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ポケットイン

どうやら制服泥棒は絞られてきたようだ。

そう真犯人はまさかの俺……

ははは…… 違う違う。そんなことした覚えもないしそんな高尚な趣味もない。

そもそも俺は飽き性だから。信じてくれよな。


「お認めになるんですね青井先生? 」

ミホ先生からまで追及を受けるなんて日頃の行いが悪いんだろうな。

彼女だけは俺を最後まで信じてくれると思ったのに…… 残念だよ。

「そうではなく直接手渡したいものがありまして。

後ろを向いてもらえると助かるんですが」

彼女を説得。後ろを向かせることに成功。

それに周りが倣う。

騙すのは造作もないこと。

もうひと踏ん張りと行きますか。


手探りでかばんを漁る。

絶対に見られないように両手でガードし薄い白のショーツを二枚取り出す。

これはもちろん副部長のブツではない。

美人三姉妹の長女の私物だ。

どうせそう言っても誰も信じてはくれないだろうな。

仮にすべてを包み隠さずに話せたら。だがそれでは失うものが大き過ぎる。

汗掻いた時に着替えたいから予備を持っててと強引に入れられたもの。

昨日の話である。おかしいなと思ったんだよな。

もしかすると今回も彼女たちのお遊びによるものかもしれない。

俺が思いっ切り焦るところを見て馬鹿にして笑う。その為に予備を持たせた。

ならばこの盗難事件も彼女たちの仕業?

そう考えればすぐに解決出来そうだが…… 真実はどうか。

俺たちは堕天使たちのお遊びに付き合わされているだけ?

だとすれば笑えない不快な事件。


しかし意外にも長女は焦っている様子。ごめんのポーズを取る。

想定外の出来事なのだろう。

まったくふざけやがって。これだから堕天使様は嫌なんだよな。

勘違いされたら最悪だ。いや…… ほぼこれは勘違いではないのだが。

実際替えの下着だしな。男の俺が持ってていい作品ではない。完全にアウトだ。

言い訳など出来やしない。

どうにかばれずにブツをポケットに仕舞いこむ。

ふうこれで安心だ。

ポケットの中は一度調べたからもう安全だろう。

さあついでにサプライズで用意したものを取り出すとしよう。


「ミホ先生どうかお受け取り下さい! 」

バラを三本。

プレゼント・フォー・ユー。

血のような赤いバラをミホ先生に渡す。

「ありがとう…… 思ってもみなかったことです。本当に嬉しい」

突然のことに固まるミホ先生だったがすぐに礼を述べる。


「副顧問就任のお祝いです。ちょっとしおれましたが勘弁してください」

長女たちと選んだバラ。少々キザったらしいが二人のセンスに間違いない。

「どうして? 」

「本当は朝に渡すつもりだったんですがバタバタしてて渡しそびれてしまい……

皆の前で渡そうと思ったんですが今の今まですっかり忘れてました」

二人に選んでもらったプレゼント。俺じゃ間違って菊を渡しかねない。

最悪彼岸花を渡したらピンタされ突き返されただろうな。とにかく無難なものを。

「本当ならアネモネの花を贈るつもりだったんですけどね…… 」

花屋の店先に並んだアネモネ。どれも美しく綺麗なものだから迷ってしまった。

「本当にありがとうございます」

大喜びのミホ先生。こっちも喜んでくれて嬉しい。

そして何と言ってもブツを隠せて満足している。

もちろん今回のトラブルは俺に一切の責任はないが。

素早く危機回避したに過ぎない。


「ほら早く探そう」

三女が切り替える。

「だったらもう一度先生の身体検査してみたら? 何か見つかるかもよ」

すべてを知る二女による悪ふざけ。堪えきれずに吹き出す始末。

いい加減にしてくれよな。

見つかれば二人ともただでは済まないのに破滅願望でもあるのか容赦がない。

さすがの俺ももう我慢の限界だぜ。

いくら毎週良い思いをさせてるからってそれとこれとは別。

顧問としてびしっと言ってやる。


「おいこら…… 」

「もういいです。私諦めましたから」

放っておかれた格好になった副部長は元気がない。

「そうだな。もう戻ってこないだろうな。諦めるのがいい」

そうやって肩を貸す。

ちょっと格好つけ過ぎたかな。まあ教師であり顧問だからこれくらいいいよな?

「やめてください先生! 本当に大丈夫ですから。

それに仮に戻っても着るつもりありませんから」

これは可哀想に。よし元気づけに今度は彼女も呼んでやるか。

「だったら戻ってきた下着は俺に…… 」

「青井先生何かおっしゃいましたか? 」

バラにはトゲがあることを忘れていた。これは嵐の予感。


「よし皆もう一度調べ直すぞ! 」

「オウ! 」

こうして捜索続行。


                   続く

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