消えた制服
決勝戦。
三女のビキニに手を掛ける。
その時だった。ホール内に叫び声が響き渡る。
三女から手を放し叫び声のする方へ向かう。
一体何があったのだろうか?
「おいどうした? 何を騒いでる? 」
声の主を発見。だが恥ずかしそうにするばかりでちっとも要領を得ない。
何を考えてるのか? 説明してくれなければ分からないではないか。
「先生を信用できないのか? 」
「だって…… 」
頑なに拒絶する少女。一体何がそんなに嫌だと言うんだ?
ちっとも答えてくれない。これでは埒があかない。
どうやら俺では無理らしい。デリケートな問題だからな。
ミホ先生に任せることにした。
「あれ君は…… 」
よく見たらタピオカ部の副部長。
何があったんだ?
せっかくの決勝戦に水を差すような出来事。
制服が見つからない。スカートもないと。
極めつけは下着。
着替えたブラとショーツが見つからないそう。
これは事件だ。大事件だ。
大会が盛り上がりを見せる中一人の少女の着替えがなくなる事件発生。
制服だけではない。何とお宝…… ではなく下着まで。
一体どう言うことだ? なぜ下着が?
まったくの意味不明。
変質者的にはこれで正しいのだろうが。
そもそも今日この場所でビキニ相撲があると知る者はごくわずか。
部員と俺とミホ先生ぐらいなもの。
あり得るとすればお隣の異世界探索部の連中だが。
それとなくしか伝えてなかったしミコだって来ないようなことを言っていた。
犯人は一体どうやって嗅ぎつけたんだ?
生徒も先生も疑いたくはない。
仕方なく顧問権限で部室の捜索に当たる。
部室には色とりどりの下着類が散乱していた。
これは荒らされた後かな?
一つずつ丁寧に調べてみる。
うん問題なさそうだ。
「ミホ先生は他を調べてみてください」
もう少し時間が掛かる。ここは手分けして調べた方が効率がいい。
じっくりと観察すれば手掛かりが掴めるかもしれない。
「先生? 青井先生? 」
うるさいな。捜査の邪魔だよ。可愛い教え子のピンチに熱くなる。
「ですからミホ先生は他をお願いします」
臭いに問題なし。では抜け道は?
もう探偵モード。
助手は言われた通りに動いてくれない。足手まといなんだよな。
おっと…… ミホ先生はわざわざ来てくださったんだからなそれはないか。
「あの…… ここは私たちが」
あれ変質者を見るような目。嘘だろ? 何で……
「ははは…… 俺はお邪魔ですよね」
ついつい可愛い生徒を思うばかりに暴走してしまった。
確かに彼女たちに任せるのがスジだろう。
でも俺だって役に立ちたいし。
帝国が崩壊した今やれることはやらねば生徒たちはついてこないのでは?
そんな焦りにも似た感情が支配する。
もちろんこれも本気ではない。俺には金曜日だけ。
後一週間もお預けとは本当に嫌になるぜ。
部室、更衣室、その他の部屋を手分けして捜索するも発見できず手掛かりもなし。
難航する盗難事件。捜索範囲を拡大すべきか?
これは上に報告する案件になりそうだ。
だが当然だがなぜ着替えをしたかを追求されてしまう。
さすがにビキニ相撲をやってましたとは言えない。
でも言い訳がまったく思いつかない。
ここはやはり悪い大人の見本である隠ぺいを図るのがいいだろう。
「おい本当にないのか? 勘違いってことは? 」
「そんなことありません…… 一体誰がこんなことを? 」
副部長は泣きだしてしまった。
これはまずいぞ。俺が泣かせたのか?
「気にするな。取り敢えず服を買いに行ってもらってるからな」
俺が行っても良かったんだがここは部長に任せる。
「そんなに心配するなって。そのうち出てくるさ」
単なる気休めだが少しは元気が出るだろう。
「はい…… 先生じゃありませんよね? 」
人を疑いたい気持ちはよく分かる。
心が荒んでいれば尚更。限界なんだろうな。
仲間を疑うぐらいなら俺を疑え。
「うんうん。もう心配いらない。来週には取り戻せるはずさ」
根拠のない発言。
「先生? 正直にどうぞ」
タピオカ部は疑心暗鬼に陥った。
確かに内部犯が有力だがさすがに俺では短絡的過ぎないか?
「俺は行司としてずっといたろ? アリバイは完璧だ。
いくら俺が男でも顧問であり教師だぞ。そんな破廉恥なこと…… 」
だめだ。はっきりは否定できない。
何故なら週に一回二人とお楽しみ会を開いている。
そんな俺が破廉恥でないはずがない。
二十四日に続く
お知らせ。
シルバーウイーク期間中はお休み。
再開は二十四日から。