下品な遊び
部屋では数名の女子が着替えてる最中。
目の保養にはちょうどいいやなどと冗談を言えば保護者が飛んでくる。
「先生。着替え中です! 出て行ってください! 」
一人の少女がえらい剣幕で喰って掛かる。これはまずいことしたな。
気持ちは痛いほど分かる。でも明らかに不可抗力だ。
落ち度はない。
彼女たちだって俺が毎日この時間に来るのは分かるだろう?
それなのに着替えてる矛盾。
俺は見たいのか? いや違う。いや違わないか。
まさか彼女たちは見られたいのか? あり得なくもない。
常識では考えられない。しかしそれこそが真実。
「ああそうか済まない…… 」
一応は謝る。だがよく考えてみろ? 俺はきちんと音を立てた。
仮に気づかなくてもドアを勢いよく開けたのだ。気づくだろ普通?
ノックしろと言うかもしれないが俺は顧問。誰が自分の受け持つ部室にノックを?
見られて恥ずかしいことも、物もダメだろう。
こっちがどうにかするのではなく彼女たちがもう少し注意すべき。
今までは甘やかされ許されてきたがもうそう言う訳にはいかない。
はっきり言えば弛んでいる。弛緩しきっている。
もうここは甘い顔をせずに厳しい態度で臨む。
それが彼女たちの為だ。そう無理矢理自分に言い聞かせる。
だが理解されるのは難しい。
「済まないじゃないでしょう? 何を考えてるんですか! 」
そう言って再び物を投げ出しついでにおかしな悲鳴を上げる。
もう笑ってるじゃないか? どこに悲鳴を出す必要がある?
「うわ止めろって! 」
暴言が飛んでくるのはまだ分かるが物まで投げるのは下品。いや反則だ。
うわ向かってくる。
なぜか隠そうともせず下着姿のまま襲い掛かるかのように。
俺をおちょくってるのか?
色とりどりのショーツにブラ。
黒の上下の子もいればキャラクターが入った可愛らしいのを穿く者。
上下が揃ってないアンバランスな子も。
赤のブラにティーバックの子さえいる。
ここはランジュエリーの品評会か何かか?
下手に感想を言えば傷つくだけでなく白い目で見られる。
だからなるべく見ないようにしている。それが一番安全なのさ。
ここは一つ先生らしさを見せつけておくか。
「君たち! 下着は白か派手でないものを着用するよう決められてるだろう! 」
問題はそこじゃないのは重々承知だがまずはそこからだ。
おかしな生徒を持って大変だぜ。
一体誰に相談すればいいのやら。頭が痛くなってくる。
「うるさい! 覗かないで! 」
「校則違反だぞ! 俺は注意したからな」
情けないがこれ以上はどうすることも出来ないのが現実。
まさか違反者を脱がす訳にもいかない。
出来ることと言えば報告するぐらいだが…… それはいくら何でもかわいそうだ。
そうなると彼女たちの良心に語りかけるしかない。
だがちっとも俺の話を聞いてない。聞かないではなく聞いてないだ。
それどころ覗きだ。変態だと脅してくる始末。もはや手に負えない。
覗いたつもりは一切ないんだがこれって覗きか?
「いいから決めたことは守りなさい! 」
ここは教師らしく。
立派な教師の鑑を演じてみる。
だが彼女たちには俺の本性は見破られている。そんな気がしてならない。
もともと一対多数では俺に勝ち目はない。
個別に分からせるのがいいのだが一人の時は皆雰囲気が違うんだよな。
だからかわいそうになってつい注意しそびれる。
こんなことなら心を鬼にして指導すべきだった。
後悔しても始まらないがどうにかならないか?
「もう私たちの勝手でしょう! 」
そう言ってまた投げる。これを繰り返せば投げる物などなくなる。
当然だが俺も彼女たちも分かっている。
よし今だ。
どうにか説得しようと手を広げ近づく。
しかし再び物が投げられる。
第一段階は完了したが第二段階へと移る。
「うわ止めろお前ら! 」
「うるさい! 」
あれ…… 目が本気だ? いつもの悪ふざけではないのか?
「ちょっと待ってくれ! 話が違うよ。そんなの聞いてない。
頼むよ! お前たち…… 」
いつもと明らかに様子が違う。
あれ…… これは俺が間違ったのかな。
悪ふざけから本気モードへ突入したらしい。
続く