑っている。
美人三姉妹の上二人。
要注意人物。
金曜日以外は警戒すべきだろう。
ワイワイガヤガヤ
皆楽しそうにお喋りに興じる。
そこに入っていけない卑屈な俺。
空気を乱すのも悪いしな。
それを察してくれるのがミホ先生。
「青井先生の趣味は何でしたっけ? 」
俺の話題はまずい。金曜日のこともある。
ここでは影の薄い顧問として通ってるのだから。
「ははは…… いきなり何を? 趣味は特にありませんよ。
強いて挙げれば英語ですかね」
ここは無難な答えで受け流す。
下手に子供などと言えば変態扱いされかねないからな。
無趣味も情けない。映画鑑賞もスポーツ観戦もするが趣味と言うほどでもないし。
趣味…… 俺の趣味って? 誰か教えてくれ!
「英語ですか? 大好きなんですね」
「はい。趣味って言えば日本語の趣味と英語のホビーには少々違いがあるんです。
英語のホビーは専門的な趣味のことで特技に近いかな。
だから外人さんには伝わり辛いんです。ははは…… 」
一人で語り勝手に笑う。これでどうにか会話が保てると言うもの。
ミホ先生は苦笑い。
こうなるのは分かり切っていたので気にしない。
「英語…… 英語ですか。私も英語の点は高かったので得意と言えますね。
でも私の口からは英語が趣味だなんてとてもとても。
せっかくですから私も英会話教室に通おうかな」
優しいミホ先生はこんな俺にも興味を示してくれる。
本気ではないだろうが英会話にまで。俺も応えなければな。
「ミホ先生。それならウサギで有名な…… 」
勧めようとしたところで邪魔が入る。
静かに話を聞けない生徒たち。
「あんなこと言ってるけど先生は覗きが趣味でしかも相当マニアックなんだ」
美人三姉妹の長女が下品にも大笑い。
「そうそう。ミホ先生も気をつけた方が良いよ」
二女まで調子に乗る。
まったく何て奴らだ。大人をからかうとは許せない。
確かに金曜日のは楽しんでるから言い訳出来ないがそれ以外は否定する。
「青井先生まさか…… 」
すぐに信じてしまうので困る。嘘に決まってるだろう。
「ミホ先生も実感したでしょう?
毎日のように私たちの着替えをタイミングよく覗くんだから」
「青井先生やっぱり…… 」
まるで変質者を見るような蔑んだ目。だから俺は違うって。
「おいちょっと待て! 俺がいつ? 」
「毎日のように。今日だって…… 」
どうやら本気らしい。
俺だって止めたいわそんな変な趣味。
だがこれは彼女たちが仕組んだことでどちらかと言えば俺は常に被害者。
ある意味目撃者でもあるが。
「それは覗きとは言わん! 堂々と入ってきただろう? 偶然だよ偶然。
俺がいつも決まった時間に来るからそれに合わせて彼女たちが無理矢理。
これは不可抗力だ! 」
おかしいな。正論なのに言い訳にしか聞こえない不思議。
俺は一度だって覗きなどしてない。それだけは確か。信じて欲しい。
ミホ先生だけでなくこの際だから皆に伝えておきたい。
俺は紳士だ。変態紳士って言い方もあるが俺は違う。
絶対に覗きなどするものか!
続く