悪夢再び
一週間後。金曜日の放課後。
再び美人三姉妹の二人が訪れる。
もはや来ることはないだろうと思っていたがなぜか姿を見せる。
どこか狂っている二人。罪の意識はないのだろうか?
薄笑いを浮かべてるし…… もう勘弁してよ。
部活ではいつも通りだったじゃないか?
もう興味なんかないだろ? とっとと違う男のところへ行けよな。
俺ではお前たちを満足させられない。
警察を呼んだっていいんだぞ? おかしなストーカーに遭ってますってな。
もちろんそうなったら破滅するのは俺だが。
それでもこの関係を終わらせられるなら選ばないこともない。
「お前たち…… 」
「お邪魔します先生」
「いやもう週一の英語教室はやめようかと思っている…… 」
それとなく伝え反応を見るが前回と変わりなし。
まったく何を考えているのだろう?
取り敢えず歓迎するしかない。
あまりに重く気まずい空気が漂う。
もちろんそれは俺が動揺してるからに過ぎないが。
「どうしてまた来た? 」
「先生。お客様に対して失礼ですよ」
誰が客なものか。ふざけやがって。一体どう言うつもりなんだ?
「それで何の用だ? もう来るな! 」
「そんなに怒らないでよ。恒例の行事でしょう。忘れちゃったの? 」
「だからもうやめようと言ったろ」
「でもまだやめてない」
くそ屁理屈ばかり。どう言えば理解してもらえるのだろう?
先週のことはやはりこいつらが悪い。そうに違いない。
しかもまったく反省してる様子がない。
「おいおい。まさかまだやるつもりか? もう俺は引っ掛からないぞ。
何と言ってもジェントルマンだからな」
どうにか興奮を抑え相手のペースに持って行かれないようにする。
しかしそれでもすぐに本心を見破られる。
「ふふふ…… 本当はやりたいんじゃないの? 」
とんでもない奴らだ。俺の意志が弱いと決めつけ揺さぶろうとする。
これも一種の遊びなのか? そうだとすれば救えないことになる。
あれだけ罰を与えてやったのにまた性懲りもなく現れて……
そうか長女の方は気づいてないか? 本人の口から言わない限り気づきはしない。
それはつまり少なくても二女は俺を恐れている。
付き合いで仕方なく来たか? それとも忘れちまったか?
あの激しい夜の出来事を忘れられるものなのか?
俺だって必死に忘れようとしたがそれは無理だった。
記憶の奥に封印してもふとした瞬間に蘇ってしまう。
大体彼女たちは教室でも部活でも目に入ってしまう訳で。
忘れることは不可能でただの無駄な努力となる。
「あれ先生黙っちゃったの? やっぱりそうなんだ? 」
長女はからかい続ける。その横ではやし立てる二女は明らかに無理している。
どうやら多少の影響はあるらしい。
「誰が…… もう二度とごめんだ。あんなこと! 」
二人にも近所にも聞こえるようにはっきり宣言する。
もちろん防音だから聞こえないが。ここまですれば彼女たちだって……
「無理しちゃって」
「そうだよ先生。無理すると体に悪いよ」
「無理はしてない! 体にも負担が掛かることはないさ」
「強がってもう」
「無理もしてなければ強がってもいない。本来先生と生徒は…… 」
「はいはい。始めてください」
美人三姉妹の二人を部屋に通してしまう。
俺はバカなのか? それとも心のどこかで願ってるとでも言うのか?
それを見透かされたらと?
二人はショックで記憶を失ったのだろうか? それはあまりに都合が良すぎる。
特に二女は俺からお仕置きを喰らったはずなのに? こんなことして。
本当に信じられな連中だ。
結局今日もタピオカ部の二人しか来なかった。
あれだけ楽しいよと宣伝したのに誰一人まともなのが現れなかった。
残念だがそれが今の俺の実力。
どうすることも出来ない。
ただの冷やかしによく毎週来るよ。
「よしまず復習からだ」
うわ…… 前回の復習なんかしたら危険極まりない。
そもそもふくしゅうと言う言葉も良くない。
まさか一週間前の復讐をするつもりじゃないだろうな?
もしそうなら願い下げだ。
まだ夏本番でもないのに汗が垂れる。
「汚いなあ! 」
すかさず長女のクレームが入る。
「暑いんだよ。少しぐらいいいだろ? 」
「ちゃんと拭いてよね! それから片付け出来てない! 」
神経質な長女。
「ああ埃まで最低! 掃除しなよ」
今度は二女まで。
まったく調子に乗って文句を言いやがって。困った奴らだ。
「先生! お茶用意しますね」
長女が当然のようにキッチンへ。
「おい待て! お前らはお客さんなんだから座ってろ。
それに前回みたいに飲み物に変なもの入れられたら敵わない。
俺がいれるから大人しく待ってろ! 」
まったく冗談じゃない。もう二度とごめんだ。
続く