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第二段階

とにかく落ち着かせなければ。それでいて和ませるのはこれしかない。

では英語で。

「カーム! カームプリーズ」

「うるさい! ごちゃごちゃ言わずに受け取れ! 」

何て下品な言葉使いなのでしょう?

様子も変だしもう嫌だ。

「ひえええ! 止めろ! 投げるんじゃない! 」

先生と生徒のお遊びがエスカレート。今まで第二段階など……

防ぎようがない。どうすればいい? 


ひとまず部屋の外に退避することを思いつくも部屋の中央まで来てしまってる。

これでは回れ右して戻っては間に合わない。耐えきれないと判断。

秘策で逃げ切りを図ることに。

だが果たしてこんなバカな遊びを続けていていいものか苦悩する。

俺は顧問だろ? 生徒にオモチャにされてどうする。

逆にオモチャにするのが教師と言うもの。

いやそれではただの願望で…… うわあ! 俺は一体何を考えてるんだ?

邪な心が芽生えれば生徒と触れ合えるはずがない。

俺は立派な立派な英語教師になるんだ。


「ホラやっちまいな! 」

もうこれだとただの荒れた学園。数年前までとはえらい違い。

お嬢様学校でごきげんようが口癖の花の如く美しい少女たちが咲き乱れてたはず。

はずと言うのは先輩教師からの情報でほぼ間違いないだろう。

「止めろお前たち! これ以上やれば退学になるぞ」

「先生…… 」

へへへ…… 彼女たちのコントロールの仕方ぐらい弁えてる。

少々不穏で脅迫気味だが今はそんなこと言ってられない。

冷静になれば彼女たちだって分かってくれるはずだ。


「先生だってただでは済まないでしょう? 」

そう言って手を止めない。

くそ! なぜこの必殺技が効かない?

生徒のほとんどがこの魔法のワードで大人しくなるのに。

まあ俺も変な遊びに加わったダメな教師だからな。逆に脅されるのか。


「ホラもっと! 」

仕方がない非常事態につき左側の扉の鍵を開ける。

無茶苦茶に投げられてくる物をどうにか躱しながら片手で扉を押す。

これで逃走成功。

「ちょっとそっちは…… 」

逃げ込まれて焦った彼女たちは何か喚いている。

ふふふ…… 馬鹿め。まあ今日のところは引き分けで許してやる。


扉を開けるとそこには信じられない異様な光景が広がっていた。

俺は教師だから大丈夫。でも教師辞めるちゃおうかな。

給料も安いし。ボーナスも抑えられてるし。理事長はムカつくし。

そんな風に思えるぐらいの衝撃。


「君…… 何をしてるんだい? 」

彼女たちの比ではない。

一人の少女が何も隠すこともなく踊り狂っているではないか。

目の錯覚のはずもないし。

まさか扉を開けた時におかしな世界へと繋がってしまったか?

腰辺りに申し訳程度に飾り付けてるがまったく意味をなしてない。

隠すところが違うじゃないかと言っても無意味だろう。

どうしてしまったんだ?

俺の世界の住人はもう狂ってしまったのか?

いくら俺以外の男がいないとは言えZERO館恐るべし。


まさか今日は俺の誕生日?

だからその手の方を呼んだのか?

俺が喜ぶと誤解して。

確かに生徒たちとは触れ合う機会が僅かでそう思い込まれていても不思議はない。

だがそれはあまりに強烈すぎる。

教師として決して見過ごせない。

こんなことをすればどうなるか教えてやる。

いや…… 何を考えてるんだ俺は?

指導するのは良いとしてまずは服を着るよう促すべきだろう。


「あの…… 」

ダメだ。俺のことに気づかずに踊り続けている。

狂喜乱舞。この言葉がぴったりな奴に始めた会った。

もはや誰も視界に入らないのだろう。

唖然とするばかり。直視することも出来ない。

踊りが激しくなればそれだけ強調されてしまう。


踊りとは本来神に捧げるもので裸で男女が踊り狂おうとも問題はない。

だが今はお祭りではない。仮にお祭りの練習だとしても脱ぐ必要など微塵もない。

彼女は構わずに踊り続ける。

俺はいつの間にか伏せた目を戻し見つめていた。

圧倒的な踊りに釘付けになってしまった。

出来るならこのままいつまでも。そう思わせる神々しさ。


彼女は一体誰であろう?

見間違いだろうか?

きっとそうに違いない。俺は何て馬鹿なんだ。

願望が幻影を生んだに過ぎないじゃないか。

でも俺にそんな願望あったっけ?

たかが高校生に何を求めている?


へへへ…… もうダメだ。願望だろうと幻影だろうと抵抗できない。

俺はいつの間にか彼女のダンスに魅了されてしまう。

神に捧げる舞に心が奪われる。

ああどうしちまったんだ?


その刹那一つの解が閃く。

まさか俺は神なのか?

何てね。冗談を言ってる時ではない。


                  続く

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