コモンA
容疑者三名はそれぞれ疑わし点があるものの決定的証拠がなく潔白を主張する。
捜査は再び振り出しに戻る。
なぜかまた俺まで疑われだした。
美人三姉妹の悪ふざけに惑わされ皆の視線が突き刺さる。
なぜ…… 俺が男だからか? だが本当に真犯人は男なのか?
本当にそんな単純な事件か?
いやそもそも真犯人が人間とは限らないのではないか?
俺たち男が疑われる合理的理由が見当たらない。
そう言って疑いの目を向ける者を黙らせる。
ちっとも信用してないらしい。
人をケダモノのように見やがって。
俺はやってない! やってる暇なんかないんだ!
でもどうせまだ俺が怪しいって言うんだろ?
なぜ誰も俺の味方をしてくれない?
おっと感情的になってるな。これは切り替えないと。
「なあ最近鳥がうるさくないか? 」
近所の公園には大量の白い鳥が巣を作って常時鳴きながら縄張りを主張している。
付近の住民がフン害や騒音で悩まされていると聞く。
恐らく渡り鳥で数ヶ月もすれば移動するだろうがこのまま居つく恐れだってある。
今年だけではない。来年のこともある。出来るだけ早く対策を取るべきだろう。
「ふふふ…… 先生言い逃れするつもりですか? 鳥ってまさか? 」
俺の推理を鼻で笑う美人姉妹の長女。
「そうだよ鳥って何? 冗談でしょう」
二女も黙ってない。
こいつらは他の生徒に比べて遠慮がない。少しは教師として敬えよな。
そこが彼女たちの良いところでもあり悪いところでもあるが。
「今度の制服盗難事件の犯人は俺でもなければ不審な三人でもない。
だったら他に犯人を見つけるのが当然だろう? 」
「だからって鳥はあまりにも荒唐無稽ではありませんか? 」
ミホ先生の指摘を受ける。そこまで真面目に取らなくても……
ほぼ冗談なんだからさ。
「ですからカラスが光ものに釣られてつい…… 」
あり得なくないだろ? 適当に考えたがそれなりに筋が通ってる。
「ですが当時部室は開いてましたが窓はしっかり施錠されてましたよ」
「それは…… 」
「それに鳥の鳴き声も聞こえなかったよ」
二女がフォローする。
もちろん分かってるんだって鳥じゃないことぐらい。
鳥は一つの案なだけなんだから。
制服盗難事件はますます複雑になっていく。
真相に近づきつつあると思われたが遠ざかっただけかもしれない。
「よし分かった。俺も容疑者の一人でいい。では改めてこうする。
三名の容疑者プラスアルファ―。
容疑者 青井三郎太 コモンA
容疑者 カメラマン カメラB
容疑者 ただの変態 不審者C
容疑者 庭師 老人D
その他 不明 その他E
取り敢えず容疑者をリストアップ。
自分が入ってるのは決して気持ちのいいものではない。
ここまで揃ったら後は行動開始するのみ。一気に行ってしまえ。
「よし情報収集だ。一人ずつ今から指定した部屋に来てくれないか」
ZERO館にある使われずにまだどうにか形を保ってる部屋を使用。
さあ犯人探しの始まりだ。
俺は教師で顧問だから出来れば皆を疑いたくない。
でも現実はそんなに甘くない。
誰が犯人だろうと覚悟は必要だな。
「もう一度言うがお前たちは一人ずつ順番に中に入るんだ」
俺がそう言うと一人顔を真っ青にし震えている者が。
不審な行動を繰り返す。
声をかけてもいいのだが今は情報収集が先だ。
その青白くなった者を最後に残し話を聞いて行く。
うん有益な情報を得ることが出来た。
ただ今回の件と直接関わりがなさそうなので伏せることに。
総合した話はこうだ。
タピオカ部は一見仲が良さそうに見えるが本心が分かりずらい。
特に美人三姉妹など心の中で何を考えてるか分からぬ者もおりバラバラ。
真面目で研究熱心な部長と実力派の副部長とが対立する場面が度々。
部長派と副部長派による派閥争いで一年生を巻き込む戦いが続いている。
それから副部長の男勝りな性格が何かと対立を生み深めている。
部長もそこには気づいてるがお互い歩み寄ることはない。
今回の件と繋がりがあると考えられるのはこれくらいかな。
もちろん内部犯を採用した場合だが。
まず今のところあり得ない。
続く