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キス&ハグ

ようやく一人っきりになりブツの確認をしようかなと言う時にノックが。

慌ててポケットに戻そうとするが引っかかってぽろっと下に落としてしまう。

まずいと急いで拾うところをミホ先生に見られ疑惑の目を向けられる。

だがミホ先生は指摘することもなく用件を伝える。

危なかった…… ギリギリセーフだったらしい。

まったく驚かすよな。心臓が止まるかと思ったぜ。


「失礼します」

副部長が勢いよく入って来る。上下ジャージのダサイ格好。

ボーイッシュな見た目で下級生の女子から絶大な人気を誇るも本人に自覚なし。

当然タピオカ部にもその才能と見た目で虜になる女子も。

俺は顧問だからその手の情報はあるにはある。

だがほとんどがあの美人三姉妹からの情報で信用ならない。

俺を嵌めるために嘘の情報を流すことだってあり得る。だから話半分で聞いてる。


だから今回は初耳。まさか副部長にそんな人気があるとは思いもしなかった。

副部長を慕う者。その一人が今回の消失事件を起こした女の子。

どうやら悪意からではなく親切心から。

ならば二人の為にもどうにか穏便に済ませたい。


「どうした何か用か? 」

そう言えば被害者からの話は聞いてなかった。

もうほぼ事件も解決したが念のため聞いてみるか。

「先生私…… その…… 下着なんて最初から穿いてなかったんです!

お騒がせして本当に申し訳ありません」

「何だって? 最初から穿いてない? 」

どう言うことだ? あり得るのかそんなこと?

 

「それからミホ先生が落としものとして届けてあったの見つけて来てくれました。

これですべて解決です」

そう言うと勝手に出て行き例の女の子を連れてくる。


嬉しそうにピースサイン。それに応える仲の良いお友だち。彼女だ。

二人は仲がよく見え楽しそう。

ボーイッシュな副部長と大人しめの彼女。

一見不釣り合いに見えるが相性はいいらしい。

「一緒に帰ろう? 」


「おいちょっと待て! 下着を最初から穿いてないとはどういうことだ? 」

想像するだけで鼻血が出そう。

興奮するなと言ってももう遅い。誰かハンカチを? ティッシュでも構わない。

「聞きますかそんなこと? 実はあんまり考えてなくて。

水着の上から制服を着たので水着のみ。消えたと思われた下着は家です」

そうこれこそがビキニ相撲の特徴。

汗さえ掻かなければ或いは気持ち悪くなければ帰りも着れる。

プールとは違う。絶体に濡れる訳でもなく癖になりやすい。

面倒な人間ほどやりがち。


「子供か? そう言うとこがアレなんだよな。早く着替えてこい! 」

よく考えればジャージで下校してもいいんだよな。

あんな誰が盗ったか分からない服を着ようと思う奴がいるのか?

「はーい。行こう」

二人は連れたって出て行く。


ホールに戻ると部員が待っていた。

どうやら帰らずに待っていたようだ。

「早く帰れ! 暗くなるぞ! 急がないとこんなのに遭遇しちまうぞ」

不審者二人も首を長くして待っていた。


「青井先生。決勝戦は本当に中止でよろしいですね? 」

ミコ先生が確認を取る。

「そうだ。俺の楽しみ…… いや違った。

役目が…… まあいいやこの際」

「何をボソボソ言ってるの先生ったら? 」

美人三姉妹の長女が指摘する。

こいつが関わるとロクなことにならない。

今回だって面白がって俺を疑って見せたり。

そうかと思うと怪しいほどに俺の肩を持つし。

基本ふざけてるからな。金曜日に充分楽しむからいいのさ。


「うるさいぞそこ! ともかく決勝に残った二人の優勝とする。

二人とも本当に良くやってくれた。もちろんご褒美は有効だ」

大喜びの二人。だが二人は対照的。

まだやれるとミコは元気一杯。

それに対してトップをさらけ出さずに済んだと安堵の表情の三女。

だから無理して受けなくていいと言ったのに。

観衆の無責任なあおりで感化されてどうする? 自分を持たなくてはいけないよ。


「ではどちらが先に? 」

ニヤケが止まらない。ああ、なんて締まりのない顔だろうか?

「では私からお願いします」

無防備な三女が近づいて来た。

まずは祝福のキス&ハグ。

へへへ……

キスをしようと迫る。

だが三女は怯んでしまう。

恥ずかしがり屋さんなんだからまったく。


バチン!

強い衝撃を受ける。

「私も行く」

バチン!

「うん? どう言うこと? 」

まったく意味が分からない。

訳も分からずに二人からピンタを喰らう。


               続く

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