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穢れなき犯行

制服盗難事件は一人の少女の告白により解決を見たかのように思えたが……

彼女によれば一時ロッカーに保管して休憩時間にゆっくり直そうとした。

そんなことせずに帰りにでも…… そんな器用なら苦労してないか。

しかし結局手が離せなくなり昼休みも抜け出せずに今に至った。

これが今回の事件の真相。


「しかしおかしいじゃないか。下着まで持って行くか普通? 」

「はい。変なのはそこなんですよ先生」

なぜか不思議そうにしている。自分でやったことだろう?

どんなに否定しても実際に下着も消えたのだ。これでは意味不明ではないか。

まさか下手な言い訳か? だとすれば大人をからかうなと言いたい。

どんなに恥ずかしかろうとやったことは素直に認めるべきだろう。

ここまで来て往生際が悪過ぎる。


「どう言うことだ? 自分の行為を理解できないのか?

まさか無意識でやってしまったとか? 」

無意識でやってしまって無罪放免なら俺だって挑戦するわ。

「だから違うんです! 」

大人しい少女は俯きがちにゆっくり語る。

震えも収まり顔色もだいぶ良くなった。保健室に行かずに済みそう。

今日は先生がいないから俺が代わりに世話することになる。


「私は下着など盗ってません! なぜそんなことをしなければ? 」

強気な彼女はおかしな否定に走る。

「本当に下着は盗ってないのか? 恥ずかしがる必要はないぞ」

「馬鹿にしないで! 下着を盗って何のメリットがあるって言うんです? 」

なぜこうなったのか意味不明と動揺を隠せない。

確かに彼女の主張も頷ける。女性が下着を盗るメリットがない。と言うか不明。

男なら分かるのだ。俺も自慢じゃないがポケット辺りに心当たりがある。

確かにそこが引っかかってるんだよな。


俺も信じたいが実際問題ブツは消失した訳で真っ先に疑われるのは彼女だ。

自らの潔白を証明しない限り正直に話しても疑われ続けるだろう。

このままでは既成事実となる。

とにかく疑いを晴らすことに全力を傾けるべきだろう。


埒があかないのでここは彼女の証言を一旦信じることにする。

「下着は盗ってない。それは分かった。信じるよ。では制服はどこにあるんだ?」

肝心の制服が見つかれば問題解決に一歩前進。

被害者だって許してくれるかもしれない。


「それは…… ロッカーの中に」

「いやなかったぞ。部室を丹念に調べたが副部長の着替えはどこにも。

もちろんロッカーは何度も見たよ。だから部室にはないと断言できる」

困った顔を見せる少女。別に困らせるつもりはなかったのだが。


ふうと一息吐いてから語りだす。

「ですから隣の部室。異世界探索部のロッカーにあります。

ミコちゃんが使ってるとこの左のロッカーに。

本当は最初に言おうと思ったんですよ。

でも下着まで消失したなど私には何が何だか分からなくなりつい嘘を。

ごめんなさい。反省してます」

言い出せずにどんどん追い込まれてしまったらしい。

何てかわいそうなのだろう。

彼女の証言通りなら悲しいすれ違いってことになるのかな?

彼女のやったことは悪意に満ちたものではなく純粋にその人の為を思っての行動。

誰もが気にも留めず本人ですら気づいてないとしたらそれはそれで大発見な訳で。

決して褒められたことではないが立派だと思う。拍手を送ろう。


「嘘? 嘘って言ったよな? 」

知ってて言わなかったのも嘘なのか?

そもそも仲間は嘘を吐かないものなのか?

「どう言うことだ? 君はたぶん嘘を吐いてないよな? 」

訳が分からずにこんがらがる。


「実は…… 一番先に異世界探索部のロッカーを確認しました。

その上で見つからなかったと報告しました。

数名と部屋を当たったのでその部屋にはないと信用してもらったんです」

呆れたな。そんな工作までするなんて。どこが穢れなき天使だよ?

想像とは違って来たぞ。

下手な工作などせずその時に見つかった方が良かったような気もするが。

何も考えられずに何とかばれないようにとそれだけ考えたのだろう。

まだ幼い。幼稚な考えの持ち主。


「そうか。だからどこ探しても見つからなかった訳だ。そうかそうか。うんうん」

消失トリックはあまりに大胆であったので誰も気づきはしなかった。

これが殺人事件なら少しは疑っただろう。

だがここは学校で彼女はタピオカ部員。仲間も疑うことはないだろう。

言動に不信感がなければそのまま流すのも頷ける。


真犯人を追い詰め制服の所在も分かった。

だが依然ブツが行方不明。

まさか本当にこのポケットにあるのが被害品ではないだろうな?

心配になる。だが当然確認しようがない。

一人でこそこそしていれば疑われる。

逆に皆の前で確認すれば終わってしまう。

だったらここで? いやダメだ。

さすがにそれは出来ない。


                 続く

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