不審者C
迷宮入りするかと思われた制服盗難事件は急展開を迎える。
学校周辺で不審な行動を取る三人の容疑者を確保。
現在取り調べ中。
第一、第二容疑者共に潔白を主張する。
かなり怪しかったのですぐ自白すると思いきやそう簡単ではなさそうだ。
警察に相談してもいいが被害者のこともある。出来れば穏便に済ませたい。
警察沙汰になれば学校にも色々細かいことを報告しなければならない。
ビキニ相撲が公になるのだけはどうしても避けなければ。
それだけでなく美人三姉妹とのこともあるから慎重に。
最悪な事態だって考えられる。
ここは慎重を期すべきだ。我々だけで解決するとしよう。
第三容疑者・不審者C。
「あれ…… どこかで見たことが…… 」
「あんたもそう思う? 」
「確か。うーん」
「何? 誰? 早く思い出しなよ」
美人三姉妹の下二人が勝手にお喋り。どうやら心当たりがあるらしい。
まずい。だとすれば知り合いなのか?
犯人が捕まれば捜査の手はこちらにまで及ぶ恐れが。
まさか本当にお仲間じゃないよな? 教えたのか?
いい加減にしろよな。いくら親しくても月一の集まりを漏らすなんて。
「うんうん。見たことある」
「私も私も」
どうやら他の者も心当たりがあるらしい。では学校関係者か?
「青井先生。確かこの方は…… 」
「ミホ先生もご存じ? 」
白髪鬼の爺が顔を真っ赤にして迫って来る。
あれ間違えたかな? 何かおかしいぞ。
怪しい奴全員集めてみたがどうもこの様子だと間違ったらしい。
「せっかく手入れしていた大切な花をお前はグチャグチャにしおって。
何様のつもりじゃ! 」
おかしな言い掛かりをつけるおかしな爺さん。俺はただ捕まえただけなのに。
ちなみに俺は教師だから先生様かな。それで納得しないなら主人公様かな。
「ああこの人! 」
部長も心当たりがあるようだ。
「この人は管理人さん…… 」
ようやくミホ先生が思い出した。
俺の言うことを聞かずに無心に花を弄っていた不審な老人。
仕方なく無理矢理引っ張って来た。
そうか管理人さんだったのか。ははは……
うん? 俺は管理人さんなど知らない。
それに仮にこの学校の関係者だとしても関係ない。
なぜなら関係者だから犯人じゃないとは言い切れないからだ。
疑わしい者は連行したっていい。そう言う教えがある。
老人だからと言って犯人でない保証もない。
疑いが完全に晴れるまでは可哀想だが容疑者の一人。
「そうよ。ここの花の管理を任されてる庭師の方で管理人さん」
ミホ先生が一人で納得し勝手に話を進めようとするのでストップをかける。
「ちょっと待って管理人さんって何ですか? 」
「ですからZERO館の周りやお花の世話を任されている昔からの管理人さん。
青井先生はご存じなかったんですか? 」
うん? こんな爺さんに興味はない。でも待てよ……
「ああ思い出した! そうだ爺…… ではなくこの方に初日に怒られた記憶が。
嫌な思い出だからすっかり記憶の外に追いやってしまっていたみたいですね。
でもなぜ土曜日にまで学校へ? 」
たとえミホ先生の言う通りだろと不審者に違いない。
第三容疑者・不審者C。その正体は学校の管理人の爺さん。
「お前たち! 言いたいことはそれだけか? 」
ミホ先生が慌てて宥めるが沸点の低い爺さんは制御不能に。
「まったく近頃の教師の質ときたらもう。情けなくなってくるわ」
爺さんの矛先は真面目な教師へと向かった。
いいとばっちりだよ。疑わしい行動を取ったのはそっちじゃないか。
何か言えた義理だろうか?
「お前たちは儂の凄さを全く理解しておらん!
ここの校長とは昔からの付き合いでなここを世話してもらっている。
だから管理人を任された」
自慢と言うかどうでもいいこと。
「教師が教師なら生徒も生徒だ! ビキニ相撲などしおって破廉恥な!
必ず言いつけてやるからな! 」
これはまずい展開。ビキニ相撲まで知ってるとなると言い訳も出来ない。
どうにか説得しないと。
だがなぜこの男がビキニ相撲を知っているのか?
怪しさがどんどん増していく。
「いい加減にしろ爺! ただの変態のくせに! 」
ついカッとなってしまう。
面倒くさいからもうこの際爺さんが犯人でいいだろう。
「何て口の利き方をするんじゃ? 」
まずい。俺では油に水を注ぐだけだ。
ここは何とかして落ち着かせなければ。
とりあえず美人三姉妹に説得してもらおう。
この手の爺さんは得意のはずだ。
それともミホ先生にお願いするか?
続く