秘密の課外授業⑧
疲れ果て眠りにつく二人。
俺ももうダメだ。急に眠気が……
意識を失う。
こうして悪夢の夜は終わりを迎えると思いきや……
目覚め。
ああ二人はどうしてしまったのだろう? それだけが心配。
男はまさかあれ以上のことをしたのでは?
どれくらい経ったのだろう? もう一人を見かけない。
勝手に帰ってしまったのだろうか?
ふともう一人の少女が頭から離れない。おかしいかな?
彼女は俺を嵌めるために薬を用意した。そう言う意味では許されない存在。
共犯であり罰は免れない。罰とはそれは苦しく嫌なもの。
彼女にもきっちり罰を与えてやるべきだな。
だが今は目の前で眠る彼女に集中すべきだろう。
そう言えば急に眠気が襲ってきた気がする。
でもよく覚えてないんだよな。二人が重なり合った場面から急に眠くなって。
しかし男は姿を消し少女一人が気持ちよさそうに寝ている。
一体何が? 考えろ。考えるんだ! 何が起きてる? 何が起きた?
ああ! まさか俺はやっちまったのか?
それはないか。それは…… 俺の目の前で男が少女と。だから俺は関係ない?
俺はただの目撃者。ただぼんやり見ていただけ。
恐らく高いところから見下ろしていたのだろう。
でもどこからだと言うんだ? 俺の部屋でどうやって?
そもそもあの男はどうやって調達したのか疑問が残る。
そうか奴らがあらかじめ用意した男。そうに違いない。
まったく何て非常識な奴らだ。
何てものを見せてくれるんだこいつらは。やってられない。
ふう疲れた……
ようやくたどり着いた答えに安堵するが違和感が残る。
本当にそうなのか? 俺はただの目撃者なのか?
だがそんなはずない。あり得ない状況。よく考えれば分かること。
俺はいつの間にか一人の男を作り上げてしまったらしい。
何とか罪の意識から逃れようと妄想するようになった。
俺は何てことをしてしまったのだろう?
気がついた時には一緒に眠っていたらしい。
隣で可愛らしい寝息を立てている少女。間違いなく美人三姉妹の長女。
俺を誘惑した張本人。
水を飲みにキッチンへ。
一杯飲んで我に返る。
ああやっぱり! あの男は俺だった。もう間違いない。
いくら脳が別人を作り上げたとしても体が覚えている。
いたずらだったとは言え関係を持ってしまった。
教師が生徒に手を出してしまったのだ。
それは決して許されない。
もうダメだ。
いくら俺が悪いんじゃないと言い訳しても誰も信じてくれない。
もう教師で居続けられない。
さすがにこれほどの問題を起こせば大学にも戻れない。
今後の身の処し方を決めなければならないな。どのみち英語教師は廃業かな。
せっかく今年からだったのに。残念で仕方がない。
でも待てよ…… 今度のことは明らかに不可抗力。
俺が訴えれば勝てるかもしれない。悪いのは奴らなのだから。
ただ信じてくれるかと言えば無理だろうな。
いやいっそのこと口止めすればいい。
奴らだって罪悪感はあるはずだ。俺の提案に乗ってくるはずさ。
そうすれば元通り。ただの教師と生徒の関係に戻れる。
後は彼女たちが卒業してしまえばいい。
どうする? どうすれば俺は助かる?
保身ばかり考えて最低な教師だが今回ばかりは仕方がない。
ただの被害者だからな。
課外授業で呼んでおいてこんな言い訳が通じるかと言えば不安だが。
大丈夫。俺は被害者なんだ。俺は悪くない。
狂い始めた教師生活。もうどうすることも出来ない絶望の淵へ。
吸い込まれるように禁断の地へ。
今思い返せばこれが悲劇の始まりだった。
そして俺は選ばれた。だが彼女は選ばれなかった。
もう一人も恐らく選ばれないだろう。
でも思うんだ。本当に選ばれることが幸せなのか?
それとも選ばれない平凡な人生こそが幸せなのか?
俺には分からないし彼女たちには難し過ぎる。
仮に公にならずとももう英語の教師は続けられないな。
こんなことになったのも俺の自覚の無さ。それから彼女たちのいたずらが原因。
まだ夜明けには早い。
さあどうするかな?
うん? 隣の部屋から明かりが漏れる。
そうかもう一人いたな。まあどうでもいいか。
元の部屋に戻ろうとした時に体が異常に興奮してることに気づく。
どうしたのだろう? こんなことは初めてだ。
美人三姉妹の二女が気持ちよさそうに眠っている。
帰ればいいものを無駄に付き合うんだから。友人は選ぼうな。ははは……
突如湧くおかしな感情。
うん? まだ足りないらしい。仕方がない感情の赴くままに。
よくも俺を嵌めやがったな!
興奮と共に怒りが溢れる。
続く