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ミホ先生

異世界研究の第一人者・アークニン博士。

あまりに危険なので出来ればかわいい教え子を近寄らせたくなかった。

それなのにそれなのに会う約束をしてしまった。

自分が矛盾してるって分かってる。

言動が不一致な点を反省すべきだろう。


ただ…… 彼らが望むなら叶えてやりたい。

夢が夢でないことを。つい熱が入る。

いけない…… 俺は何をやってるんだ?

止める立場の人間が一緒になって異世界を追いかけてどうする?

慎重には慎重に。自重すべきだ。


部室で異世界を論じてるだけなら怪しげなクラブで済んだ。

だがとんでもない世界に俺は誘ってしまった。そんな気がする。

これ以上前途有望な若者を迷わせてはならない。


「人間性に問題ありと? 人ではないとか? 」

正面の男子が喰いつく。

「曲解するな! そんな訳ないだろう。ただあまり良くない噂があってね。

もう立派な人間になってると思うが念のため。まあ気にしない気にしない。

表向きは高名な博士。取り敢えず一人きりで会わないことだな。

だから皆これだけは守って欲しい。外に出たら単独行動はするな! 」

「はーい」

ちゃんと聞いてるのか? これが団体行動の基本だぞ。

俺も高校の校外学習で友達と無視して単独行動を取って怒られた苦い経験がある。

そんな俺だから強くは言えないが危険があるところでは単独行動は慎むべきだ。

危険度に合わせて無茶するかしないか判断して欲しいと言っても無理だろうな。


金曜日。

英語教師の日常と密かな楽しみ。

「いいか。福祉はとても大事だ。君たちが困った時に助けてくれるもの。

そして副詞も大切。疎かにするな。今日やったところは次のテストに出るから。

今までのも含めてしっかり復習して勉強しておくんだぞ」

そう言いながら重要なところを急いで消す。

「うわ待って先生! 」

大慌てで書き取ろうとする目覚めの君。

へへへ…… 残念でした。寝てる方が悪いんだ。


ベルが鳴る。

「よし今日はこれまで。不安な者や物足りない者は放課後補習を受けに来い」

生徒たちは聞いてるのか聞いてないのか浮足立っている。

放課後補習とは名ばかりで夕食を兼ねたプライベートレッスン。

参加者が多ければ多いほど盛り上がる。

ただ伝え方が悪いのか誰も反応しない。

教室を後にする。


ふうまったく本当に聞いてるのかよあいつら?

「お疲れ様です」

「はいはい。お疲れ様」

廊下をポトポト歩いてると後ろから優しく声を掛けられる。

ミホ先生ではないか。ははは…… 恥ずかしい。適当に返事してしまった。


容姿は申し分なく若く明るい。もちろん誰にも優しいので生徒から慕われてる。

特にこのルックスだから男子生徒からの人気が高い。

それに比例して女子からの受けは悪いはず…… なのにこれまた高い。

親は資産家でお嬢様らしくなぜ教師みたいな過酷な職業を選んだのか不思議。

どうも噂ではこの学園の関係者なのではないかと言われている。

彼女の話では前進の女子高出身で高校、大学、現在とずっと関わりがあるそう。


ああ何て美しいのだろう。まともに目を見て話すこともままならない。

でも俺も教師の端くれだからきちんと見つめる。

ダメだすぐにおかしくなってしまう。受け答えがたどたどしくなる。

「もうお体はよろしいんですか? 長期入院なさっていたと聞いたもので……

お見舞いにも行けずに失礼しました」

彼女とは普段からよく話すのだが最近はご無沙汰。

思い切って誘おうとしたが迷惑だろうと思い今に至る。

「気にせずに。少し風邪をこじらせ長く掛りましたがもう大丈夫。ほらこの通り」

ジャンプして体を動かして大股で歩いて元気をアピール。

少々やることが年寄り臭いがこれも彼女を安心させるため。

トボトボ歩いてたから変な誤解を受けたのかもしれない。


今はホームルームの時間で生徒たちは教室で大人しくしている。

だから誰もこの辺りを通りはしない。野暮な観衆は姿を見せない。

ゆっくりとした二人だけの時間が流れる。

ミホ先生とは同期と言うこともあり仲がいい。

俺がへらへら何か言って彼女が優しく笑ってくれるだけだが。

昨年と違い部活を三つも掛け持ちしてるので復帰後もなかなか機会がなかった。

俺が暇な時は彼女が忙しく彼女が時間ある時は俺が忙しい。

ようやく掛け持ち生活にも慣れ余裕が出来た。

そろそろ例の件に決着をつける時。


                続く

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