もう遅い!
三女不在。言い訳を繰り返す二人。
「ほら多すぎると困るでしょう? 」
そう言いながら長女が迫る。これも危険なサイン。いやもうそのレベルじゃない。
隠そうとしてもいない。もう逃げられないのか?
「うんうん。確かに楽しむには三人は多いか。教えるには少な過ぎるが。
適性人数ってのがあるもんな」
どうにか冷静さを保とうするも自らどんどんおかしな方向へ持って行ってしまう。
彼女たちも大概だが俺もわざとやってないか?
もはや己をコントロール出来なくなっている。
「そうそう。もうこれ以上焦らすのは何でかな? 」
「先生。諦めて」
うわ…… 誘惑しやがる。私の可愛い可愛い生徒たち。
こんなことをさせていていいのだろうか?
「なあスケルトンともこんな馬鹿げた大人のお遊びをしてたのか?
いや…… スケルトンだけではなく他の先生とも」
核心に迫る。スケルトンはおかしかった。俺を無理矢理タピオカ部の顧問に。
嵌められた気分だ。そのスケルトンがすべて知りながらこんなバカげた催しを。
黙認するだけでなく自らも参加していたとしたら許せない。
俺の人生もキャリアも棒に振るような悪魔の誘い。
それが彼女たちが楽しんでいる人生転落ゲーム。
上がりはなくただひたすら堕ちて行く。
堕落した生徒と堕落した教師による果てしない転落ゲーム。
今宵も開催されるのか?
「ふふふ…… おかしいんじゃない? スケルトンとやろうっての?
そんな変な趣味ないよ。先生信じて。ねえ」
「そうだよ。先生が初めてに決まってるじゃない」
そう言って笑い出す二人。嘘を吐くのが下手だな。
少なくても俺が初めてであるはずがない。
三女と違いからかったり嵌めたりするのが好きな明るい性格と言ったではないか。
俺は信じないぞ。と言うよりもふざけるなと言う気持ちが強い。
「先生信じて。うう…… 」
笑ったと思ったら今度は泣きだした。
情緒はどうなってるんだ? 不安定過ぎるぞ二人とも。
カウンセラーに一度相談した方がいい。
でもこいつら学校では裏の顔を見せないように振る舞ってるからな。
表の顔も酷いものだが。
あの手荒い歓迎ぐらいで気づくべきだった。
俺が悪いとしても望んでもいないのにいつも着替え中。
どこか皆狂っている。
タピオカ部は少々おふざけが過ぎる。
いくらほぼ女子でもその辺の礼儀は当然弁えるべきだろう。
「先生信じて! 」
訴えかけるが決して信じない。前回のことがあるし泣けてない。嘘泣きだ。
「他の男の人だってここまではなかったよ。
先生のガードが甘いから。それは先生が望んでるからだよ」
嘘泣きで泣き落として迫った挙句責任転嫁。俺が悪いってか?
「そんなはずあるか! 俺は仮にも教師だぞ! 」
「はいはい。もういいでしょう。自分に素直にならなきゃね」
くそどっちが生徒か分からない。俺を舐めやがって。
「おいおい別に隠さなくたっていいぞ。そうだろ? 誰もお前たちを責めてない。
真面目に答えろ。俺と同じ目に遭った奴はいないのか? 」
心を開き始めた生徒に寄り添い上手く聞き出す。
少々姑息で心が痛むが仕方がないさ。ただ罪悪感に苛まれそうだが。
「あるんだろ? 正直に答えなさい」
「一回だけ。先生ほど間抜けな人はいなかったからここまで行かなかったけどね」
俺は特殊らしい。ホイホイ着いて来る男は下心があり二人の餌食になりやすい。
だが一瞬冷静になる時があるのだとか。そこで慌てて帰ってしまうらしい。
それから教師にしてもここまであからさまだとさすがに勘付くそう。
彼女たちのお遊びがどこまでエスカレートするか気になるがこれ以上はないと。
いや話してくれない。俺を信用してないのか?
「何て奴らだ! もう二度と引っかかるものか! 」
声高々に宣言する。
当然そこまで間抜けではない。彼女たちが思うほど俺は攻略しやすくない。
自分ではそう思っている。
「先生…… 」
「もう遅いですよ。完全に引っかかってますって」
呆れた二女が指摘する。
「うん? どこが? 」
「コレコレ。前回使用した薬をカレーに混ぜちゃいましたから。ホラね」
悪びれる様子もなく料理の隠し味を披露しやがる。とんだ料理人だ。
二女が手にしてるのが前回と同じなら幻覚と興奮作用がある。ヤバイ代物。
でもどうやって? 荷物検査はしたはず。
その前に混入したのか? でもどうやって?
だが自分たちだって危険なはず。
それとも俺の皿だけに混入したとか?
どの道吐きはしないだろうな。
まずい…… カレーを完食してしまった。今さっき最後の一口を。
吐き戻すこともトイレに駆け込むことも出来ない。
スプーンを置き天井を見上げる。
しまった! またやられた。あれほど警戒したのに。
やっぱり俺って間抜けなのかな?
頭がボーっとする。そう言えば気分が優れない。
何だこの感覚は?
下の方を確認する。やっぱりダメだ。
抑えることは到底不可能だ。
続く