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水曜日の……

水曜日の午後。

気がつくといつの間にかZERO館の方へ足を向けていた。

仕方ない少し様子を見て行くか。

今日は水曜日なので両部ともお休みのはず。

だが部室にに明かりが灯っている。これはどう言うことだろう?

まさか昨日からつけっぱなし? いやそれはあり得ないか。

昨日も部長が最後のはず。

いつも部長に任せて俺が一番に出て行く。

もちろん気を使ってのことだ。奴らはどうせ着替えるんだから。

俺がいると邪魔だろ。それにすぐ帰らずお喋り。とても待ってられない。

部長がそんな愚かじゃないとするとやっぱり中にいるのか? 何てね。


コツコツ

コツコツ

廊下を歩く音がする。

コツコツ

コツコツ

まずい…… こちらに向かってくる?

そんな待って! 来ないで! これ以上近づかないで! 

願いが通じることは稀。諦めが肝心。


ガラガラダーン。

扉が大きく開く。

息を呑む。一瞬の出来事。

目の前にはいつもの男の姿があった。

不思議そうに中の様子を窺う怪しい男。


きゃああ!

きゃっ!

ぎゃあ!

いやー!

きゃあ! きゃあ!

少女たちの悲鳴が響き渡る。


「先生? 何で先生が? 」

容赦なくものが飛び交う。

「何で先生がここに? 」

「まさか青井先生? 」

ようやく我に返る面々。


「おっと…… これは失礼」

いつもの癖だから仕方ないよな。

「失礼ってわざとでしょう? 先生最低! 」

心のない批判を受ける。

「まったくこんな時ばかり批判しやがって心外だな。

いつも俺を嵌めようとするからこんな結果になるんだろうが。

人のせいにしないで心に手を当ててよく考えてみろ! 」

怒りを抑えて諭すも何一つ堪えてない。

「お認めになってください」

「そんなことあるか! 」

「分かってますよ先生」

くそ…… 集団になると俺では勝てない。

「ごちゃごちゃ言ってないで服を着ろ! みっともないだろうが! 」

俺は大人だから生徒たちが着替えてようが別に気にしてない。

はいはいと流すだけ。しかし彼女たちも黙ってない。

責めるなって。習慣なんだから仕方ないだろ?


「青井先生! 」

うげ…… 最悪なことにミホ先生もいた。しかも同じように着替えてる最中。

これでは言い訳が出来ない。ただの変態ではないか。

本当に間の悪い人だな。巻き込まれ型に見えて実は巻き込み型なのでは?


「ははは…… ミホ先生もいらしたんですか? 」

想定外。そもそも部室を更衣室の代わりにするなと何度言えば分かるのだろう。

成長しないタピオカ部の連中。生徒が生徒ならそれを見守る先生も先生だ。

どうせ誰もいないんだから部室で着替えようと言われて断れずに一緒に。

だがそれでは副顧問として生徒を導く者としていかがなものか。

生徒の意見に流されるミホ先生を見たくなかった。

俺は厳しいぞ。甘やかさないぞ。


「ええ頼まれましたので一緒に。

それよりも青井先生はサマー部の方に行かれたと思ったのですが」

「ははは…… ついZERO館の方へ足が向くんですよ。

そしたら明かりがついてたもので確認を」

俺だって本当はZERO館に興味なんかない。

でも美人三姉妹の動向が気になるのも事実。

不調や怪我や不機嫌で週に一度のお楽しみが流れては生きていけない。

だから様子を見るようにしている。当日だと対処できない場合があるので。

早い方が良いと張り切ってしまう。

「それは熱心ですね。私たちも帰るところだったんです。

どうです一緒に帰りませんか? 」

ミホ先生のせっかくのお誘いを無下には断れない。


「ほらほら先生はまだ用があるんでしょう? 」

「邪魔だってもう! 」

酷い扱いを受ける。

ミホ先生人気で相対的に影が薄くなっていく顧問の俺。


そうか忘れてた! 今週のタピオカ販売に向け新作に取り組んでたんだった。

昨日までに満足のいくものが作れず一からやり直す羽目に。

そのせいでタピオカ部は本来休みのはずの水曜日に活動していたのだ。


頭のどこかで覚えていた気もする。

気がつかない振りをして帰り際を狙いラッキーに遭遇。

だから厳密にはわざとではないが偶然でもない。すべて計算された行動。

もちろん気づかれたらただでは済まないので自己暗示を掛けた。

こうすれば疑われることもないだろう。


ここまでして俺は何を求めているのか?

もう自分が分からなくなっている。

もしかすると俺は生徒の着替えに執着する変態なのかもしれない。


                続く

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